実践勉強会①
アンゼル地方での実践勉強会はオリヴィアにとってとても楽しいものだった。
さすがは成績上位者とその成績上位者が選んだ同行者なだけあり、みな優れた技術でオリヴィアは学ぶ事も多く興奮していた。
参加者は
成績1位のレヴィと同行者オリヴァー(オリヴィア)
成績2位のアンバーと同行者ユアン
成績3位のイーサンと同行者ガブリエル
であった。この3組で馬術、剣術、弓術など競い合い、騎乗戦闘も行った。試合はポイント制で、最終的に高ポイントのチームが優勝である。優勝者チームは将来が約束され、実践合宿は王城騎士団も見学に来るため、頭角を表せば優勝せずともスカウトされる事もある。そのため、この勉強会に参加したがる者は多い。
成績3位のイーサンと同行者ガブリエルは幼馴染らしく、ガブリエルの両親はイーサンの家である候爵家の執事長と家政婦長であり、フランクな両親に育てられたイーサンはガブリエルと身分の違いなど気にせず兄弟のように育った。ガブリエルは体格が良いが技術は他の者に比べて劣っていた。しかし力技ではガブリエルの右に出る者はおらず、それを見越したイーサンの戦略でポイントを稼いでいた。イーサンは嫡男であったが、ガブリエルの力技に一目置いており、技術さえ磨けば騎士団長も夢ではないと考えて、ガブリエルと騎士団の繋がりを持たせたいという野心を持って参加していた。
成績2位の伯爵家三男のアンバーと同行者侯爵家次男のユアンも家同士仲が良い幼馴染であった。ユアンは他国の学園に進学しており、今回は向こうの学園の休みを利用して帰国して参加していた。ユアンは弓の技術がずば抜けており、ポイントを稼いだ。離れて過ごしていたにも関わらず2人とも息ぴったりだったのも大きい。
レヴィとオリヴィアもそれぞれの弱点をカバーしながらポイントを稼いでいた。特にオリヴィアは乗馬が誰よりも長けていたので騎乗戦闘では有利であった。
3チームとも接戦を繰り広げながら、その日の実践は終了となった。
みんなヘトヘトになりながら、すぐ近くの学園が管理している屋敷へと歩いていく。
「お前、ちっさいくせになかなかやるな!」
ガブリエルはオリヴィアの背中をバンっと叩き、ニカっと気持ちの良い笑顔で褒めた。
「いてて。ガブリエルありがとう。」
「君がオリヴァーだね。よくレヴィが君の事学園で話してるよ!」
イーサンが、だよな!とアンバーに同意を求める。
「あぁ。そりゃ何かにつけてオリーがオリーがってうるさいのなんのって、って痛っ!!」
「だまれ!!」
後ろからレヴィが拾った枝をアンバー目掛けて投げる。
「おい!それは反則だろ!」
「うるさい!お前には良い!」
「どんな理論だよ!そもそもイーサンが俺に話振るからー!」
「いや、僕はアンバーみたいに余計な事は言ってない。」
そんな事を言い合いながら3人はひと足先に屋敷の中へと入って行った。その後ろへガブリエルも続いた。
オリヴィアはレヴィと学園の仲間たちのやりとりが新鮮で、仲良しなんだなぁとつぶやく。
「そうだね。学園では身分もあまり関係なく友好を築いているようだね。……ねえ、ところで、君、本当にオリヴァーなの??」
ユアンがオリヴィアの呟きを拾い、ジッとオリヴィアを見つめる。
「……え。な、なんで??僕オリヴァーだよ。」
オリヴィアはいきなりの質問に戸惑い、ユアンの返答に身構える。
「ふーん。じゃあ僕の勘違いかな。昔一度だけ見かけた事があるんだけど、なんだか雰囲気が変わったよね。前はもっと…」
「成長したら雰囲気も変わるさ!!さっ!僕らも早く屋敷へ入ろう!!」
オリヴィアは焦りながら無理やり会話を終わらせて屋敷へ急いで入る。
その後を不思議な顔をしながらユアンが続く。
(前はそそられたのに、今は全然そそられないや。)
そう考えながら。
そして全員が夕食のため食堂へと向かった。