呪いの上書き
ディアブロに残された私とお兄ちゃん、コーディさん、クレイドさん、シャナさん、キャロルさんは何をしようかという話になった。
「私は冒険者用の救援魔道具を作りますわ! キャロルさんとお話するのも楽しいですし!」
「あたしはポーション作り! メイリアより臭くてチョー効くヤツ作るんだ! ヤバいっしょ⁉ キャハハ!」
……キャロルさんは「ヤバい!」と「マジウケる!」しか言わないけどそれでシャナさんと会話が成立してるのがすごいな。
ディアブロはちょうどミアさんシアさんが来たから接客は大丈夫だろう。
「クレイドさん、今日は実際にニャンダフルのお店へ行ってみませんか?」
決してシャナさんとキャロルさんの会話に付き合いたくない訳ではない、うん。
「はい! よろしくご指導ご鞭撻お願いします‼」
あ、暑苦しさが元に戻ってる! すでにネグリジェを克服したというの⁉ ……クレイドさん、恐ろしい子……!
お兄ちゃんとコーディさんもちゃっかりニャンダフルに逃げて来た。
「ニーナお客様プゥ?」
「エリーさん違うよ、みんなを守るために新しく来てくれたクレイドさんだよ」
「ぐはっ! ここは桃源郷ですか⁉」
クレイドさんはエリーさんとリリーさんが眩しくてクラクラしてる……。
「クレイドさん、ここはラヴィカフェです。 ラヴィをモフりながらお茶や食事をする所ですよ。 彼女たちの制服は魔王様の罠です! 負けないでください! お客さんになったらケツの毛まで毟られますよ‼」
「な、なんと恐ろしい……さすが魔王様の罠。 危うく常連になるところでした危ないっ!」
お兄ちゃんとコーディさんはクックッと笑っている。
とりあえず4人でラヴィをモフりながらニャンダフルを堪能した。
そしてラウンツさんのネグリジェの色が何種類あるかという、世界で一番どうでもいい情報を3人からもらった。
せっかく記憶から消えかけてたのにぃ! 何度でも蘇る強力な呪いだ……っ!
冒険者さんが朝食を食べにニャンダフルへやってきたので、みんなでディアブロへ戻って来た。
そしたら仕立て屋さんから私へ念話が。 騎士服とスーツのサンプルが1着ずつ出来上がったので確認して欲しいとの事。
し、仕事が早すぎる……。
「お兄ちゃん、仕立て屋さんからサンプルが出来たって念話が入ったから行ってくるね」
「あー……そういえば着るやつの身長とか仕立て屋に伝えてないだろ? 俺が全員面接してるから一緒に行ってやるよ」
「わぁ! ありがとう!」
仕立て屋さんへの参考に、とスーツに着替えたお兄ちゃんと街へ向かった。
仕立て屋さんへ着くと、パタンナーさん、服の型紙を起こす人が早速お兄ちゃんのスーツに興味津々だった。
「スーツとやらは執事服に似ていますがディティールが分かりませんでして、助かりました! ほとんど再現出来ているので大丈夫かと思いますが……」
お兄ちゃんがパタンナーさんにスーツのOKを出して、私は店長さんから騎士服とスーツのサンプルを1着ずつ受け取った。
「これが男性の平均的なサイズ、Mサイズです」
ほうほう。
お兄ちゃんはその他にSサイズやLサイズの他の服も見せてもらってサイズ感を確認していた。
「スーツは2人分ともMで大丈夫です。 騎士服もほとんどがMですね。 サンプルのOKが出たらサイズごとの発注数をニーナに伝えておきます。
ニーナ、ナイト達の最終面接が終わったらよろしくな!」
「わ、わかったよぅ」
デザイナーさんに、魔王様から女性用装備の発注予定は無いかと聞かれたけど「無い」と答えたらガックリ肩を落としていた……。
もしかしてそれが目当てで私を呼んだ? 別にいいけど……。
「獣人さん達が服を欲しがっていたので行商に来たらどうですか? ビキニアーマーを好んで着ている人とかいますよ」
「……‼ 店長! 行きましょう! ケモ耳と尻尾の魅力を最大限に引き出す服を作るべきです!」
「落ち着け。 …………2日で全ての仕事を終わらせるぞっ‼」
「はいっ‼」
……店長さんもノリノリだった。
お兄ちゃんとディアブロへ戻ったら魔王様達が戻ってきていた。
「あ、魔王様おかえりなさい。 騎士服とスーツのサンプルを持ってきましたよ。 そちらはどうでしたか?」
「おうサンキュー。 ……アリアが店に遊びに来たいって言って大変だった」
「ええっ⁉ お姫様が来るんですか?」
「アリアには本物の騎士が着いてるんだからわざわざ疑似体験する必要ないだろ? って言ったんだけどな……」
「わらわは恋も出来ぬまま嫁に行くのじゃ! じゃから擬似恋愛ならむしろ問題なかろう? って言ってたよ!」
アーニャのモノマネは相変わらず上手い。
「そ、それで結局どうするんですか?」
「アタシが、お姫様は変装してお忍びで来たら? って言ったわぁ!」
「ラウンツのせいでそうなった……でもあのじゃじゃ馬娘はどうせ止められないだろうからそれで諦める」
魔王様はお疲れだ……。
「貴族だけれども、お姫様と懇意の貴族を紹介してもらうことになったわ。 プレオープンにお姫様、貴族、ベルラさんのような一般人全員を招待するわ」
「貴族も一般人も一度に呼ぶんですね。 ルルさんが考えたんですか?」
「俺だ。 客層はまとめて呼んで、その場で俺とアリアから、身分を盾に一般人を脅したりしないよう周知してもらう。 最悪一般人だけの店にするって言ってな」
「キャ、キャロルさんの言っていた事と変わらない気が……」
魔王様は目を細めて私をジトと見た。
「……伝え方の問題だ」
「は、はひぃ……。 あ、メイリアさんは人界の毒をもらえたの?」
「……ふふ……プグっていう魚の毒もらった……味も臭いも無くてこれはいい毒……魔道具にはその場で登録してきた……」
「そ、そっかよかったね、お疲れ様」
毒に良い悪いとかあるのっ⁉
「そうだ魔王様、衣装を確認して下さい」
ディアブロのテーブルに騎士服とスーツを広げる。
「うん! バッチリだな! 普通の騎士服よりキラキラ感が出てていい!」
魔王様のOKが出た。
「ニャ⁉ 騎士服ニャ?」
ミアさんがチラッとこっちを見たと思ったらシュッ! と一瞬で移動してきた!
「ニャーーー! カッコイイニャ! 僕も着たいニャ‼」
「ミアちゃん! ナイトになれば着れるよ!」
「アーニャ本当ニャ⁉ 僕はナイトになるニャーーー‼」
えええ! 誰か止めてぇ!




