NEW! イベント発生!
昨日のカリンさん鎮魂祭は無事終わったけど、カリンさん放置作戦で気が休まらないよぅ! 目に見えない分、常にビクビクする羽目に……っ!
今日も営業前におしぼりをクルクルしながら内勤さんとおしゃべりをする。
「お兄ちゃぁん……今日カリンさん乗り込んで来たりしないかなぁ?」
「念話無視してるからオーガの形相で来るかもな……」
「ひぇ!」
「カリンちゃんルフランちゃんにお熱ネッ! アタシもそんな恋をしてみたいわぁ!」
ラウンツさんがオーガの形相で怒り狂ったらこの街が焦土と化すからやめてっ!
「乗り込んで来た時はラウンツさんお願いしますよぉ……」
「任せてちょうだいっ! アタシもカリンちゃんと同じ乙女だものっ☆ おネエ封印を解いてでも鎮めてみせるわぁ!」
「はっはっは! たぶんそんな事にはなりませんよ」
「バレットさん、なんで分かるんですか?」
「私の経験です」
バレットさんがキリッ! と言った。
「説得力がありすぎてなんとも言えません……」
「くくっ……! バレットさんの武勇伝は面白いですよ! 二股がバレた時に言った言葉、何だと思います?」
「レオさん、一口でお腹一杯になりそうなので結構です……」
「二股はしてない、三股だ! です」
再びバレットさんがキリッ! と言った。
「だから聞いてないですぅ! しかも開き直るどころか思いっきり突き抜けてますね⁉ その後どうなったか気になっちゃうじゃないですか!」
「無事、日替わり定食を勝ち取りました!」
「バレットさんスゲェ!」
「バレットちゃんやるわネッ☆」
恐ろしい……バレットさん恐ろしい……。
バレットさんの武勇伝でワイワイしてたら魔王様がホールへ転移なさって来た。
「おはよう! 今日もカリンイベントの作戦会議しようぜ! 集合ー!」
魔王様がウッキウキだ……。
「……って事で作戦は以上だ!」
「「「はいっ!」」」
「最後に一応言っておくぞ。 ウチの店のモットーは『客は騙すな! 夢を見させろ!』だ! たとえそれが悪夢でも、客が望んでるなら見せてやれ!」
「「「はいっ!」」」
えぇ……そういうの詭弁って言うんじゃないのぉ⁉
そして会議が終わりついに営業開始。 カリンさん、来てほしくないけど来るならさっさと来てぇ!
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「「「おかえりなさいませプリンセス‼」」」
「今日の一番乗りは誰かなー?」
カーテンの隙間から覗いているアーニャのお尻がフリフリ揺れてる。
「アーニャ、よく平気でいられるね……」
私は怖くて覗けない……。
「あ! キラキラカリンちゃんだよ!」
「ぎゃぴっ! 結界張ったほうがいい⁉」
「何で?」
……? カリンさんが怒鳴り込んでくるかと思ったけどラウンツさんが席へ案内してる声しか聞こえない。 カーテンからそっと覗いてみる……。
「カリンちゃん元気ないな! 俺が笑わせてやろうか?」
カリンさんにはヴァンさんが着いた。 昨日爆弾を投入したキキさんはネフィスさんを、出来る子のララさんはセシルさんを指名したみたいだ。 共に修羅場を乗り越えた仲間意識でも芽生えたのかもしれない……。
カリンさんはなんだかしょんぼりしている。 あれれ?
「……ルフランは?」
「あー……。 カリンちゃんは客として見てたわけじゃないからもうお店来なくていいってさ」
「え……」
「ルフラン人気だからさ、カリンちゃんいなくても食っていけるし」
「あ……そう……なんだ……」
ピポン!
あ、おかえりなさいませクラリゼッタさん。 アレンさんが早速エスコートしてVIPへ向かった。 ルフランさんは逃げ場を求めてルルさんの席へ……。
再びカリンさんを見ると、その目はルフランさんの姿を追っていた。 まるで迷子の子猫のようだ。
「魔王様……カリンさんおとなしいですね。 また暴れるかと思ってました」
「フッフッフ! 俺様の計画通りだ! 面白いから見てろよ!」
「なんだかカリンさんが可哀そうになってきましたよぉ……」
「カリンは刺激を求めてるんだよ。 だからこれでいいんだ!」
「えぇ……こんなの求めてませんって!」
「ニーナはドロドロの恋物語がなぜ売れているか考えてみろ」
「あ! 人気だよね! 何でだろ?」
アーニャの言う通りドロッドロの愛憎劇は意外と人気がある。
「なるほど……悲劇のヒロイン願望……ですかね?」
「そうだ! カリンはコンプレックスの塊だからな! 可哀そうな自分が大好きなんだ!」
「カリンさんにコンプレックスなんてあるんですか? あんなに美人なのに」
「娼婦って現実がコンプレックスだ。 それに気付かないように自分をマヒさせてるぞアイツは。
事あるごとに1番1番ってうるさいだろ? 1番を取りたがるのは代償行動だ、つまり1番になれば娼婦って事と相殺できると思ってんだな」
「なんだか難しいですね……」
「答えは簡単だ。 カリンは美人の娼婦、ただそれだけだ。
だけどルフランと恋愛することによって、自分の心の揺れに何か意味があると錯覚させるんだ! 何も無いのに何かあると思わせるのが夢を見させるって事だ!」
「……私がお客様じゃなくて良かったとこれほど思ったことはありません」
「魔王様さっすが~! やっぱり魔王様の考えたホストクラブは恐ろしいね!」
魔王様の心理学講座は上級すぎるっ! カリンさんは本当に悪夢を見て刺激が欲しいのかな?
「キキ……昨日のお仕置きは覚悟して来たんだろうな?」
ネフィスさんがキキさんのアゴをグイッとひねって自分へ顔を向けさせた。
「は、はいっ……」
何でキキさんは嬉しそうなのっ⁉
「ララさん、昨日のお客様の反応はどうでしたか?」
「セシル君の作戦はバッチリ! バカなフリしたらお客さん喜んだよ! 次はね、臭いお客さんの対処法を考えてほしいんだけど……」
セシルさんとララさんはキレ者同士でくっついたんだな、ララさんの接客について真剣な顔で作戦会議をしてる……。 臭いお客さん、嫌すぎる。
「あ、カリンちゃん、代表から伝言。 今回こんな状況だから特別に指名替えしていいってさ。 客から永久指名解除はできないけどルフランが了承したから代表判断でオッケーだって」
「…………え?」
えええええ! 永久指名解除⁉




