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【まおホス!】魔王様のホストクラブ作り!……に振り回されて大変です!【表紙挿絵有】  作者: つーちゃん
第一章 ちょっとホストクラブ作ろうぜ
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こうどなしんりせん

 家に帰ると、お母さんはまだ仕立て屋さんとお話ししてたので終わるのを待ってから話しかけた。


「ただいまお母さん。お昼一緒に食べよう?」


「あらお帰りなさい。ちょうどフローラを呼んでるから三人で食べましょう……そろそろ来るわ」


 魔力感知をしてみると、大きな魔力がものすごいスピードで向かって来ている……フローラさんだ。


 少しして、仕立て屋さんと入れ違いでお手伝いさんに案内されたフローラさんが客間へ入室してきた。


「マリリア、ニーナ! ごきげんよう!」


 フローラさんはいつも青色の髪をふんわりアップにしている。あどけなさを残した可愛らしいお顔だ。


「いらっしゃい、待ってたわ」


「こんにちは」


 席に着くとお手伝いさんが昼食を運んできてくれたのでいただく。


「そういえば、お母さんもフローラさんもいつも〈飛行〉で移動するのに何で昨日は馬車だったんですか?」


 魔力の高い魔族の淑女は、髪型と服装が乱れないよう〈結界〉を張ったまま〈飛行〉でビュンビュン飛ぶ。


「ニーナちゃんわかってないわね! 恋物語では馬車で優雅に城へ向かうのよ。恋物語の世界が楽しめるってアーニャから聞いてたから、家を出る時にはもう戦いは始まっていたってわけ!」


 別に戦いじゃないよぅ、ただの酒場だよぅ。


「そうね、私もある程度の覚悟をもって挑んだけれど、予想を超える高度な心理戦が要求されたわ……」


 お母さんまで……。


「さ、酒場で心理戦なんてあったの?」


「いえ、心理戦なんて生温いものじゃなかったわ……あそこは社交界とはまた別の、まさしく異次元よ……久しぶりに武者震いがしたわ」


 何で二人とも戦場の話みたいな語り口なのかな⁉


「そうね! まず一番目に付いたのがシャンパンタワーっていうものと飾りボトル……あんな恐ろしいものを思い付くなんてさすが魔王様!」


「フローラの言う通りよ……」


「お、お母さん! あれは罠だよ! 気を付けて!」


「そうよ……あれだけでいくつもの罠が張り巡らされていたわ……」


「社交界を牽引(けんいん)するマリリアがユニコーンを飾らないわけにはいかないものね!」


「そうね、でもいきなりあれを頼むのは下品……ある程度、あの城を掌握してからでないと滑稽(こっけい)に見えてしまうわ。でももたもたしていたら誰かに先に取られてしまう……タイミングが難しいわね」


 あ、あれ? そういう意味じゃなくてぇ……。


「魔王様デザインの一点物なんて価値が計り知れないもの! 他の方に取られてしまったら一生後悔するわ!」


「くっ……そうなのよ。しかも一度飾りボトルを入れれば、城へ来るたび席に置かれるのよ? ……そう考えると安いわ」


 いや高いよぅ!


「逆に、飾りボトルは30万ルインのものもあるからまずはそれを……そして徐々に高いものを揃えていくって手も……ああ! どうしたらいいのっ!」


 フローラさんはテーブルに突っ伏してしまった……。


「フローラさん落ち着いてぇ……」


「落ち着いていられないわ! あのシャンパンタワーだって誰が最初にするのか……私達がするとしてもどんなタイミングが効果的なのか……こんなに悩ませられるなんて思ってもいなかったわ」


「私達がどう攻略していくか魔王様に試されているわね……」


 なんかお母さん達の中ではすごい事になってるみたい……。


「そういえば昨日はサービスだったのになんでシャンパンを頼んだの?」


「ナイトに(ささや)かれたのよ。10万ルイン以上のお酒を入れると全てのナイトが貴方のためだけに……って」


「なんの事か分からなかったけど、魔王様のお考えを分からないまま帰るわけにはいかなかったものね!」


「それで頼んでみたんだね。あれは私もびっくりしたよぅ……」


「私としたことがただの拡声魔法で硬直の効果を受けてしまったわ……不覚よ……!」


 お母さんの手が震えている……。


「私も硬直してしまったけれど……気付いたのよ。あれをすれば他の方々のナイトまで独占できる……恐ろしい戦略よ!」


「そうね。逆に、他の方にあれをされても文句は言えない……でも対抗してまたシャンパンを入れればいつまでも戦いは終わらないわ」


 シャンパンコールにそんな戦いがあるなんて……。


「昨日は仲良しの方ばかりだったから戦いにはならなかったけれど……他のお客様も来るようになったら一時も気を抜けないわ……」


「いつお気に入りのナイトが席から離れるか分からないものね!」


「そ、そういえばお気に入りのナイトさんはいたんですか?」


「フローラはミゼルに似たルイスというナイトを気に入っていたんじゃないかしら?」


「やだぁ! バレてた? だってミゼルは顔と強さだけで選んじゃったから甘い言葉を(ささや)いてくれないんだもの! 軍の男って戦いの話ばかり。

 マリリアこそガルスターとは正反対の甘いマスクのアスティってナイトくんと楽しそうにしてたじゃない! うふふ」


「ガルスターの強さへの憧れは今も変わらないわ。でもたまには母性本能をくすぐられるのも悪くないわね……」


 聞いててムズムズするよぅ。


「し、指名するの?」


「ナイトが、指名は毎回変えてもいいって言っていたから指名してみるわ!」


「そうね、それに指名すると隣に座るのよ。そして帰りは馬車までエスコートしてくれるらしいわ……夢を見たまま帰れるって事ね。こんな所にまで罠が……」


 ラウンツさん達に護衛をさせたのにはそんな効果まで……。


「ニーナちゃんっ! 何でもいいから知っている事を教えて! 情報が足りなさすぎるわ!」


「えっ? えっと……まず飾りボトルは、しばらくしたら必ず入る。って魔王様が言ってました」


「やはり……昨日は頼まなくて正解だったのね、危なかったわ」


 お母さん……他の物で満足してくれないかな?


