面接面接ゥ!
「……魔王様、ディアブロの人選よろしくお願いしますね」
「お、おう! バッチリ進んでるから任せとけ!」
目を合わせて言って欲しいんですけど⁉
「それよりニーナ、素材をしまっておいてくれ。 俺は忙しいからな!」
話を逸らすように裏口で素材を渡された。 あ、キマイラさんとヒュドラさんだ。 ミスリルは多分ミスリルゴーレムさん。
魔王様は獣人さん達にお金を渡していた。 ついでに、今までルインで支払われていた私たち魔族のお給料も全部ディルに両替してくれた。 ディアブロの売り上げから少しだけディルに両替してたけどカツカツだったから助かった。
……そういえばお給料交渉をしよう。 休みが無い‼
「ハイド様、聞きたい事があるニャァ」
「シアなんだ?」
「リサを助けた時にニーナの魔力がブワッてなってオレンジ色に光ったのは何なのニャァ?」
あ、忘れてた。
「……ああ……何だったんだろうな。 ニーナは俺の次に魔力が多いから単純に溢れ出たんじゃないか?」
なるほど……。
「〈紅霧〉を使った時みたいな感じがしたニャァ」
「……〈紅霧〉?……詳しく教えて……」
私のユニークスキルがメイリアさんの探究心を刺激したらしい。
「ニーナのユニークスキルのひとつだよ。 夕陽が出てる時だけ使えるんだ。 魔力がスゲー増幅するぜ! ちなみにもうひとつのユニークスキルは〈影移動〉だ」
私の代わりにお兄ちゃんが説明してくれた。
「……ニーナの瞳もオレンジ……珍しい……」
「瞳の色が関係してるのかな⁉ 私の魔眼は闇と共鳴してるから黒い眼なんだねきっと!」
アーニャはスルー!
「俺もわからん! とりあえずニーナのオレンジの眼が光ったからその色なんじゃないか? それより早く昼メシを食いたいぞ」
「そうね、お昼にしましょう?」
魔王様とルルさんの鶴の一声で獣人さん達はエルドラドへ帰って行った。
そしてすぐさま魔王様はドルムさんへの借金を完済した。
……何か忘れてる気がするけど何だっけ?
ディアブロのお店で、久しぶりに人界進出メンバーの皆で遅めのお昼ご飯を食べてたら誰か来た。 ソロの冒険者さんは珍しいな。
アメジスト色の髪の冒険者さんはキョロキョロビクビクしながらこっちのお店へ向かってくる。 ルルさんが対応するみたい。
「いらっしゃいませ?」
「まっ……魔族⁉ ……さん。 あっ……あのっ……求人を見てきました……」
あっそうだ、問い合わせ先をここにしてたんだった!
「求人?」
「ルルさん! ホストクラブの求人を出してたんですよ」
「ああ、そうだったのね」
「魔王様ぁ〜応募者さん来ましたよぅ!」
「ままま、魔王⁉」
「面接か! ルル、店の前に椅子を出してくれ」
「私の魔眼の審査は厳しいよ!」
ちゃっかりアーニャまで面接する気だ。
「…………」
イケメンさんはここに魔族がいてまさか魔王様までいるとは思ってなかったみたい。 今にもダッシュで逃げ出しそうだ……。
でも魔王様とアーニャに面接面接! と言われ、死地に赴くような顔で出された椅子に座った。
「なんか質問あるか?」
「あの……魔族さんの酒場とは知らなくて……」
「求人に書いたら誰も来ないだろうが。 だが安心しろ、暴力は無いぞ。 国王の許可も出てるただの酒場だ」
「国王⁉」
「そのうち正式に発表される。 ところで金が必要で来たんだろ? 俺がガッポリ稼がせてやるぞ!」
「は、はい……うちは親が死んでしまったけど弟や妹が多くて。 でも僕は学も無いし弱いし何の取り柄もありません。 その日暮らしでいっぱいいっぱいです……」
「そういうやつはたまにいるな……」
「本当に100万ディルも稼げるんですか……? 大金すぎて怖いです」
「おう、実際魔界の店では100万ディルくらい稼いでるやつがいるぞ! 武器はお前の顔とトークだ」
「私の魔眼は合格って言ってるよ!」
「顔とトークだけでそんなに稼げるんですか?」
「俺達がやるのはホストクラブっていってな、女に恋物語の世界を体験させてやる店だ。 お前が騎士として女に夢を見せてやるわけだな。 これまでに無い店だから絶対流行るぞ!」
「な、なるほど……」
イケメンさんの顔は暗い……。 魔族のお店だからやっぱり悩んでいるようだ。
「そうだ、お前にスカウトを任せよう! 独身のイケメンを面接に連れて来たら1人につき1万ディルやる。 店が出来るまで日銭が入るぞ?」
ガッポリ儲けた魔王様が銀貨で顔を殴る作戦に出た……! ついさっきまで借金大魔王だったくせにぃ!
