レヴィ視点①
物心ついた頃から、何か虚しさを感じていた。
王子の勤めとしてさまざまなお茶会やパーティーにも出席した。同じ年齢ぐらいのたくさんの令嬢達を、令嬢の父親がギラついた眼で紹介してくる。その影に隠れて頬を赤らめた女の子がこちらを見てぎこちないカーテシーと共に挨拶するが、僕は何も感じない。
僕は金髪碧眼、整った顔立ちに、微笑むとまだ幼いのもあって天使のようで…要はモテた。これが自分の武器だと分かってはいたが、この武器を発揮したい相手がいない。いや、たまにおねだりをするために大人達に使ってはいたが。
現王も、先代の王も恋愛結婚しており、正妃を溺愛している。
何でも、かなり昔に王子が政略結婚のために婚約していた婚約者に、平民上がりの男爵令嬢に恋をし真実の愛を見つけたと言って無理矢理断罪したため、その婚約者の呪いでそれ以降の王家は真実の愛でしか心も体も満たされないとか何とか…。ちなみに、その王子は廃嫡となり第二王子が王位を継承している。
心が満たされない、何かを渇望しているような毎日で、年齢が上がるにつれて増すばかりの先の見えない心の飢えに恐怖心も感じていた。
そんな時、公爵家の双子のお披露目のパーティに招待された。
あぁ、またつまらない時間を過ごすのか。たしか男女の双子のオリヴァーとオリヴィアか。紛らしい名前だな。
そんな事を思いながら公爵家へと向かったのである。
まずは当主である公爵に適当に挨拶をし、ふと少し後ろの方でコソコソ喋っている少年を見て…息が止まった。
周りの声や音は何も聞こえなくなり、自分の心臓の音だけがやけにうるさく聞こえた。
少年の周りは白くぼやけ、少年だけしか視界に入らなかった。体は硬直し目も逸らせず、まるで金縛りにあったかのようだった。
少年がこちらに気付き近づいて来る。その時には全身の血が慌ただしく巡り、頭の中で自分ではない誰かが自分と同じ声でささやいた。
(あの子だ。あの子を逃してはならない。)と。
少年が話しかけてくる。確か双子の男の子の名前は…
「ぜひ頼むよ!僕はレヴィ。よろしくね、オリヴァー君」