2号店プレオープン 中編
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(〃・д・) -д-))ペコリン
「アレンです。 ご一緒してもよろしいですか?」
魔王様が念話で呼んだのか、アレンさんは自分のグラス片手に跪いてお姫様へご挨拶した。
「うむ。 苦しゅうない」
「アリアのそのしゃべり方は何なんだ? もっと砕けろよ」
ま、魔王様、お姫様に文句言ってる……。
「む、そう言われてもの……」
「まるで本物のプリンセスみたいですね……僕は好きですよ?」
アレンさんっ……! そこにいるのは本物のプリンセスですごめんなさい! そしてサラッと好きとか言ってるぅ! ルルさんから色恋のレクチャーを受けたのかな⁉
「ほう、そなたはわかっておるの。 ハイドよ、見習え」
「何でだ! 俺が教える立場だぞ⁉」
ドッと3人が笑った。 あ、あれ? 魔王様があれだけ失礼なことを言ったのにお姫様怒らないの?
「ところであの棚に飾ってあるのはなんじゃ? わらわの部屋にも欲しいのう……」
「あれはお酒ですよ。 プリンセスの席を華やかに飾るのにピッタリでしょう?」
「飾りボトルっていうんだ。 俺がデザインしたんだぞ!」
「なにっ⁉ 酒のボトルがあんな形をしておるのか⁉ じゃ、じゃぁあのくまさんも……」
「フッフッフ……そうだ! くまさんも酒だ! キラキラの方は300万だ! 入れるか?」
「な! 300万じゃと⁉ ぬう……しかしあんなもの見たことがないのじゃ、欲しいのう。 ……じゃがわらわのお金は民からの税じゃからの、よく考えて使わねばならぬ」
「ははは! 冗談に決まってるだろ。 でも意外だな、アリアはちゃんと無駄遣いしないように考えてるのか?」
「うむ。 おねだりすれば父上は何でも買ってくれるじゃろうが、それではひいきの商人が儲かるだけじゃ。 もっとまんべんなく民に金が回るよう考えるのがわらわ達の役目じゃろう?」
「ちびっこのくせにちゃんと教育を受けてるんだな、見直したぜ。 ところでこの店で金を使えば経済が回るぞ?」
「む? なぜじゃ? おぬしが儲かるだけじゃろう?」
いつのまにか経済の話に発展してる……。 アレンさんは空気を読んで2人の話に耳を傾けている。
「実は指名客の会計の半分がナイトの給料になるんだよ。 破格の給料体制だろ? すぐに月100万稼ぐナイトも出てくるだろう。
そしてナイトは庶民だ。 まずは自分や家族の生活を良くするために、身の回りの物を買ったり買い替えたりする。 金が余れば贅沢品も買うようになるだろう。 こうやって金持ちからどんどん市場へ金が回っていくんだ」
「なるほどの……確かに民に金を持たせれば、屋台など末端の店にまで金が廻るの……」
「僕は親がいなくて兄弟が多いので、稼いだら大きな家に引っ越して弟や妹たちに教育を受けさせたいですね。 僕は学が無くて苦労しましたから……」
アレンさん……っ! 頑張って稼いでね!
「……ふむ。 民の教育にまで及ぶか……。 ハイドよ、どこまで計算しておる?」
「計算してないぞ! 金と暇を持て余した金持ちが庶民に金をばら撒きゃ経済が回るってのを感覚で知ってるだけだ! その理由付けがこの店になるわけだな。 サービスの対価として金持ちからガッポリ儲けるぞ!」
ぎゃぴっ! ガッポリ儲けるなんてバラしちゃっていいのぉ⁉
「ほっほっほ! 感覚で大事を成すか! さすが王じゃの!」
「まぁな! じゃぁそろそろ色んなナイトと恋物語ごっこでもしてろ、俺は他の貴族の席を見てくる」
「ニーナ! どんな感じ⁉」
「……魔王様が失礼なことばかり言ってたのに、いつの間にか経済の話になって魔王様が褒められてたよ……」
「さすが魔王様だね! ギャップにトゥンク……作戦かな⁉」
魔王様はそこまで考えてるように見えなかったけど……。 でもお姫様は楽しそうだったな、なぜだろう。 これがオラ営の効果? でも違うような……うーん。
「まぁ! やっぱりあそこにいるのは平民なのね⁉」
ぎゃぴっ! VIPルームの貴族の声がバックヤードまで聞こえてきたよぅ! 問題発生⁉ 魔王様何とかしてぇ!
アーニャとカーテンからチラ見する。 黒髪の気の強そうな女性だ……。
「アリア、あの貴族は庶民が来ることを知らなかったのか?」
席を立とうとしていた魔王様がお姫様に聞いた。
「公爵夫人のクラリゼッタじゃな……。 知っていて言っておる。 曲者じゃが母上にどうしてもと言われての……すまんの」
お姫様と魔王様が公爵夫人に近づいた……。
「クラリゼッタ、どうしたのじゃ」
「この店は平民と同じ空間でお酒を嗜むのですって! 信じられませんわ! この店自体は気に入りましたからわたくし達だけで楽しみましょう?」
「ははははは! いつかそう言う貴族が来ると思ったぜ! 早速来てくれてありがとな!
いい機会だから教えてやる。 この店ではな、例え売春婦でも一番金を使ったらこの店の客の頂点だ! お貴族様ごっこがしたいなら城でやるんだな!」
「ば! ばいしゅ……なんて汚らわしいですこと‼」
「お貴族様の為にわざわざVIPルームを作ったんだ、それで我慢しろ。 庶民に迷惑になるようなら貴族は出入り禁止にしてもいいぞ。 俺は俺と客が楽しければそれでいい、金には困ってないからな」
「わらわがこの店で遊べなくなるのは困るのう」
お姫様がクラリゼッタという偉そうな貴族にチラと視線を送った。
「……きょ、今日はもう帰りますわ!」
慌ててナイトさんとラウンツさんがお見送りする。
「皆の者、そういうことじゃ。 この店では身分が通用せん。 独自のルールがあるようじゃ。 民を威圧するなどという恥ずかしい真似をする者はここに残っておらんようじゃが、紹介する際には気をつけたほうが良いの」
魔王様とお姫様が醸し出すオーラにより、貴族はもちろん、なぜか一般人までゴクリ……と息を飲んで頷いていた。
「ここでは全員が平等にプリンセスだ。 だがスタートが平等だからこそ、金を使った客が優遇される。 覚えておいてくれな!
じゃぁ引き続き楽しもうぜ! サービスでいいもん見せてやるよ!」
魔王様は再びお姫様の席へ。
「一件落着かな?」
「ビックリしたよぅ。 アーニャ、貴族ってやっぱりああいう人がいるんだね」
「ねー。 恋物語によく出てくる悪役令嬢の典型的パターンだね!」
「……V5卓にモエリ白……」
「おお! 俺の出番だな!」
魔王様のサービスシャンパンだ!
ジルさんがむーん……とシャンパンを冷やしてからシャンパンペールにもむーん……と氷を出した。 メイリアさんなら一瞬だけど……練習のためにジルさんがやってるんだな。 頑張って!
バレットさんがシャンパンを取りに来た。
人界初のシャンコだ! ふふふ……人族はビックリするだろうな!