「……! そ、それならとりあえずやってみます!」
「決まりだな! あ、出来れば彼女がいないやつにしてくれ。 お前も覚悟が決まったら働いてくれよ? ディメンションがお前にもっと輝けと囁いている‼」
「はいっ!」
ずっと気になってたけどそのキャッチフレーズは何なのっ⁉ 魔王様のお気に入りなのかな?
魔王様がイケメンさんの名前を聞いて念話先を交換したらイケメンさんは走って帰って行った。 アレンさんというらしい。
「ルル、メイリア、土地の契約に行くから来てくれ。 設計の下見だ」
「わかったわ!」
「……次はもっとすごいの作る……」
「誰かイケメンが来たらレイスターとアーニャが面接しといてくれ!」
「はい!」
「フフフ……イケメンは逃がさないよ!」
「魔王様っ! アタシは?」
「ラウンツ……お前は店とエルドラドを守ってくれ。 リーダーだから一番重要な役目をやる!」
「そういう事なら任せてっ☆」
……面接に来た人が逃げないようにラウンツさんを面接官から外したな……。
ニャンダフルでラヴィの健康チェックという大事なお仕事をしていたらコーディさんが私を呼びに来た。
「どうかしましたか?」
「それが、裏方希望の応募者さんが来まして。 対応が分からないのでニーナさんも来てくれませんか? 求人票を書いた時に魔王様は何か言ってませんでしたか?」
「な、何も聞いてないですぅ!」
とりあえず来て下さいと言われてディアブロのお店の前に来たら、ナイスミドルのおじ様がいた。
「あ、ニーナ! 裏方って内勤だよな? 年齢制限とかあったか?」
「お兄ちゃんが分からないなら私も分からないよぅ……」
「ニーナ! 魔王様に念話してみて!」
「えっ! アーニャがしてよぅ!」
「魔王様に直接念話するのは緊張するんだよ! だからニーナお願い!」
「わ、わかったよぅ……でも魔王様にどんな人が来たか伝えなきゃ」
するとおじ様が話しだした。
「ニーナさん、ですか? はじめまして、バレットと申します。 私はとある大店の旦那様の私邸にて使用人として仕えておりました。
ですが突然旦那様が、経営していた鍛冶場の人間ごと憲兵に捕まってしまい、店はもう倒産を待つのみです。 拘置所に面会へ行ったら解雇されてしまいました」
……あの豚の使用人さんだった! ごめんなさい! でも悪いのはあの豚なんで許してくださいぃ!
お兄ちゃんもアーニャも奴隷事件の事は知ってるから顔が引きつってる……。
「同じような使用人の仕事を探したのですが見つからず、裏方仕事なら近しいものがあるので雇って頂けるのではないかと思いました」
「なるほどね! 私の魔眼はイケオジ様だって審査結果を出したよ!」
「元使用人なら内勤の仕事はピッタリだな……」
「バ、バレットさんは魔族が怖くないんですか?」
私が言うのも変だけど……。
「あっはっは。 こんな事を言いたくはありませんが、仕えていた旦那様は悪魔のようなお人でした……それに比べたらここにいる魔族さんの方が普通の人間ですよ」
「な、なるほど……。 人族とは友好関係を結ぶ方針なので安心してください」
「じゃあニーナ魔王様に念話してくれよ!」
「う、うん、わかったよお兄ちゃん」
魔王様に、元使用人でアーニャの太鼓判付きのナイスミドルおじ様が内勤希望で来たと伝えたら即OKが出た。 オジホスの需要もあるし何にでも使えるとの事。
オジホスってどういう意味だろう……?
「魔王様からOK出たよ。 内勤とキッチンのお給料は20万ディルからスタートだって。 お兄ちゃん、お仕事の説明をしてあげたら?」
「そうだな!」
その後お兄ちゃんが仕事の説明をすると、バレットさんは興味津々で話を聞いていた。
「やりがいのある職場ですね! この歳で新しい事に挑戦出来るとは思いませんでしたよ。 ……あの、他の使用人も面接に連れて来てよろしいでしょうか?」
「いいんじゃないか? ただ内勤を雇うのはあと1人くらいだと思うぞ。 キッチンは1人だけだな」
「わかりました! ではまた来ます!」
お兄ちゃんと念話先を交換したバレットさんも走って帰って行った。
魔王様に念話した際についでに頼まれたため、あの何故か読むと疲れる求人票をディアブロの店前に貼った。
夕方になり冒険者さんがダンジョンから帰ってきはじめたので、私はニャンダフルに戻ってお仕事を再開する。
お客さんがいなくなったら店じまいをし、晩ご飯を食べたらディアブロのお店でニャンダフルとディアブロの帳簿の整理をするのが私の日課だ。
帳簿をカキカキしていたら魔王様とルルさんメイリアさんが転移してきた。
「おかえりなさい。 ずいぶん遅かったですね?」
「アリアに呼ばれた。 詳しい事はルルに聞いてくれ、じゃあ俺は魔界に戻るからまたな!」
お姫様⁉ 何の用だったんだろう?




