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揺れる瞳

 今日はエルドラドの住民登録の日だ。 ディメンションメンバーみんなで朝からエルドラドへ向かった。


 朝から早速エルドラドの人たちは忙しそうに動き回っている。


「あ! みんな来てくれたニャァ?」


「シアさんおはようございます。 何かお手伝いすることはありますか?」


 ……シアさんのビキニアーマーのお色気度が上がっている。 あの仕立て屋さんから買ったのかな?


「ゴブリンが手伝ってくれてるから大丈夫だニャァ。 でも冒険者に私達がゴブリンをテイムしたと勘違いされてるニャァ」


 ゴ、ゴブリンさん優しい。 そしてテイム……。


「おネエ以外なら何をテイムしてもいいよ!」


 アーニャの意見には同意だ。


「あら、このダンジョンが魔王様の自作自演だってバレないかしら?」


 ハッ! ルルさんの言うとおりだ!


「そんなの冒険者はとっくにわかってるニャァ。 でもドワーフの武器とミスリルが出るから冒険者にとってはおいしいらしいニャァ」


「あ……そうなのね……冒険者も現金ね……」


 ええ……。 まぁ魔族への抵抗感が無くなったならオルガ街の征服もしやすくなるかも?


「あ、で、でもキングバジリスクさんがオルガ軍の人の腕を嚙みちぎってましたよね? それでもおいしいんですか?」


「ああニーナ、あれはハイド様がこのダンジョンで覇気を出す前だったからニャァ。 ハイド様がダンジョンマスターだって知らなかったキングバジリスクが本能のままにやっちゃったらしいニャァ。

 今はそこまでしないでいい感じにピンチにさせてるニャァ。 おかげで救援魔道具がいっぱい売れるニャァ!」


 シ、シアさんまで魔王様の罠にノリノリだ……こんなシアさん見たくなかった!


 とりあえず役人が来るまでやる事が無いので、みんなでエルドラドの人たちのお手伝いをした。




「おう! 役人を連れて来たぞ!」


 あ、魔王様と役人さんが転移して来た。


 ……役人さんはガタガタ震えている。 そうだよね、魔王様と転移なんてどこに連れて行かれるかわからないもんね。

 きっと魔王様、役人さんの返事も聞かずに転移して来たんだろうな……無事にエルドラドへ来れてよかったね。


 魔王様はドルムさんとシアさんに近づいてお話を始めた。


「ドルム、シア、クレイドを呼んでみんなの住民登録よろしくな。

 あとさ、もうダンジョン経営はほとんどお前らに任せていいか? 今後、ボス部屋の宝箱の中身はお前らで準備してくれ、俺からの金銭的な支援は打ち切りだ。

 ドブグロとニャンダフルがあるし、魔物素材を売ったりして生活できるだろ?」


「おお、ガレリーたち行商人を通して生活必需品は買えるからの、大丈夫じゃ。 今まで世話になったな」


「よし! じゃあ俺らはちょっと出かけてくる」


「なんじゃ忙しいのぅ。 こっちの事は任せておけ、ありがとうの」


「ハイド様ありがとうニャァ。 もう私達だけで大丈夫ニャァ」


「あ、コーディは残ってやってくれ、今後のディアブロの店の利益の分け方についてはっきり決めていこう。 つまり魔族と獣人の分け前の割合だな。 利益がどれくらい出てるかとか後で教えてくれ!」


「その点については前から考えていましたのでこちらの資料を」


 コーディさんが有能すぎる……毎日ディアブロの様子を見に行ってたもんね。 コーディさんが資料を魔王様に差し出した。


「……さすがだな。 ……よし! このままの案で獣人と話し合ってみてくれ。 あ、ディメンションは今日も勉強会無しだ」


「かしこまりました!」


「おう。 じゃあお前ら行くぞ」


 お前らって私達の事かな? どこに行くのかな? と思っている間もなく(きら)びやかな部屋にいた。




 ……オルガ城の来賓(らいひん)室ぅうううううう! 何でっ⁉


「人界出店メンバー6人連れて来たぞ!」


「おお、待っておった。 堅苦しい挨拶は無しじゃ、座ってくれ」


 おおお、王様とお姫様ぁ! ……と宰相さん。


「魔王様! もしかして⁉」


 さすがのアーニャもビックリしている。


「おう、オルガ国王だ。 アリアの事は知ってるよな?」


 あ、アーニャが考える事をやめた。 お兄ちゃんもだ。


「お前らに隠すのももう面倒臭いし、店で情報収集してもらうために連れて来た。 まずは国王の話を聞け」


 あ、もう隠さなくていいんだ。 ちょっとだけホッとする。


「アラッ! 魔王様ったらアタシ達に何を隠してたのかしらっ⁉」


 王様がアナーキーのお香の話をし始めたらさすがにみんなの空気が引き締まった。


「さすがに国全体に蔓延(まんえん)するのは我が国としては避けたいのじゃ。 しかも最初に手に入れるのは(ふところ)に余裕のある貴族や富豪じゃ、国を動かしている中心人物達が中毒者になっては国が回らなくなってしまう」


「そうだろうな。 んで調査結果はもう出たのか?」


「アナーキーなのは確定じゃ。 しかも香はかなり輸出されてきておる、アナーキーの混じり物がどれくらいの割合かは調査中じゃ。 毒見の魔道具が意外な所で役に立っておる、感謝する。

 そしてアレイルが元凶かはまだわからぬ。 ただの……アレイルが我が国から輸入している小麦の量が例年よりかなり多い」


「……コルセット!」


「ルルなんだ?」


「魔王様、お茶会でクラリゼッタさんが言っていたわ。 『アレイルのご婦人はコルセットを締め上げる事に熱中している』って……しかも()()()()に、と」


「やはりそうか……。 クラリゼッタは(わし)の妹じゃ、夫が税金を取りまとめておる。 ……つまり関税もじゃ」


 えっ⁉ 何何⁉ どういうこと? そして王様の妹⁉ ってことは……昔は本物のプリンセスだったの⁉


「なるほどなー! アレイルは小麦が凶作か」


「そういう事じゃろうな……」


 あ、収穫後なのに食べ物が足りないから嫌でもダイエットしなきゃいけないって事かな?


「んで、例年より大量に小麦を買うための金をまかなうためにアナーキー入りの香を高値で売ってるってワケか?」


「おぬしもそう思うか……」


「でも同盟国なんだろ? アレイルは普通にオルガにお願いできないのか?」


「そこが謎なんじゃ……。 我が国は穀倉(こくそう)地帯面積が広く食料自給率が高いからの、多少アレイルに融通はきく。 しかしアレイルはなぜ香辛料ではなくアナーキーを……」


「アレイルの思惑でアナーキーを輸出していたとしたら何が考えられる?」


「もっとアレイルの情勢を調べないとわからんの……。 香辛料まで不作なのか……?」


「香はどうすんだ? 輸入制限かけるのか?」


「国民を守るためじゃ、そうすることに決めた。 アレイルには別の支援を提案してみる。 しかしなぜじゃ、なぜ……」


「まあ俺らは何も出来ないからせめて店で仕入れた情報だけでも渡してやるわ」


「うむ、わかっておる。 いち早く情報をもたらしてくれたおぬしには感謝しておるぞ」


「王は孤独だからな。 相談相手くらいならなってやるよ。 じゃあな」


 ……お姫様はずっと黙っていた。 不安で瞳が()れていた。




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