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MU-CHA KU-CHA

作者: しょん

ユーアの股間にスワンが生えたり、色々ある人生の話

側近しかいない王の間で国王ソルビンは静かに尋ね出した。


「ユーアよ。自分のした事が分かっているのか?」


「はい、残念ながら完璧に記憶しております」


王太子のユーアは頷いた。


「お前は婚約しているナーシャに何をされたか分かっているのか?」


「婚約を…破棄されました…」


「そうじゃな」


深いため息…、王の心労は限界まで達していた。

とはいえ、王太子ユーアも疲れ果てていたのだが。


「本来、王太子が婚約を破棄する事はあるかもしれんが破棄される事など聞いた事がない。先日の卒業パーティーで何があったのか、改めてお前の視点から話が聞きたい」


「そうですね、私はナーシャを屋敷まで迎えに行きました。その時までは特に問題もなく…私達は同じ馬車で会場まで向かいました。会場についても貴族各位の挨拶で私達は二人で対応していました」


王の視線はうつろにユーアを見据えている。


「確か伯爵ノラ家と話している最中に…呪いが発動しました」


「うむ、報告とも一致するのう」


王族は代々悪魔を身に宿す。過去の魔王大戦から数百年、それは呪いとも言われ強い呪いと強さを引き受ける代わりに王族を王族たらしめてきた。


「その結果が…その格好か」


王はじんまりとユーアを見据えた。


「はい、私の……股間にスワンが召喚されました」


シリアスな2人の会話の中、ユーアの股間から異空間が開いておりスワン…白鳥がいた。今は王太子の毛繕いをしている。


「それ、マジなんじゃな?」


「さすがに私もこの状態を望んでいません」


ちなみに宰相は王の横でずっと腕で口を隠して笑いを堪え震えている。こいつら宰相じゃなきゃ殴ってるのにな。

ユーアは何もかもを諦めた瞳で王を見た。


「ノラ家の挨拶はなんとか乗り切りましたが、次のハブス家の令嬢と話している時に、その…スワンが回転しだしまして」


「ハユ嬢が爆笑したと」


「穴があったら入りたかったですよ」



呪いは歳を重ねる事に強くなる事で知られている。現に、今代の王の呪い【シャドウ】は幼少時は弱々しかったものの、今では王国最強の能力として敵国の抑止力となっていた。


王太子ユーアの呪いは【○○】である。これは魔物の言葉なのか読み方も意味も能力もわかっていない。こんな事は王国が始まって以来の事だった。


「消せないの?それ」


「いや、なんか引っ込めるっぽいんですよ、寝る時たまに戻ってますし。でもなぜか基本真っ直ぐ伸びてるんで布団が山みたいになってメイドの悲鳴で起きるんですよね」


「その・・・ふっ・・・んふふ・・今回は長いんじゃな」


「不敬ですがぶっとばしますよ」



ユーアは幼少時からこの訳の分からない能力に悩まされていた。


初めて呪いが出たのは五歳のパーティーの時。

宰相の次男坊ボラと話していた時だった。

ユーアが急に輝いたかと思うと、光が弱まり

頭部だけが輝き続けた。

また、ボラが煙に包まれ、頭部以外が消えた。

ユーアとボラは頭だけ光りながら、首だけ浮かびながらで3日ほど過ごさなければならなかった。

ボラが会場から首だけ馬車に向かう様子は行者がそれを見て気絶するまである意味伝説となっている。


「それで爆笑に耐え切れなくなり、ナーシャの堪忍袋の緒が切れたと」


「そうなります」


あの時のナーシャの顔は思い出したくない。


「もぉーーーーーーー!限界です!栄誉ある婚儀とはいえ私にも限度がございます!ユーア様のその力はなんなのですか?!毎回毎回光ったと思えば消えたり変なものが出たり!私心を病んでしまいました!そのため婚儀の際の規約によりこの婚約は無効とさせてください!」


婚儀の際の約束には確かに結婚まで許嫁を不幸にさせることはあってはならないとあった。ナーシャはそれを履行したのだ。


会場から帰ってしまったナーシャを遠目に見つつ、ユーアは上下にたくましく首を振りながら鳴く白鳥に視界を邪魔されるがままだった。


「分かった、ナーシャの気持ちは察するに余りあるな」


「ですが父上!こんな、あんまりです!私はナーシャを愛しています!」


「お前の気持ちもよく分かる。しかし呪いの正体も分からず対応方法も不明な今はどうしようもないのも事実。貴族の中には王太子としての業務はとても見込めないと、お前の位を剥奪して隠居を勧める者もおるのだぞ。」


「・・・・・」


突如、王の影が大きく立ち伸び、波の様にユーアの前まで何かを運んできた。【シャドウ】の能力だ。


「ユーアよ、旅をしてこい」


「は?」


手にしたのはどこかの地図と親書の様だ。


「隣国のメリカーに聖人ウボーイがおるじゃろ、奴はワシ等の家計の遠縁でな。彼は王家より呪いについて明るい。といってもデリカット平原のどこにおるのかは不明じゃが・・探し出して自分の呪いについて尋ねてみるのじゃ。」


「聖人ウボーイですか…実在したのですね」


スワンがボフンという音と共に消えた。今回の呪いは終わった様だ。


「やっと消えた…」


「旅を通してお前の呪いについて深く知り、なんとしても自分のものにするのじゃ。わしとしてもこのまま引退などできもせんからの」


これが隣国のギルドで爆笑をかっさらっているユーアの旅に出た理由だった。


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