キャラリアからの移住
朝早く目覚めてしまった私は着替えてダイニングへ向かった。
今日から4週目かぁ……。 決戦日は来週の1日目だ。
ディメンションも決戦日に向けて忙しいのに、キャラリアからの移住までやるなんて大変だよぅ!
でも魔王様が決めたならこれが最善だと信じるしかない。 よし! 私に出来ることを頑張ろう!
「ニーナちゃんおはよう」
「あ! ルルさんおはようございます」
ルルさんがこんなに朝早くダイニングにいるなんて珍しいな。 移住があるからかな?
「昨夜みんなに念話した通り、朝からキャラリアに行くわ。 ディメンションの営業は私とニーナちゃんメイリアちゃんがいなくても回るから、終了時間は気にしなくて大丈夫。 ナイトくん達にも今日の勉強会は無しって念話しておいたわ」
「さすがですね。 キャラリアの人達は急に私達が行ってビックリしないですかね?」
「キャラリアの方は魔王様が念話してあるから大丈夫よ。 元々1階層の落盤で向こうの人達も移住を決意していたみたい。 昨日から準備をしているはずよ」
「な、なるほど……」
そして朝食を食べながら、お兄ちゃんたち残るメンバーにキャラリアへ行って来るとお話しした。 みんな昨日ルルさんからの念話で知っているけど、あまりにも急でビックリしてるみたいだ。
「なあニーナ大丈夫か? 何かあったのか? 俺も付いて行ってやろうか?」
「お兄ちゃんありがとう。 魔王様は思い付きで行動するからいつもの事だよ! お兄ちゃんはエルドラドで受け入れ準備をお願い」
「そっか……わかった」
遅かれ早かれ魔王様の中で移住は決まってたみたいだし、まずは移住の事だけ考えよう。
「確かに魔王様はいつも思い付きネッ! アタシ達は営業時間までエルドラドで待機してるわぁ! 今日も勉強会は無しネッ!」
「ニーナ、イケメンは真っ先に私の所に連れてきてね! エルドラドを案内するよ!」
「アーニャは通常運行だね……」
「おはよう! 早速行ってくるな!」
ぎゃぴっ! 魔王様!
魔王様がダイニングに転移して来たと思った瞬間に、私とルルさんとメイリアさんはキャラリアへ転移させられた。 いつも人の返事を聞かないっ!
着いた先は、キャラリアのダンジョンの入口を入った所だった。
「……すごい……村がある……」
「うふふ、メイリアちゃんは初めてね」
「あれ? ルルさんは来たことがあるんですか?」
「ええ、前に魔王様と人界を探索していた時にね」
ああ、昔の人界侵攻の時かぁ。 ……ルルさんは17年前の事でも「昔」という言葉は使いたくないらしい、女子の意地だな。 魔王様は確か36歳……20代に見えるのはなぜだろう。
魔王様を先頭に村へと進み、魔王様がドワーフさんと獣人さん達に呼びかけた。
「おはよう! みんな急で悪いな! 準備出来てるやつからいくぞー!」
「もう覚悟を決めた! 準備はオッケーだぜハイド様!」
ドワーフさんの声で次々とお家を亜空間にしまった。 大工仕事の得意なドワーフさんから移住させるみたい。
そしてお家の持ち主のドワーフさん達と一緒に、魔王様の転移ですぐエルドラドへトンボ帰りだ。 10往復位すれば終わるかな。
「ドルム! ミア! いるか⁉」
「待っておったぞ!」
「ニャー! みんな久しぶりニャ!」
お兄ちゃんとコーディさんもエルドラドにいた。 お手伝いのために待っていてくれたみたいだ。
「あれ? 魔王様、草原地帯を広げたんですか?」
「おう! お前らを迎えに行く前にダンジョンをいじっといたぜ! 2階層もエルドラドにする! 看板はラウンツとアーニャに任せておいた」
ああ……看板ね……うん、どうにでもなぁーれ!
「じゃあ家を配置したい場所を教えてくれ!」
魔王様のお声でドワーフさん達の希望の場所へ家を配置! ちょっと土魔法で地面をえぐってお家の基礎部分を埋め込めばとりあえずオッケーだ! 配管工事はドワーフさん達が後々やってくれる。 ようし! ドンドンいくぞー!
「終わったな⁉ キャラリアへ行くぞ!」
魔王様が私達を転移させて何往復もしてお家は終わった! あとは食料を保管してある倉庫や鍛冶場、製粉所、醸造所だけだ。 畑の収穫が終わった後でよかった。
2階層は畑メインにするらしい。 設備の建物も2階層に配置した。
「魔王様! 私の方は終わりました!」
「おう! 俺も終わったぞ! ルルとメイリアも……オッケーだな! お疲れ!」
「もうすぐ夕方ね、お腹ペコペコだわ。 移住してきたみんなは料理どころじゃないでしょうから私が大量に食事を買ってくるわ」
「ルルよろしく!」
「あ! 僕遅刻ニャ! ハイド様に怒られるニャ!」
すぐそばに魔王様いるけど怒ってないよ……。
魔王様がルルさんにお金を渡してルルさんはミアさんとエルドラドを出て行った。 ディアブロのお店からディメンションまで転移して街で買ってくるのかな。
魔王様は移住してきた人達にエルドラドの説明をしている。 ゴブリンさんとお話できることにみんな驚いていた。
早速ゴブリンさんが「ぼうけんしゃとたたかわないでいいならなにかてつだうゴブ!」と言っていた。 魔王様が作ったダンジョンの魔物だから出来る事だ。 外の野良の魔物なら話すことなんてできない。 魔王様ってやっぱりすごい。
「役人には話を付けてある、明日エルドラドに来てもらうから住民登録をするぞ、いいか?」
「うむ。 面倒な事はさっさと済ませて生活を整えるぞい!」
魔王様のお話を聞いたドルムさんがみんなをまとめてくれている。 これでエルドラドの住人は約200人……。
「魔王様ぁ」
「なんだニーナ」
「エルドラドを守る魔族を増やした方がいいんじゃないですか?」
「あー……そうだな、獣人は強いけど念のため魔族も少し増やすか。 クレイドとシャナキャロルだけじゃさすがにな」
「ではまた人選よろしくお願いします!」
エルドラドを見渡していた魔王様の動きがピタリと止まった。
「人選よろしくお願いしますね!」
満面の笑みで二度言った。
「ドルム……急用を思い出した、みんなの事頼むぞ……」
「……いい配下を持ったの……」
ガックリとうなだれた魔王様がシュン……と転移して行った。




