毒探偵メイリア
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ルルさんメイリアさんの声が聞こえたのでバックヤードへひょいと入った。 メイリアさんはシンクに捨てられた茶葉などのゴミを見ている。
「……この匂い……ちょっとこの香の燃えカスを調べる……」
「まさか……」
「お二人ともどうしたんですか? お香の匂いが臭いですね、窓を開けてきます。 貴族の趣味ってわからないよぅ!」
『……アナーキーの葉っぱの可能性があるかも……』
「えっ⁉」
メイリアさんから念話で返事があったけどつい声が出てしまった。
ア、アナーキー⁉ 何でそんなものがっ⁉
魔界では、魔王様が魔王に就任してからアナーキーは医療以外での使用を法律で禁止されたという歴史がある。 常用すると廃人になるらしい。
病気はポーションじゃ治らないから、死を待つのみの人にだけせめて最後は安らかに過ごせるようにと使用が許可されている。 それですら魔王様はしぶしぶだったらしい。
アナーキーの歴史について学校で習った後に魔王様に聞いたら、モルヒネが無いからしょうがないって言っていた。 異世界のなんかすごいお薬の事らしい。
『……すぐに調べて魔王様に報告する……分析するから今日はジルさんにキッチンを任せる……』
『ニーナちゃん、周りの不安を煽らないよう、魔王様から指示が出るまで他の人には言わないようにね。 特にアレンくん』
『ひゃ! ひゃい! クラリゼッタさんたち、悪い人なんですか⁉』
『もしそうならこの店で堂々とアナーキーを焚くなんて事はしないわ、ゴミまでそのままですもの……。 最近アレイルから入ってきたって言っていたからクラリゼッタさん達はただのお香だと思っているはずよ』
『そ、そうですか……ちょっとだけ安心しました』
『人界では合法なのかしら……』
「みなさん今日は僕のためにありがとうございました!」
ぎゃぴっ! アレンさんがキラキラスマイルでバックヤードへ来てお礼を言ってくれた。 私はなんとなくキッチンを隠すように陣取ってしまう。
「ア、アレンさんお疲れさまでした! ホールへ戻りましょう!」
「? はい!」
ホールに戻って窓を開けてから、ルルさんとアレンさんの頑張りを称えた。
「クラリゼッタさんの社交は腐っても公爵夫人ですね! 2人ともアレンさんを永久指名してくれそうです!」
「あはは、どうでしょう。 全然しゃべれませんでした」
「いえ、逆にそれでいいのよ。 貴族が主役のお茶会ですもの。 平民平民と言われたアレンくんがクラリゼッタさんの許可無しに発言しなかったのは正解よ」
「ルルさんがそう言うなら安心しました」
アレンさんはいったん家に帰ると外へ出ていき、私たちはダンジョンから帰ってきたみんなと2階でご飯を食べたけど全然味がしなかった。
……お香がどうかアナーキーじゃありませんように。 ……でもメイリアさんのカンに引っかかったって事は……ああ! 考えるのやめよう! 魔王様とメイリアさんにお任せだ!
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そして営業が始まった。
「今日の一番乗りはフトリゼッタさんに賭けるよ! あれ? メイリアちゃんは?」
だよね! アーニャになんて言おう。
「あー、俺がちょっと依頼してる仕事があんだよ! ジルは一人でキッチンを回す練習頑張れよ! ははは!」
「はいっ! メイリアちゃんがいなくても出来るようにならないとですね!」
魔王様はメイリアさんから早速報告を受けてるんだな。
ピポン!
「あ! キラキラカリンちゃんだ! また負けたー! ……あ、ルディナちゃんも来たよ!」
「アーニャ、ルナさんとディアナさんのこと?」
「そうだよ! アンナちゃんも来たらアルディナちゃんだよ!」
「アーニャのあだ名は無限湧きだね……。 1匹見つけたら100匹いるヤツみたいだね」
「ヒドイ! せめてあだ名のスタンピードって言ってよ!」
「はぁ……アーニャは悩みがなさそうだね」
「あるよ! いつお客さんとしてお店で遊ぶか悩んでて夜も眠れないよ!」
……もうスルーしよう。
あ、おかえりなさいませクラリゼッタさん。 ……今日はあまりクラリゼッタさんのことを考えないようにしよう。
「素敵な姫達から永久指名頂きましたニャ!」
「「「アッザース!」」」
ああっ! わかってたけど早速ミアさんがルナさんディアナさんから永久指名をっ!
「魔王様ぁ、2人で永久指名って有りなんですか? ミアさんは一人しかいませんけど……」
「アリだ! 客もわかっててやってるからな! ただちゃんとヘルプを付けるぞ!」
「は、はぁ……」
ミアさんの席にはアッシュさんがヘルプに着いた。
「ミアくん、お休みの日は何をしてるの?」
「ダンジョンで戦ってるニャ!」
「カ、カッコイイ……! どんな敵を倒したの?」
「フッ……ソロでキングバジリスクとキマイラニャ!」
「待って⁉ ソロ⁉ すごい!」
「でもミア、キマイラの肉食べてお腹壊したんだよね?」
「アッシュ! それはアイドルにとってタブーニャ! 僕はトイレに行かないニャ!」
「「「あはははは!」」」
「アッシュくんもっとミアくんの普段の話聞かせて!」
「えっ? えっとー、ミアは猫舌だからいつもご飯を食べるのが遅いよ! とっくに冷めてるのにチョンチョンつついて『まだ熱いニャ……』っていつまでも見てて、営業開始ギリギリに『冷たいニャー!』とか言って食べてるよ!」
「待って⁉ イメージ通りなんだけどっ! 天然!」
「くっ……尊い……!」
いつも「待って⁉」って言うのがルナさんで、「くっ……」って苦しんでるのがディアナさんだ。 もうミアさんの席は放っておこう。 大丈夫だ!
そしてクラリゼッタさんが帰った後に……。
「素敵な姫達から永久指名頂きましたー!」
「「「アッザース!」」」
「あっ! アレンくんもVIPの初回2人から永久指名もらったよ! 何で⁉ スゴイ! 永久指名フィーバーだね!」
「あ、今日お茶会をした貴族さんだよ」
「今日の今日で⁉」
「うん……悔しいけどクラリゼッタさんの社交は上手かったよ……」
「ははは! フトリゼッタやるな! 見直したぜ!」
ふと売上表を見ると、売り上げ順位はルフランさん、アレンさん、ミアさん、ネフィスさん、ヴァンさんの順だった。
指名本数はミアさん、ルフランさん、アレンさん、ヴァンさん、ネフィスさんの順。
ミアさんは指名が多いけどリピート率はイマイチ。 レアな獣人さんを1回だけ指名してみた、というお客さんが多いからだ。
ルフランさんアレンさんは指名が多いだけでなくリピート率もいい。
永久指名本数は昨日まででルフランさんが2本、アレンさんが1本、ミアさんが1本だったけど今日でまた動きが……。
イベントによって最終形態になったカリンさんとその他大勢の指名を持つルフランさんがこのままナンバーワンになるのか、アレンさんの貴族のお客様がフィーバーするのか、ミアさんを推しているアンナさん達が火を噴くのか……全くわからなくなってきたよぅ!
そして今日の営業は終わった。 明日はやっとお休みだ! 今週はカリンさんとお茶会で疲れたよぅ……そしてアナーキー疑惑……。
なんで一週間でこんなに色々と起こるのぉ⁉
ヒタリヒタリと何かが忍び寄ってきている気がしてなんだか怖い……。 なんとなく後ろを振り返りながら2階へと上がった。




