2号店プレオープンまで
ブクマ評価嬉しいですありがとうございます!!
研修2日目、私は今、メイリアさんと共に8人のナイトさんに囲まれている。
「プリンセスの髪は夜空に輝く星々より綺麗ですね。 天の河も嫉妬して隠れてしまっています……」
……そもそも天の河は普段なかなか見れないけど。
「は、はぁ」
恋物語にそういう台詞でもあったのかな。 私はお父さんの持っている本の方が好きだから実は恋物語はあんまり分からない。
「プリンセスの手はなんて華奢なんだ……ずっと握っていてもいいですか? 貴方を守れるように……」
うん、メイリアさんは小柄だからね。 でも毒で人族を全滅させられるくらい強いから心配無用だよ。
「……錬成の邪魔になる……」
あ、ぶった切った!
「「「…………」」」
……ナイトさん達は黙ってしまった。 汗もかいていないグラスをひたすら拭き拭きしたり、メニューやボトルを直角に置きなおしたりしてる……。
「ははははは! ニーナとメイリアは手強いだろ! こういう客が一番やりにくいんだよなー! お前は何しに来たんだ? って客がたまにいるんだよ!」
そばで見ていた魔王様は大爆笑だ。 やりにくいとは失礼な! そもそも私はお客様役をやりたくないんだから当たり前だよぅ!
「まぁ最初のうちに来る客は恋物語が好きな女ばかりだから安心しろ、ニーナとメイリアが特殊なだけだ。 こういうコミュ障は趣味の話に持っていけ」
「は、はぁ……。 ではニーナさんのご趣味は?」
アレンさんが気を取り直して質問してきた。
「えっ……無いです」
「……では休日は何を?」
「お休み無いです」
「…………じゃ、じゃあメイリアさんのご趣味は?」
「……毒集め……」
「……な、なるほど……」
……会話が終わってしまった。
「ぶはははは! 初心者のナイトには無理だな! シャナとキャロルでも連れてくるか!」
「魔王様ぜひそうして下さいぃ! 私達はディアブロの様子を見てきます!」
「おう、ルルがバックヤードに設置した転移陣から行け。 ディアブロの店内に繋がってる。 2人を呼んでこい」
「ひゃい……」
私とメイリアさんはもそもそと逃げ出してディアブロへ転移した。
「メイリアさん、疲れたね……」
「……うん……」
「あら、お二人共どうなさって?」
「シャナさん……私達の代わりにディメンションの研修でお客様役をやって下さい! 私には無理です!」
「まあ! 恋物語の世界を体験できるのですわね⁉ すぐに行きますわ!」
「えー! シャナさんチョーうらやま!」
「魔王様がキャロルさんも呼んでましたよ」
「マジ⁉ ヤバい行く行くー! メイリアお店よろしくね!」
2人は一瞬で転移して行った。
「お疲れ様です!」
「お疲れさまニャァ」
クレイドさんとシアさんがくっくっと笑いながら話しかけてきた。
「お疲れ様です……ディアブロは最近どうですか?」
「20階層を攻略したパーティが出始めましたよ! 宝箱も20階層まで自然発生するようになってきました。 冒険者を呼び込むため、ボス部屋の宝箱への演出は続けますけどね。 あと商人の店も完成しましたよ!」
「わぁ! 何だかダンジョンも盛り上がってきましたね!」
カウンターから、正面に並んでいる商人さんのお店を見てみると小さい酒場や装備屋さんなどが出来ていた。
もう夕方なので冒険者さんがお店に入って行くのが見える。
「新しい救援魔道具の運用も上手くいってて横流しは無くなったニャァ。 あとクレイド達の家も建てている最中ニャァ」
「それはよかったです」
「魔王様に言われて、女性冒険者にディメンションの宣伝も始めましたよ! ニャンダフルに貼り紙がしてあります!」
「あ、冒険者さんへの宣伝忘れてました。 ありがとうございます!」
ニャンダフルの話題が出たのでメイリアさんと貼り紙をチェックしに行くことに。
久しぶりにニャンダフル副店長として、ラヴィの健康チェックという名のモフモフを堪能すべきだ。
魔王様が私達を勝手にナイトさんの研修係にしたくせに、速攻クビにした精神的損害の慰謝料をラヴィの体払いで回収させてもらおう。
ニャンダフルにはこんな貼り紙があった。
[恋物語の世界が体験できるお店!
♡ディメンション2号店オープン予定♡
貴方も恋物語の主人公になってみませんか?
素敵な騎士達が貴方をお待ちしております!
はじめてのお客様は2時間1000ディルで飲み放題♪
近日オープンをお楽しみに!
女の子はみ~んなプリンセス☆]
……求人票よりマシだった、よかった。 冒険者さんで店内が混みだしたのでディアブロへ戻ろう。
「ただいまー! チョー楽しかったし!」
「ただいまニャ!」
夜も更けて店仕舞いをしていたらキャロルさんとシャナさん、ミアさんが帰ってきた。
「素晴らしいお店でしたわ! これから毎日研修する事になりましてよ!」
「おかえりなさい。 ……た、楽しかったんですか?」
「うん! マジメッチャパリピったし!」
「私達はおしゃべりを楽しんでいただけですのに、何故かナイトさん達から『自信がつきました!』と言われましたわ。 何かあったのかしら?」
……私とメイリアさんがナイトさんの自信を喪失させたことは内緒だ!
「魔王様がニーナに伝言だって! 明日はオフでー、10日後にプレオープンだからパンピーを8人よろだってさ!」
「オ、オフ? パンピー? よろ?」
「明日はお休みで、一般人のお客様は8人ご招待してという意味ですわ」
シャナさんはキャロルさんの言葉を翻訳出来るんだな……すごい。
「わ、分かりました」
早速ベルラさんと大店の商人さんに念話しておいた。
「じゃあ私とメイリアさんは帰りますね。 あとはよろしくお願いします」
メイリアさんとディメンションに転移して2階へ上がった。
「あらおかえりなさい。 ちょうどご飯が出来たわよ」
「ルルさんただいまです……」
「……ただいま……」
「2人とも疲れてんな!」
「お兄ちゃん……内勤の研修はどうだった?」
「元使用人なだけあって使えるぞ!」
「ナイトの研修をしながら実際にオーダーを取ったり練習してるわっ! プレオープンまでにアタシがバッチリ仕上げるわよぉ!」
「ニーナ研修係クビになったんだね! ディアブロはどうだった⁉」
サラッと人の傷口に塩を塗り込んだアーニャの耳元で「ラウンツさんのネグリジェのラインナップを教えてあげようか?」と囁いたら〈縮地〉を使って逃げられた。
私からディアブロの近況を話して、みんなでプレオープンの話などをしながらご飯を食べ、部屋へ戻った。
魔王様との交渉で無事お休みを勝ち取った私は、次の日からシャナさんキャロルさんの代わりに、メイリアさんと毎日のほとんどをディアブロで過ごした。
ナイトさん達の騎士服もギリギリ間に合い、ついに明日はプレオープンの日となる。
151話 〜メニュー表〜 ネタバレ無し
を先にご覧いただくとわかりやすいかもしれません。




