2号店正式オープン 後編
アッシュさんがまさに灰色のオーラを出しながらルルさんに相談してる……。
「ルルさん……いざ初めてのお客様となるとうまくしゃべれません……つまんないって言われちゃいました」
「あらあら……。 研修の時は私達ばかりが相手だったものね。 アッシュ君は普段お友達とどんなお話をしているのかしら?」
「え? そうですね酒場でバカ騒ぎする時は……ルッ! ルルさんには言えません!」
「? 私に言いにくいなら魔王様に相談したら?」
「そうします、ありがとうございます」
アッシュさんがバックヤードに来た。 アッシュさんはモジモジくんタイプのナイトさんだ。
「代表……」
「置物で悩んでるのか?」
「はい……」
置物って何だろ? こっそりアーニャに聞いたら、しゃべれなくてただ座ってるだけのナイトさんは置物にしか見えないから「置物ナイト」って呼ぶんだそうだ。 またいらない知識が一つ増えた気がする……。
「話は聞いてたぞ。 ルルに言えないことってなんだ?」
アッシュさんはチラリと私とアーニャ、メイリアさんを見てから話しだした。
「実は僕童貞で……女性の扱いがいまいちわかりません」
あっ! 私たちを子供だと思ってるな! 失礼な! ルルさんには見栄張るくせにぃ!
「ははははは! 童貞か! じゃぁ童貞キャラでいけよ! 童貞を前面にアピールして笑いに変えろ!」
「ええ……恥ずかしいですよ」
「一般人ならウケるから思いっきりやってみろって! あと、童貞卒業したいなら売春婦の客にでも教えてもらえ」
「は、はぁ……。 売春宿のお客さんなんて来ますかね?」
「そういえば商売女はまだうちの店に来てないな……。 営業かけに行くか……」
また魔王様が何か企んでるよぅ!
アッシュさんはとりあえずニコニコ笑っとけという魔王様からのアドバイスを受けてホールへ戻った。
「うぜぇぇぇえええええええ‼」
ルフランさんが戻ってきた……。
「またクラなんとかさんかな⁉」
「そうだよあのババアだよ! VSイッキさせられた! アーニャちゃんの魔眼で殺して!」
「フッ……私の封印解放の代償は高いよ?」
「カケで!」
「うちは売掛禁止だよ!」
「じゃ、じゃあメイリアちゃん解毒剤……」
「……服用は1日1回まで……」
「ははは! ルフラン、酒に慣れるために我慢しろ! でももう1本入ったんだろ?」
「まぁそうですけど……早く帰んねーかなアイツ!」
「ナイトは根性だ! 頑張れ! 気合いだ! ラウンツとのダンスを思い出せ!」
「……‼ 確かにアレに比べたら……ッ! 頑張りますっ!」
ルフランさんは気合いを入れてダッシュでホールへ戻って行った。 ラウンツさんのダンスに意外な効果が……。
「ねぇアーニャ、聞きたくないけどラウンツさんのダンスの被害はどれくらいひどかったの?」
「……ナイト達の心をバッキバキに折ってたよ。 ナイトくんいわく、近距離で熱烈な視線を送られ続けて、さらにもしかしたら唇を奪われるんじゃないかっていう危機感で一時も気を抜けなかったんだって!」
「……想像に容易いね」
「ラウンツの方がはるかにマシだと思えるくらいひどい容姿の客も来るからな! いい経験だ!」
「魔王様……私はラウンツさん被害者の会が発足しないかいつもビクビクしてますよぅ……」
魔物さんから始まり、お兄ちゃんコーディさん、そして私達、次はナイトさんにまで被害が!
「本人がいない所でもネタにされるって事はみんなに愛されてる証拠だ! ラウンツがいて楽しいだろ? ははは!」
確かにそうかもしれないけどぉ! 結局楽しんでるのは魔王様だけな気がするっ!
「あの、代表……ご相談が」
「バレットどうした」
「お客様に私を指名したいとおっしゃられた方がいらっしゃいまして……。 私はナイトでは無いのでと丁重にお断りしたのですが」
「おっ! 早速オジホス好きの客が来たか! バレット、やってみろよ! 売り上げはナイトと同じように給料に上乗せするぞ!」
「えっ! いいのですか? しかし私には内勤の仕事が……」
「内勤の仕事に支障が無い程度なら席に着くって条件で指名を取れ! お前もやってみたかったろ? 若い頃はブイブイいわせてたタイプと見たぜ!」
「……はっはっは! 実は私も若い頃は……おかげで一人の女性に決めれずこの歳で独身ですよ! わかりました! やってみますありがとうございます!」
バレットさんはウキウキとホールへ戻って行った……。 バレットさんがノリノリだ! そして思わぬ過去が!
「魔王様、ずっと気になってたんですけどオジホスって何ですか?」
「オジサンホストの事だ! 渋くて落ち着いたジジイが好きな女もたまにいるんだよ。 まぁバレットはまだジジイって歳じゃないけどな、ナイトの中ではジジイだ」
「な、なるほど……」
なんにでも使えるって言ってたのはこの事か……。
ふぅ。 正式オープンしたらやっぱりあわただしいな。 ところどころシャンパンが入ったり、ナイトさんが魔王様に相談に来たりと、あっという間に時間が過ぎた。
……コーディさんのおかげで私が何もお仕事していないのは内緒だ……っ!
そして今日の営業は終了した。
「お疲れー! プチミーティングするぞー! 何か質問あるやついるかー?」
実際にお店が始まると、ナイトさん内勤さんは色々な質問や不安な点が出てきたらしく魔王様に相談していた。 ミーディングが終わったら軽く片付けて解散だ。
「よし! じゃぁ営業かけにいくか! ラウンツ! レイスター! アッシュ! あと酒が飲みたいやつは来い! 俺のおごりだ!」
みんなハテナ顔をしていたけど何人かのナイトさんも魔王様に着いて行った。 営業かけに行くって何するんだろう?
やめて!オカマバーに行ったらおネエの特殊能力でレイスターの精神まで燃え尽きちゃう!
お願い、死なないでレイスター!あんたが今ここで倒れたら、ディメンションメンバー唯一の良心はどうなっちゃうの? ライフはまだ残ってる。ここを耐えれば、おネエに勝てるんだから!
次回、「レイスター死す」。デュエルスタンバイ!




