怪しいニャァ!
鍛冶場ではまず憲兵さんが職人さんに話しかけた。
「おい、ここにドワーフと獣人がいるという通報を受けた。 住民登録も奴隷申告もされていないぞ、捜索させてもらう」
「なっ⁉ 何で魔族やドワーフ、獣人までいる⁉」
鍛冶場のおじさんは私達にビックリしている。
「これは先程決まった事だが、国としてドワーフと獣人を保護する事になった。 国王の文書もある、中へ入らせてもらうぞ!」
「な! 国王⁉」
憲兵さんが王様の文書をババーン! と見せてから鍛冶場の奥へと進む!
「俺に着いて来い!」
魔王様に続いてドタドタと進むと鍛冶場の一番奥にドワーフさんがいた!
「ブロア! ブロアかっ⁉」
「……‼ ドルムのおやっさん‼」
「まさか奴隷にされておるのか⁉」
ブロアと呼ばれたドワーフのおじさんは、ドルムさんを見ると「うぉおおおおん!」と大泣きした。
「ぞっ……! ぞうでずっ! ごの首輪を見でぐだざいっ……!」
「……隷属の首輪じゃ!」
「まだ地下にいるぞ! ブロアも連れて来い!」
魔王様のお声で地下へと向かう!
地下にある一室の扉を魔王様が蹴り破ったら、ベッドにあられもない姿の人族と狐族の女の人が……何をしようとしていたのかなんて聞かなくてもわかる! ヒドイヒドイヒドイ!!
「ニャにするニャァーーー‼」
「ななっ! 何だ⁉ 出ていけーーー‼ おいっ! お前ら! 不法侵入で追い出せっ‼」
太った醜い豚にしか見えない人族が鍛冶場の人達に命令した。
私の中で魔力がブワッと膨張していくのがわかる……。 突然夕陽の光が差してきて豚をオレンジ色に染める。
「首輪……魔王様、現行犯でいいですよね?」
「ニーナ⁉ お、おう、やれ!」
「くそっ! 出ていけ! こっちは合意の元だ!」
「無理矢理コンッ‼ 助けてコンーーー‼」
鍛冶場の人達が襲いかかって来る……!
「〈空間固定〉!」
豚と鍛冶場の人族を空間魔法で動けないよう固定する……ついでにギリギリと締め上げるのはサービスだ!
「ぐっ……! まぞく……こんなこと……ゆるされると……」
このまま圧縮して潰してやろうか? とも思ったが、ベルラさん達人族に恐怖を与えないよう必死に我慢した。
「アタシ達は王様の許可の元に来てるのよっ! ミンチになりたくなかったら大人しくなさいっ!」
ラウンツさんが粗末なものをぶら下げた豚を縄で縛り上げていく。 憲兵さん達も鍛冶場の人族を縛り始め、狐の獣人さんにシアさんベルラさんが駆け寄ってシーツでぐるりと巻いてあげた。
「話は憲兵所で聞く! 連れて行け!」
憲兵さんの声でぞろぞろと鍛冶場を出て憲兵所へ向かう。 全裸で縛り上げられた豚を見た街の人達がヒソヒソ話している……豚がさらし者にされてちょっとスッキリだ。
あれ? 今お昼だよね? まぁいいか、今は奴隷にされた2人を保護しなきゃ。
憲兵所で魔王様が豚に問いかける。
「おい、首輪の鍵はどこだ」
「……魔力を流さないと外せないから縄を解け」
「フン! 信じられないな。 いい、こっちで外す」
「え? 魔王様外せるんですか?」
「ルルを呼んだ。 ベルラ、悪いけどルルをここまで案内してくれないか?」
「はいっ!」
憲兵さんが豚達に尋問している間にブロアさんと狐の獣人さんの話を聞いた。
ブロアさんは、昔まだ人界でドワーフや獣人が散らばって暮らしていた頃にこの街で鍛冶師として暮らしていたらしい。 だけどその腕を独占しようとしたあの豚にいきなり隷属の首輪を着けられてしまったと……。
「キャラリアに移住する際にブロアが見つからなかったのはそのせいか……悪かったの、もっとちゃんと探してやればよかった……」
ブロアさんもドルムさんもポロポロと泣いている……。
「おやっさん……いいんです。 おやっさんが助けてくれた、それだけでいいんです。 ドワーフは酒を飲めば全て忘れます! またおやっさんと暮らせるなら楽しみしかないですよ!」
「ブロア……強いの。 よし! 特別にワシの秘蔵のドラゴン酒を飲ませてやる!」
ブロアさんに笑顔が戻った、もう大丈夫かな。
「名前はなんていうニャァ?」
「リサ……コン……」
狐の獣人さんとシアさんは初対面らしい。 人界で散らばって暮らしてたからかな。
子供の頃に森で攫われて、それから……らしい。 親はその際抵抗して殺されたとの事。
あの豚め……やっぱりこっそり殺しちゃダメかな?
シアさんが、ドワーフと獣人の村がある事、魔族とオルガ国が守ってくれる事などを話した。
「もう安心ニャァ! 一緒に暮らすニャァ! ラヴィも飼ってるニャァ」
リサさんの耳がピクピクした……やはり獣人さんにラヴィは効果てきめんだ!
「魔王様! お待たせしたわ!」
ルルさんとベルラさんが走ってきた!
「きゃあ! まず服を着せなきゃ!」
ルルさんが男性陣を後ろ向きにさせ、リサさんにルルさんのドレスを着せた。 ……尻尾の穴はどうしたんだろう? まぁルルさんなら何でもありだな……。
「ルル、隷属の首輪外せないか?」
「見せてもらうわね……」
ルルさんが2人の首輪を順にじっくりと見ていく……。
「これなら簡単よ。 爆発の魔術式を無効化して、私の魔力を新たにマスター登録して外すわ」
「ええっ! そんな事、普通簡単になんて出来ませんよ⁉」
ベルラさんがビックリしてる。
「ルルは魔道具や魔術式なら魔界一だからな! 俺の配下は凄いだろ!」
ルルさんの事なのに魔王様がふんぞり返って自慢してる……。
「はい、終わったわよ」
いつの間にか外れてる……‼
そしてルルさんがこっそり首輪を亜空間にしまった……後でじっくり解析するんだろうな……。
「もう俺達は帰っていいか? 2人を落ち着かせてやりたい」
憲兵さんが頷いた瞬間、魔王様は私達をエルドラドに転移させた。
「ドルム、シア、2人の事任せていいか?」
「うむ、ギルドへ行くんじゃろ?」
「お任せニャァ!」
「悪いな。 救援魔道具の件で冒険者ギルドにも行くけど、ルルどうする?」
「……リサちゃんが心配だからメイリアちゃんにお願いしようかしら。 私は心のケアをしておくわ」
「わかった。 じゃぁラウンツ、ニーナ、メイリアを連れてまずは商業ギルドへ行くぞ」
魔王様がメイリアさんを拉致ってまたトンボ返り!
憲兵所へ直接転移しちゃっていいのぉ⁉ 憲兵さんがビックリしてるよぅ!
「ニーナ、商業ギルドの場所わかるか?」
「えっ! 知らないよぅ……あっ! 商業ギルドマスターさんに念話してみます!」
ワコフさんにこれから行く事を念話して商業ギルドの位置を聞いた。
商業ギルドへ入ると、ガレリーさんが沢山の商人さんに囲まれていたので魔王様がお声をかける。
「ガレリー、どうした?」
「あっ! 魔王様! 助けて下さい‼」
また事件⁉




