おれさまがかんがえたさいきょうのまほう
火竜さんは無数の氷の刃に貫かれて息絶えた……。 ごめんなさい。 今度会ったら謝ろう。
「ニーナ! カッコイイ! それ私にも教えて!」
「昔、魔王様とコソコソ練習してたのはこれか! 何で今まで見せてくれなかったんだよ?」
「アーニャは勝手に魔王様に教わればいいと思うよ……。 お兄ちゃん、私がこんな恥ずかしい魔法を人前で使うと思う?」
「……確かにな。 俺とアーニャじゃ魔力が足りなくて使えないから魔王様は教えてくれなかったのかな?」
「ある意味二人に適性はあるんだけどね」
厨二病って意味で。
……アーニャが早速「フッ……雪の蓮華は……二度、咲く……」とかブツブツ言ってる。
「ニーナちゃんスゴいわぁ! アタシもアレを耐えられるか試せばよかったわっ!」
ラウンツさんなら物理的な力でなぜか耐えそうだから怖い。 夢でもエタフォ効かなかったし。
「……ニーナ、また見せて……」
「ニーナちゃん、恐ろしい魔法を教わったのね……」
ルルさんが怯えているのは攻撃力と厨二病のどっちかな⁉
「もう二度とやりませんっ! 恥ずかしすぎますぅ! お兄ちゃんアーニャ! 約束通りもうへっぽこ扱いしないでね⁉」
「うんわかったよ! ニーナもやっと闇の世界に来たんだね!」
「来てないよぅ!」
新たな誤解が生まれてる……ッ! 魔王様のせいだっ!
「とにかく火竜さんを解体して素材を持ち帰りましょう? もう私は疲れました……」
みんなで手分けして解体した火竜さんの素材は、ほとんど私の亜空間に保存した。 メイリアさんが欲しがった眼球などの素材はメイリアさんに。 ……これで私の眼球諦めてくれないかな?
ちなみに50階層を調べたらダンジョンの先が無かった。 50階層で終わりみたいだ。 魔王様に報告しよっと!
そしてその日は各自ゆっくり夜を過ごして、明日から始まる一週間に備えた。
──────────────
朝起きてみんなで朝食をとっていたら魔王様が転移なさって来た。
「おはよう! 昨日50階層行ったんだって? どうだった?」
あ、そうだ、素材を渡して魔王様に褒めてもらってやっとミッションコンプリートだ!
ラウンツさんが魔王様に大体の事を報告してくれた。
「ははははは! ニーナ本当にエタフォ使ったのか!」
「はいっ! 魔王様の教えをちゃんと守りました! 全詠唱しないと効果が発揮されないんですよね? シメの台詞もバッチリでした! 素材も持ち帰りましたよ!」
さぁ! 褒めてください魔王様!
「ん? ……ああ……そうだ! エタフォは全詠唱しないと失敗するかもしれないからな! これからもちゃんと全詠唱しろよ⁉」
「はいっ!」
「魔王様! 私にも教えて!」
「あー……アーニャはニーナから教われ。 俺は忙しい!」
えぇ……魔王様昨日寝まくってたよね? 私があの恥ずかしい詠唱を教えるのっ⁉ やだよぅ!
でもそれよりミッションだ!
「魔王様、素材はどうしますか?」
「おお、ニーナよくやったぞ! いい感じに捌いといてくれ」
「お任せください!」
わーい魔王様から褒められた! 50階層まで行ってエタフォを使ったかいがあったよ!
「あ、魔王様、ディアブロは50階層で終わりでしたよ。 冒険者ギルドに報告しますか?」
「そうなのか? う~ん……でも昨日ニーナが魔法ブッ放したから新しい階層ができるかもな。 50階層にマナが充満してるだろうからその可能性はある。 別に報告しなくていいぞ、まだ人族はそこまで行けないだろうから」
「新しい階層が構築されるんですか……わかりました」
そのあと商業ギルドマスターのワコフさんに念話して、一括買取してもらうことになった。 メイリアさんもトロールさんとオーガさんのいらない素材を売りたいそうだ。
私はナイトさんの勉強会があるから、ルルさんメイリアさんが行って来てくれるらしい。 私の素材を全部ルルさんに渡した。
さて! ご飯を食べ終わってそろそろディメンションの営業開始だ! 魔王様達とバックヤードへ待機。
「あ、メイリアさん、素材は売れましたか?」
「……ん……ルルさんが交渉して3000万ディルになった……火竜はキャラリア方面でたまに討伐されるみたいだから意外と安かった……素材の半分はドルムさん達にあげた……」
「そうなんですね」
ドワーフさん達が喜んだならいっか。
メイリアさんが早速魔王様に売却代金を渡していた。 そして魔王様が魔族みんなに特別ボーナスをくださった。 私の分は恋物語の本代も含まれているらしい。 コーディさんもドルムさんの武器購入に一歩近づいて嬉しそうだ!
「クスクス……そうだったんだね魔王様!」
「昔過ぎてもう覚えてねんだよ。 ニーナには言うなよ⁉」
「意味無いのに全詠唱を……ぷくくっ!」
アーニャと魔王様が小声で何か話してたけど、私はメイリアさんと話してたからよく聞こえなかった、何だろ?
「ニーナ! お客さんが来るまでエタフォの詠唱教えて! ……ブフォ!」
「何笑ってるのアーニャ? しょうがないなぁ……紙に書くから自分で覚えて!」
あの恥ずかしい詠唱を一字一句漏らさず紙に書いてアーニャに渡した。 ちゃんと、「雪の蓮華は……二度、咲く……」の部分は溜めてゆっくり言うのがコツだという魔王様の教えも注意事項として書いてあげた。
「あ、ありがと……!」
アーニャは震えながら紙を受け取った。 口元がニヤついてる……よっぽど嬉しかったのかな。
ピポン!
「お客様ご来店です!」
「「「おかえりなさいませプリンセス‼」」」
おかえりなさいませクラリゼッタさん。 今日は……またアレンさん?