「あ! 今メイリアさんていう子が新しい飾りボトルを作ってます、同じ形で七色あるんですよ。ブランデーやウイスキーじゃなくてカラフルなリキュールらしいです!」


「七色あるですって⁉」


「コレクションしろと言う事ね……それを揃えた辺りでユニコーンを入れる戦略でいいのかしら……」


 え? お母さん全部揃えるつもり⁉ 戦略なんていらないよぅ! ユニコーンから離れてぇ……。


「ニーナちゃんもっと何か教えて!」


「えぇ……これ以上は魔王様に口止めされてて……」


「ここまででも魔王様にとっては序の口という事ね……。じゃぁニーナ、システムについて確認させてちょうだい?」


「う、うん」


「私達は新規オープンまでに他の方々へ宣伝しなければならないの。初回システムというのは聞いたけれど、プレオープンとは違ってサービスはエールだけ。私の知り合いがエールなんて飲む訳にはいかないし、1000ルインだけで帰る訳にもいかないと思うはずよ。どれくらいの予算で攻めればいいのかしら?」


「えっ? 1000ルインじゃダメなの?」


「恥ずかしすぎるわ! だって公共事業への投資みたいなものだもの!」


「フローラのいう通りよ、これは投資なの。そしてそれに付随して経済が活性化するわ……」


「魔王様が経済活性化とか言って大臣達を説得したらしいですけど、どうして活性化するんですか?」


「またまたニーナちゃんわかってないわね! 私達があそこへ毎回同じドレスと宝石で行けるわけないじゃない!」


「あ、そういえば今日服飾屋さんが来てたね。 そっか……お店へ行くためにお客様みんながドレスや宝石を買ったら街が潤うね」


「そういうことよ。話を戻すけど、初回のお友達にはどれくらいの予算を伝えたらいいのかしら?」


「わ、わからないよぅ…………あ!」


 こ、これは口止めされてないよね?

 ずずいと身を乗り出した二人におずおずと口を開く


「……ルルさんが新規オープンからお客様として来ます……ルルさんをお手本にすればいいかもしれません」


「ルルちゃんが⁉」


「なるほど……ルルの城での遊び方を真似れば恥をかかずには済むという事ね……。ニーナ! 今日一番の情報よ!」


「お、お母さんの役に立ったならよかったよ」


「ニーナちゃん! 他には何か無いかしら?」


「こ、これ以上は言えませんんん! でも魔王様がまだ何か企んでます、気を付けて様子を見て下さい!」


「確かに魔王様の思惑がこれだけとは思えないわね! きっとまだ私達が気付いていない仕掛けがあるはずよ!」


「そうね、まだまだ奥の手があるようだわ。フローラ、気を引き締めていきましょう」


 ……なんか軍事会議的な感じでお話が終わった。

 魔王様が楽しそうに何かを企んでるのは確かだけど、言うほどそこまで考えてるのかなぁ? お母さん達が難しく考え過ぎな気がするんだけど……。


 お母さんはこの後のお茶会にお友達を呼んでいるらしく、私はやっと解放された。

 ふぅ、明日は魔王様にお母さん達の感想を報告しなきゃ。……魔王様のニヤニヤ顔が目に浮かぶのは何でだろう……。




~人物紹介~


ニーナ(15)

腰まである銀髪にオレンジの瞳

財務部新任→人界征服メンバー

赤ん坊の頃に魔王様に拾われ、レイスター家族に引き取られた

人見知りコミュ障


魔王様、アーデルハイド(?)

黒髪、魔眼を持っている

元伝説のホスト、異世界転生者

「ホストクラブ作ろうぜ!」


レイスター(16)

茶髪、ニーナの義理の兄

魔王軍第一部隊→人界征服メンバー


アーニャ(16)

水色のサイドポニーテール、黒い瞳

魔王軍第二部隊→人界征服メンバー

ニーナとレイスターの幼馴染

厨二病こじらせ、イケメン好き


ラウンツ(23)

金髪、ガチムチ、おネエ

魔王軍近衛隊→人界征服メンバー


ルル(?)

赤に近いピンクの巻き髪、おっぱい

マーメイドドレスを好んで着ている

魔道具や魔術式は魔界一→人界征服メンバー


メイリア(15)

エメラルドグリーンの前下がりボブ

錬金術師、土木部新任→人界征服メンバー

マッドサイエンティスト、ぼそぼそ喋る


マリリア

薄紫色の髪

レイスターの母、ニーナの育ての母


ガルスター

魔王軍第一部隊長、とっても偉い。

レイスターの父、ニーナの育ての父


フローラ

青い髪

アーニャの母


ミゼル

魔王軍第二部隊長、アーニャの父


2021/8/28改稿。

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[良い点]  とかく印象的だったのは、テンポの良い展開と軽快な会話文でしょうか。  人界征服の方法が力技ではなくホストクラブであるという点。個性の強い登場人物を上手く活かした、魔王と淑女たちの駆け引き…
[良い点] おそらく実際にホストクラブに通っている人の心理はこんな感じなのでしょうね。これはギャグっぽく描写してますが。
[良い点] >これは投資なの うむ、ある意味投資ですな! でも投資し過ぎて、自分が凍死しないように^ω^ 女性陣の軍事会議的な感じのお話も面白いです。 でも多分全て魔王様の手のひらの上さ!
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