(閑談)レヴィとオリヴァー
出会って割とすぐくらいの頃。
オリヴァー視点→レヴィ視点となります。
はぁ、なんで僕がこんな目に。
僕はとても憂鬱な気分だった。
公爵家の自分の部屋で勉強をしていたら、突然部屋に入ってきたオリヴィアから「ね!たまには庭でお茶しない⁉︎お願い!」と誘われた。ちょうど休憩でもしようと思っていたし、たまにはオリヴィアの誘いにも乗ってやるかと仏心を出したのが運の尽きだった。
庭に出てみると、そこにはレヴィ王子がいた。
僕を見てぶすっとするレヴィ王子に、こちらも愛想笑いをしかけて引っ込んだ。ちらりとオリヴィアを見やると、「てへ。」と両手を合わせてペロっと舌を出した。オリヴィアはおそらく、自分ばかりが王子と一緒にいて僕を仲間はずれにしているようにでも感じたんだろう。大きなお世話だ。
レヴィ王子はオリヴィアを男である僕オリヴァーと勘違いしており、オリヴィアもまた男と勘違いされたままの方が楽なのもあり訂正していなかった。
そのため、僕はレヴィ王子の前では女のオリヴィアにならなければいけない。だからこそ、レヴィ王子とは接点を持ちたくないのだが……。いや、そうじゃなくともこいつとは余り接点は持ちたくない。
はぁ、何でこんな奴とお茶しなきゃいけないんだよ。あーあ、それなら勉強してたら良かった…。
そして、オリヴィア、レヴィ王子、僕の3人でのお茶会が始まった。
「うん!このお菓子とっても美味しいね!ほら、オリヴァ……あ、えっとオリヴィアも食べてごらんよ!」
小さい頃はよく入れ替わって色んな人を騙して遊んでいた。けれど、僕ももう成長した。幼い頃病気がちだったせいで体つきは男っぽくはないが、少し早めに始まった声変わりはどうしようも無い。
「あ、ありがとう。」
なるべく喋らず、喋る時は少し裏声で声色を高くした。
何で、こんな事、僕がしてやらなきゃいけないんだ!
レヴィ王子は僕に警戒心を持っており話しかけてこない。
気を遣ったオリヴィアがちょこちょこ僕にも話を振るが、僕はわざわざ裏声を出さないといけないし、話しかけるなとオリヴィアを睨みつけた。
そうしてオリヴィアとレヴィで会話しているのをただ聞き流していた。
はぁ、とため息が出そうなのを抑えて、それでも姉のオリヴィアのためにこの苦痛な時間を耐えるオリヴァーだった。
★★★
オリーと出会ってからは、王太子教育や学園の合間を縫って必死にオリーと会う時間を作っていた。
まだ出会ってすぐくらいの時、人気の菓子を持ってオリーの家へ遊びに行った。
「早速お茶にしよう!」と嬉しそうに笑うオリーにドキリとしながら、庭に案内され、2人きりのお茶を楽しむ……予定であった。
まさか、そこへ姉のオリヴィアが来るとは……。
最初は警戒していた。公爵令嬢ともなれば王子である僕と結婚してもおかしくない身分だし、年も同い年。最近は昔のように僕を見てギラつく令嬢の父親達も居なくなり、令嬢自身も近付いて来ないで遠巻きに僕を見るぐらいで正直快適だった。無駄に愛想を振り撒けば相手に勘違いさせてしまうので、冷たい態度をとっていたのが大きいのだろう。ここの公爵当主は僕をギラついた目で見るどころか、また来たのかと呆れた顔で見てくるので安心だが、この令嬢はどう出るか分からない。
そう思って警戒していたが、オリヴィアは物静かな令嬢だった。特にこちらに媚を売るのでもなく、たまにオリーが話しかけるが、妙な声で一言二言答えて黙り込み、話しかけるなというオーラさえ感じた。
なんだ、じゃあ気にせずオリーとお茶でもしよう!
気を取り直し、この令嬢の事など放っておいて僕はオリーとのお茶を楽しんだのである。
ちなみに。
このお茶会がきっかけで、オリヴィアはレヴィとオリヴァーが全く気が合わないと分かり、以後レヴィと会う時にはオリヴァーを誘うことは全くなかった。