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最後の一滴

「マジキメェ! 昨日のVSもV.S.O.Pも両方残ってるしマジ今日当たったの最悪だ!」


 ネフィスさんがお水をヤケ飲みしてるよぅ!


「ははは! 公爵夫人様は欲求不満だな! 旦那に相手されてないのか?」


「……多分そうなんでしょうね。 既婚者(きこんしゃ)の家には行けないって言ったんすけど、旦那はほぼ家にいないからって言われました。 代表、マジ助けてください!」


 ネフィスさんは必死の形相だ。


「永久指名したら考えるって(にご)す手もあるが、やだろ?」


「あのババアの永久指名なんて終身刑よりキチィ!」


「ははっ! 根性ねぇな! まぁ俺でもアレはキツイけどな。 とりあえず貴族の情夫(じょうふ)と勘違いされたらお貴族様の名に傷が付くからって言え、それでもダメなら店のルールだって言うんだな。 んでルルに念話して指名もらって逃げろ」


「はぁ……そうっすね。 とりあえず戻ります……ルルさんマジ女神!」


 ネフィスさんは希望を見出して戻って行った。


「サカリゼッタさんとラウンツさんどっちが強いかな⁉」


「アーニャ、『リゼッタ』の部分ちゃんと覚えてたんじゃん。 そしてサカリゼッタさんはさすがに言い過ぎだよぅ!」


「えー面白いのに! お店の店員ってさ、常連さんにあだ名付けるじゃん? それやってみたかったんだよね!」


「お客様で遊ばないでよぉ」


「ははは! サカリゼッタはウケるな! あ、ウケるで思い出した、キャロルとシャナ呼ぼうぜ! ネフィスがルルとキャロル達の2卓も回ればサカリゼッタの席に着く時間が短くなるだろ」


「私が念話するよ!」


 アーニャが念話したところ、ディアブロのお店にまだ冒険者さんが来そうなのでキャロルさんだけ来るとの事だった。 シャナさんは「次は私が絶対行きますわよ!」と言っていたらしい。


 クラリゼッタさんの生々しい会話は聞きたくないので休憩しよう……。




「やっほー! キャロルちゃんが来たよー!」


「あっ! キャロルちゃん早いね!」


 うん、転移陣で直接バックヤードに来たからね。


「ネフィスくんぴえん超えてぱおんなんだって?」


「意味わかんないけどそうだよ!」


「指名してあげるよ! マジあたし優しみしかなくない?」


「優しみが深いね!」


 アーニャがキャロルさん語を習得しつつある……。 私には無理だっ!

 アーニャが念話で呼んだのかお兄ちゃんがバックヤードに来てキャロルさんを席へ案内した。


「ニーナ! キャロルちゃんの席面白そうじゃない⁉」


「今日はもうミミマカリンさんとクラリゼッタさんで疲れたよぅ」


「ニーナもミミマカリンって言ってるじゃん!」


「……悔しいけど便利だね」


「ホラホラお仕事!」


 仕方なくキャロルさんの席へ方目と片耳を〈影移動〉……。


「ねぇ……ニーナさあ、ずっと思ってたんだけどその顔コワイよ? 耳はまだしも片目ないのはアンデッドも逃げ出すレベルでひどいって!」


「……えっ⁉ あっ! 言われてみれば確かに! ……何で早く教えてくれなかったのぉおおお‼」


 自分の顔がどうなってるかなんて気にしてなかったよぅ! もしかして今までずっとアンデッドみたいな顔でみんなとお話を……? あぁぁぁああああああああ!!!!!


「だ、だって気にするかなーって言いにくくて……」


「それは優しいイジメって言うんだよぅ! うわーーーん!」


「ははは! 今まで気付いてなかったのか! さすがへっぽこだな!」


「魔王様まで! 今すぐ集音魔法教えてください!」


 速攻覚えてやった。 よし! 〈集音〉!




「ネフィスくんマジー⁉ そのサカリなんとかってチョーウケるんだけど!」


 もはや「リ」しか残ってないクラリゼッタさん……。


「マジ笑い事じゃないんだって! ただでさえ貴族なんて怖ぇのによぉ」


「まぁいざって時はルルさんの魔道具があるし!」


「そうだなー、ルルさんマジ女神」


「ネフィスくんもしかしてルルさんのこと好きぴ⁉」


「いや、ルルさんは魔族ってのを抜きにしても高嶺(たかね)の花すぎるなー、俺はキャロルちゃんみたいな子がいいぜ」


「ネフィスくん上手くなったね! でもあたしは騙されないよ⁉ 誰が研修したと思ってるの?」


「……ははははは! キャロルちゃんにはバレバレか! ホントはそうだな、何でも俺の言うこと聞くドM!」


「それならニーナだね! 魔王様にいつもいじめられてるのに喜んでてマジウケるよ!」


 速攻集音魔法を解除した。


「ねぇアーニャ……私って周りからそんな風に見られてるの?」


「……う~ん、そ、そんな事ないよ?」


「私の目を見て言ってほしかったよ……」


 もう今度こそ休憩するっ! すぐそばにいるコーディさんの陰に隠れてちんまり椅子に座った。 コーディさんも苦笑いで察してくれている。




「なぜ指名したナイトが戻らないのかしらっ⁉ わたくしに対して失礼でなくって⁉」


 ぎゃぴっ! クラリゼッタさんの声がバックヤードまで聞こえてきた! ついに怒ったよぅ!


「あわわ! ま、魔王様ぁ!」


「落ち着け、幸いアレンがヘルプだ」


 アレンさん⁉ 〈集音〉! すっごい気になるからカーテンからもチラ見! さらに目に〈身体強化〉!


「クラリゼッタ様……落ち着いてください。 ネフィスもプリンセスの席に戻りたくても戻れないんです。 実は今日、他にも2卓指名がありまして……」


「わたくしを誰だと! ……」


 クラリゼッタさんは貴族の身分を振りかざそうとしてギリギリやめた。 ひぃ! プレオープンで魔王様とお姫様が釘を刺しててよかったよぅ!


「クラリゼッタ様、ここでは残念ながら皆が平等にプリンセスです。 しかし()()とは言っていません」


「……どういう事かしら?」


「プリンセスが他のプリンセスより心のこもったお酒を入れてくださるのならば、それを頂かないわけにはいかないという事です」


「……それがここでの身分という事ですわね?」


 アレンさんはニコニコしてる……。


「他の席は何を入れているのかしら?」


「シェッガです」


 1万ディルのワインだ。


「VSをもう1本持っていらっしゃい!」


「ありがとうございます。 ではこのVSは僕が頂いても?」


 クラリゼッタさんが閉じた扇子でVSを差し、手首だけでクイッと上げた。


「頂きます」


 アレンさんが残ったVSを自分のグラスになみなみと注ぎ、ついにビンは逆さまになった。 最後の一滴がグラスに落ちる……。 そしてグラスを一気に飲み干した!


「素敵な素敵な姫からVS頂きましたぁー! アーザーッス!」


 アレンさんの声がフロア中に響き渡る。


「「「アザーッス!」」」


 ……アレンさん! 1ディルも売り上げにならないのに!


「フッ…………アレンは売れるぞ‼」


 魔王様のお声は神託のようだった。




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