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まだまだ現役バレットさん

 ピポン!


「お客様ご来店です!」


「「「おかえりなさいませプリンセス‼」」」


「おや、マーガレット姫おかえりなさいませ」


「ご、ごきげんようバレット様……」


 あ、正式オープンの日にバレットさんを指名した貴族のご婦人だ。 内勤のバレットさん指名という事と、ふくよかな人だからバッチリ覚えてる。


 マーガレットさんは入口からそのままバレットさんにエスコートされVIP席へと案内された。 バレットさんの左腕をおずおずと(つか)んでいるその姿はまるで少女のようだ。


「ニーナ! バレットさんの接客は見物(みもの)だよ!」


「そうなの? 一昨日(おととい)はバレットさんの会話まで聞いてなかったよ」




 バレットさんはマーガレットさんの右手を両手で包みつつ視線を落とし、微笑みながら話し始めた。


「プリンセスにこんなに早くお会いできるとは思ってもいませんでした。 もしかして私の独り言が念話で届いていましたか?」


「や、やだっ……。 わ、わたくしもお会いしたかったですわ」


「そのプリンセスの念話は届いていましたよ、はっはっは!」


「うふふ……漏れちゃっていたのね。 もうっ! バレット様ったらご冗談がお上手!」


「ははは! では今宵(こよい)は何をお召しに?」


 ……バレットさん、現役の頃の輝きを取り戻している……! いや、現役の頃なんて見てないんだけどさ。


「アーニャ、バレットさんの若かりし頃の残像が見える気がするよ……」


「でしょ⁉ バレットさんもまだまだ現役だね!」




 バレットさんは内勤さんだから、店内を見渡しながらマーガレットさんとお話ししていた。


「あ、あの、バレット様、無理を言ってごめんなさい。 わたくしとあまり目を合わせてくださらないのはお仕事が……」


「ああ、失敬。 避妊(ひにん)のためです」


 バレットさんがキリッと言った。


「……………………アハハハハハハハハハ! もうっ! バ、バレット様! アハハハハハハ! 笑いが止まらないわ!」


 ……あれか、「目が合った女子は妊娠する」っていうイケメンのみが持つことを許されているユニークスキルの事か。 ものすっごい下ネタなのに一周回って紳士対応に聞こえたのはなぜだろう……。 熟年の技、恐るべし!


「でも今更だけど本当にいいのかしら……お店のルールを破らせてしまったのではなくて?」


「はっはっは! 確かに魅力的なプリンセスの前ではルールなど守れませんね。 今は騎士(ナイト)として貴方(あなた)しか守れません」


「バレット様……!」


 マーガレットさんは震えて感動している……。




「アーニャ、なんか私は疲れたよ……」


「えー楽しいのに! バレットさん切り返しが上手いね!」


「ははは! バレット中々やるな! あれは相当自分に自信が無いと言えないぜ!」


 どこか逃げ場を……。




「コーディさん……かくまってください」


「ニーナさんお疲れですね」


 コーディさんは笑いながら(ねぎら)ってくれた。 私はキャッシャーの小さなスペースにある椅子にちまっと座る。


「甘ったるい恋物語の台詞とかヴァンさん達の下ネタ魔法とかバレットさんのチャラ男時代の輝きで目と耳がつぶれそうです」


「あはは! ニーナさんは真面目ですからね、今日はもうゆっくり休んでいいと思いますよ。 営業前にもお仕事してるんですよね?」


「そういえば恋物語の台詞を教えるお仕事をしていますね。 お言葉に甘えてちょっと休みます」


 ふと売上表を見るとミアさんが一番だった。 指名本数が多いのはアレンさんルフランさんだ。 初のナンバーワンは誰になるのかな。

 そしてその日はコーディさんの大きな体に隠れて営業を終えた。




──────────────


 今日も営業前まで自室でエルフの本を読んで過ごす。


 目撃情報によると、エルフは金髪か銀髪の碧眼(へきがん)で耳が長いらしい。 魔族も人族に比べたらちょっとだけ耳が長いな。 そして青い目は魔族では見た事が無い気がする。


 目撃された場所によると、エルフの隠れ里はサレノバ大森林の南側が濃厚らしい。 ステルス結界や昏迷(こんめい)魔法が使用されていて見つけられないのではとの事だった。 そしてエルフを探しに行った冒険者の中に行方不明者がいるそうだ……ちょっと怖い。


 なんでエルフは隠れてるのかな? ドワーフさんや獣人さんは人族に利用されるのを嫌って隠れ住んでたけど。

 まあいいや、楽しかった! 読み終わったからメイリアさんに本を貸してあげよっと! ちなみにイケメンエルフの挿絵(さしえ)は無かった。





 トントン


「……ニーナどうしたの?……」


「エルフの本を読み終わったから持ってきましたよ」


「……ありがと……入って……」


 初めてメイリアさんのお部屋に入った。 ……うわぁ……錬成中だったのか机の上には錬成道具がギッシリと。 そしてベッドには本が散乱してる。


「……研究してた……いつもはもっとキレイ……」


 片付けられない人が言う台詞ナンバーワンだ! メイリアさんはずっと錬成とか研究してるのにキレイな時ってあるのかな⁉


「う、うん。 ところで何の研究をしてるんですか?」


「……マナと光の研究……」


「なんだ、私の研究じゃなかったんですね、よかった」


「……ニーナはいい実験体……」


「ぎゃぴっ! やっぱり!」


 ベッドに(くく)りつけられたりしないよね⁉ 本を渡して逃げよう! メイリアさんに本をズズイッと差し出した。


「じゃ、じゃあ私はそろそろ1階へ行きますね! お仕事があるので!」


「……私も行く……」


 ……そうだった!




 1階へ降りるともうルルさんがいた。 店内照明の魔道具を増設してる……。


「あら二人ともおはよう」


「ルルさんっ! 助けてください! メイリアさんの実験体にされるんですぅ!」


「実験? 楽しそうね」


 あああ! ルルさんも研究者気質だった!


「……ニーナの〈紅霧(こうか)〉の仕組みが少し分かったかも……」


「えっ⁉」




明日4/6はお休みします(●´ω`●)

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[良い点] バレットさん!! 「避妊のためです」に吹きました! 恐ろしい……ブイブイ言わせてたイケオジ恐ろしい……
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