2号店の胎動 (地図有り)
ルルさんメイリアさんは疲れてそうだったので、翌朝ディアブロのお店にみんなが揃った時に聞いてみた。
「ルルさん、昨日のお姫様の用は何だったんですか?」
「あ、他国に声明を出したそうよ。 それで国家間のパワーバランスに多少影響を及ぼしたみたい」
「あれ? 魔族との交流は軍事力強化のためじゃないってアピールしたんじゃなかったんですか?」
「そうはいっても最悪の事態を想定しておくのが国のトップ達の役割だから……。 少し人界の情勢を説明しましょうか」
ルルさんが世界地図を出して説明してくれた。
「人界最南端のオルガ国に隣接しているのは北のアレイル国と東のキャラリア山脈しか無くて、アレイル国にラブコールをされて友好関係を結んでいるの。
なぜなら、アレイル国は北にルーガル国があるから、地理的にオルガとルーガル両方から攻められると不味いのよ。
ちなみにアレイル国の東もキャラリア山脈ね」
「オルガ国はわりと平和で、アレイル国はオルガと仲良しだからルーガル国にだけ気を付ければいいってことはわかりました」
「そうね。 次にルーガルだけど、南にアレイル国、東にキャラリア山脈、北東にフレーナ国、北にサレノバ大森林、北西にイリア国と、3国に挟まれているのよ。 ちなみに南西は海ね」
「……防衛が大変そうな国ですね」
「そうよ。 でもルーガルは軍事国家で強力な魔道兵器を沢山開発しているわ。 そのおかげというのも変だけど、今のところパワーバランスが取れているの」
「な、なるほど……3国に挟まれているなら兵器に力を入れるのも無理はないですね」
「ちなみに、昔魔王様が一撃入れたのがルーガル国よ」
「……魔王様、絶対強そうだからって理由だけでルーガルを選びましたね?」
「うふふ……そうかもしれないわね。
話を戻すけど、そんな訳でルーガルは、アレイルがオルガの支援を受けて軍事力を強化するんじゃないかって考えているわけね。
アレイルが実際にそうするのには時間がかかるでしょうけど。 でもそもそもアレイルがルーガルに攻め込む気が無ければ今までと何も変わらないわ」
「つまりちょびっとだけルーガルがビックリしたって事ですかね?」
「そうね。 あとお姫様から言われた事は……今日にでもオルガ国内にお触れを出す事と、毒味の魔道具の販売をお願いされた事くらいかしら。 やっと私達が顔パスで街に入れるわよ!」
「2号店の出店準備がはかどりますね!」
「街に入れるならイケメンのスカウト頑張るよ!」
「アタシもスカウトを頑張るわっ!」
アーニャもラウンツさんもやる気満々だ!
「ルルさんメイリアさん、設計図が出来たら教えてください」
「任せてちょうだい! 設計図と毒味の魔道具が出来るまで、私とメイリアちゃんは専念させてもらっていいかしら? ディアブロのお店は他の皆とミアちゃんシアちゃんに任せるわ」
「アタシの魅力でバンバン売るわよぉ☆」
……売り上げが落ちないか心配だ。
その後、設計図が出来るまでの3日間、チラホラ応募者さんが面接に来た。
ディアブロに貼った求人票を見た冒険者さんも面接した。 採集ばかりしていた人だ、あんまり強くないんだろうな。
けど魔王様は不在だ。
魔王様は、魔王として本来の仕事が溜まっていたのに加えて、魔界での人選とディメンション1号店の視察が忙しいと、お兄ちゃんやアーニャに面接を任せていた。
面接者の半分はアレンさんが連れて来てくれた。 そしてバレットさんは元使用人さんと料理人さんを1人ずつ連れて来てくれた。
内勤とキッチンはお兄ちゃんとアーニャの面接で合格だ。
ホストさんもアーニャから全員合格が出たけど、念のため魔王様の最終面接を受けるようにという事にした。
面接者さんを送り出す度にアーニャが「ディメンションが君にもっと輝けと囁いている‼」と言っていた。
またアーニャの「カッコイイ台詞集」にランクインしたみたい。
アレンさんには私からこっそりスカウト料を支払っておいた。 帳簿に付けねば。
アレンさんだけに払うのも悪かったのでバレットさんにもお支払いした。 これくらいは私の裁量でOKなはずだ。
王様からお触れが出た事で、何人かの商人さんがダンジョン前にお店を出すとやって来て、ラウンツさんに許可を求めていた。
別に私達の土地じゃないから好きにすればいいと思うけど、ご近所付き合いというやつだろう。
商人さん達のお店は私達のお店の向かい側に建てるようだ。
余談だけど、みんながダンジョンに籠らなくなった事で、元々正義感が強くて優しいラウンツさんが救援に行く事が増えた。
ラウンツさんはおネエだからネタにされがちだけど、ものすごく強いし実はみんなからの信頼は厚いんだよね。
でもラウンツさんとお兄ちゃんが救援に行った際に、ラウンツさんにお姫様抱っこをされて帰ってきたガチムチ冒険者さんの絶望した顔は忘れられない……。
冒険者さん達からボソボソと「今日は設定1だ……」とか「天国から地獄のルーレットに……」とか聞こえてきた……。
そして今に至る。
「ニーナちゃん! 設計図ができたわ!!」
「……渾身の作……」
「わぁ! 楽しみです! 魔王様に念話しますね!」
『魔王様今よろしいですか?』
『お、おう! どうした?』
『お店の設計図が出来上がりました! 内勤2人とキッチンも決まりましたよ。 ホストさんはアレンさん含めて8人集まりました』
『わかった……もうすぐそっちへ行く』
「魔王様に念話しました。 何だかお疲れの様子でした」
「あら。 まぁなんだかんだ魔王様が一番働いているものね」
ルルさんの言う通りかもしれない。 だから何となく魔王様の無茶振りに付き合っちゃうんだよなぁ……。
「待たせたな! 魔界から人を連れて来たぞ」
第二章~完~
次回から人界初出店編です!




