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2号店正式オープン 前編

「おはよう! ついに正式オープンだな!」


「「「代表! おざまーす!」」」

「おざますニャ!」


 ……なんでナイトさんはみんな「おざます!」とか「アザス!」「オナシャス!」とか言うのかな? 「おはようございます」「ありがとうございます」「お願いします」を普通に言ってはいけないルールでもあるのだろうか。

 あとミアさんもナイトさんに染まってる……。


「最初のうちは安く楽しませろよ? 3ヶ月は日当(にっとう)が出るんだから売り上げより『育て』を頑張れ! 『(あお)り』は時期や人を見定めろ」


「「「はいっ!」」」




 各自準備に入る。 私はコーディさんの邪魔にならないよう内勤さんのおしぼり作りを手伝った。

 おしぼりは火と水魔法を複合させて温かく湿らせ、ひとつずつクルクル巻いてルルさんが作ってくれた保温ボックスに入れておく。

 ちなみに使用済みのおしぼりや制服はコーディさんが洗浄魔法で毎日キレイにする。 人族に洗浄魔法は難しいらしい。


「あ、バレットさんもレオさんも魔法使えるんですか?」


「日常生活で使う程度ならできますよ、使用人の仕事をするのに水魔法は便利ですから。 ただ火魔法と複合させるのは難しくてレイスターさんに教えてもらいました」


 おしぼりをクルクルしながらバレットさんが私の質問に答えてくれた。


「ああ、お兄ちゃんは魔法剣で戦うから魔法の調整が上手いもんね」


「まさかおしぼり作りに役立つ日が来るとは思ってもなかったぜ……」


 おにいちゃんはちょっと悲しそうだ。


「そういえば『育て』とか『(あお)り』とかって何?」


「ああ、ニーナはまだ知らなかったか。 育てってのは、最初は安く頻繁(ひんぱん)に店に通わせて仲良くなることだ。 んで、ナイトにハマッたところで高い酒を煽るんだよ」


「ひぃ! 怖いよ! お兄ちゃんも魔王様の悪事に加担するのっ⁉」


「悪事って……別に無理やり酒を入れさせる訳じゃないからな? ちょっとおねだりしてみるだけだ。 おねだりが成功するよう心理的に育てるって意味だよ」


「そ、そっか……少し安心したよ」


 これはお客様を心理的支配下に置く作戦だな。 さすが魔王様!


「あはは! あと他の育てもあるぞ。 街でナンパした女とプライベートで仲良くなってから店に誘導────」


「あ、もういいや聞きたくない……」


「ニーナちゃんには刺激が強すぎるわネッ☆」


「そういえばダンスでラウンツさんの合格者は出たんですか?」


「半分は合格よっ! ミアちゃんはさすが獣人なだけあってダンスもスゴイわよぉ! お楽しみにネッ☆」


「は、はぁ……ミアさんがダンスが得意なのは意外です」


 チラッとお兄ちゃんの顔を見るとニヤニヤしてる……これは結構な被害者が出たな……。




 ピポン!


「お客様ご来店です!」


 ドアホンが鳴り、コーディさんの声でみんな一斉に並ぶ。 ルルさんは黒のドレスで一般席へ待機済だ。 魔王様とアーニャはバックヤードへ。


「「「おかえりなさいませプリンセス‼」」」


 あ、ベルラさんとそのお友達だ。 早速来てくれた!

 アーニャとバックヤードのカーテンから手を振ったら笑顔で振り返してくれた。


「ニーナ! 今日も盗聴よろしくね!」


「アーニャも集音魔法覚えなよ……」


「……!」


 あ、これは今初めて思いついた顔だ。 早速魔王様に教えてもらってる……。

 すぐに覚えて「(つど)え、鎮魂歌(レクイエム)……」とか言って使ってた。 誰も死んでないよ? レクイエムって言いたいだけだよね?


 さて、私もベルラさんは気になるからコッソリ耳と目を〈影移動〉……。 い、一応お、お仕事だからっ!




「ベルラさんご指名はございますか?」


「え、えっと……ルフラン君……」


 ベルラさんが恥ずかしがってる! お仕事で装備を着ている時とは違ってモジモジと女性らしい。 そしてルフランさんはアーニャいわくこの店一番のイケメンさん。 ベルラさんもやっぱりイケメン好きだった!


「かしこまりました! お友達は初回のお客様ですね? システムのご説明をします!」


 レオさんの接客もいい感じ! お客様の名前をちゃんと覚えてるし!


 すぐにルフランさんが来た。 金髪のサラサラの髪をなびかせて、恋物語の騎士のイメージピッタリだ。


「ベルラさん早速来てくださってありがとうございます。 プリンセスに早く会いたくてこの1週間楽しみにしてました……」


「えっ⁉ そ、そんな……」


「あ、お酒は何にします? プリンセスはエールが好きでしたよね?」


「あ、えっと……じゃぁとりあえずエールで」


 庶民はとりあえずエール! だもんね。 エールはナイトの分と合わせて2(はい)出しで2000ディルが1単位だからお財布にやさしい。

 いや、普通の酒場で飲めば1杯300ディルなんだけどさ……。 ダメだっ! このお店にいると2000ディルが小銭の感覚になっちゃうよぅ!


「じゃぁお酒が来たところでプリンセスとの再会に乾杯!」


「か、乾杯!」


「ベルラさんこの間言っていたお兄さんのお話聞かせてください! 本物の騎士のお話に興味があります」


「えっ⁉ 兄さんは騎士じゃなくて軍人ですよ」


「僕たちからしたら軍人も騎士も一緒ですよ。 軍の偉い方なんですよね? すごいなぁ」


「兄さんは実力でのし上がったけど堅物(カタブツ)で……」


「何かお困りなんですか?」


「たまに部下が兄さんの愚痴(グチ)を言っているのを聞いちゃうことがあってね……兄さん悪い人じゃないんだけど」


「身内の事を言われるのはキツイですね。 どんな事を?」


「うんあのね……」


 その後ベルラさんはライオットさんと部下との間を取り持つ中間管理職の辛さをこぼしていた。 ……早速お客様の心の隙間に入り込んでるっ! ルフランさん……恐ろしい子っ……!




 ベルラさん達の会話に耳を傾けていたけど、気付いたらたくさんお客様が来店してる!


「ミアくん来たよ!」


「ニャ! アンナ待ってたニャ!」


 あ、ミアさんと仲良くしてた商人のお嬢さんだ。 ミアさんは丁度入口にいたので、内勤さんが案内するまでもなく2人仲良く一般席に座った。 こ、これは指名ってことになるのかな?


「アンナ、僕はダンスを覚えたニャ! 永久指名してくれたら一緒に踊れるニャ!」


 い、いきなりサラッと永久指名をおねだりしてる! ミアさん天然だからなぁ。


「そうなんだ! 私はミアくん以外はどうでもいいから永久指名するよ! ダンスしたぁーい!」


「わーい嬉しいニャ! オナシャスニャ! 永久指名頂きましたニャ!」


 ホールがザワッ……っとした。


 ぇぇえええ! いきなり永久指名が入っちゃったよぅ!




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