ドキッ☆ ピンチで恋の魔法大作戦!
『ターゲット同士が接触する! 各自見守りを!』
「カルムーーーッ!」
トッドさんがゴブすけさんの前に立ちはだかる! いいよいいよ!
「あっ! トッド!」
「じゃまするなゴブー!」
ゴブすけさんがトッドさんをすり抜けようとする!
「させるかっ! うぉおおお!」
トッドさんは腰に差していた手斧でゴブすけさんを一刀両断したっ!
ゴブすけさぁーーーん!!
「カルム! 大丈夫かっ⁉」
「う、うん……ありがとうトッド……」
「1人でフラフラするな! 危ねーだろっ!」
「ご、ごめんね……」
「ったく……お前はずっと俺のそばにいろ! 離れるんじゃねーぞ‼」
「えっ⁉ う、うんっ!」
『これって……キャー! プロポーズ⁉』
『プロポーズねっ☆』
『まだ決まってません! アーニャ、ラウンツさん落ち着いて!』
『ワシが一肌脱ぐぞい!』
あっ! ドルムさんが2人の前に現れた!
「トッドよ……聞いておったぞ。 仕方ない、カルムはお前の嫁にやろう……」
「えっ! お父さん!」
「なっ……! バッ! バッカじゃねーの⁉ 誰も結婚するなんて言ってねーよ!」
「……そうじゃな、いきなり結婚は早いのう。 カルム、今日から花嫁修行じゃぞガッハッハ!」
「お、お父さん恥ずかしいよー!」
「はぁー⁉ 勝手に決めんじゃねーよジジイ!」
そう言いながらトッドさんとカルムさんは顔が真っ赤だ! ドルムさんグッジョブ!!
「ト、トッドは嫌なのー?」
「い、嫌とかそんなんじゃねーし! ジジイに決められんのがムカつくんだよ!」
「じゃあ嫌じゃないんだね! よかったーよろしくねー!」
「べっ、別にお前の事好きとかじゃねーから! カルムは弱ぇから俺が守ってやるだけだからな! 料理と掃除だけしてろ!」
「うんートッドが守ってねー! あっ! お母さんにも言わなきゃねー!」
「はぁ? 何を言うんだよ!」
「花嫁修行のことだよー! ミートパイの練習がんばるねー!」
「なっ! ……勝手にしろ!」
「ラヴィはワシが返しておく。 さっさと帰れ」
2人は仲良く手を繋いで帰って行った……。
『これにて作戦終了‼ 総員グッジョブ‼』
『みんな! やりましたよ!』
『作戦成功よぉ☆』
『トッド羨ましいぜ!』
『……完璧……』
『フッ……やっとカルムが嫁に行くぞい』
『お、おう。 よかったな……』
「そろそろ2人はお家に着いたかな? ゴブすけー! ゴブリンのみんなーおいでー!」
ゴブリンさん達がわさわさと集まってきた。 先頭にいるのは多分ゴブすけさんだ。
「みんなのおかげで作戦は大成功だよ! ありがとね!」
「ゴブすけ、やったなゴブ! めいえんぎだったゴブ!」
「ゴブおさん! ありがとうゴブ!」
「アタシの出番がなかったわぁ」
「まぁまぁ、後でラウンツさんが叱っておいたって事でカルムちゃん達には言っておくよ!」
「みんなお疲れ……仕事に戻るぞ。 俺は疲れた……」
事の元凶は魔王様なんだけど⁉ でもカルムさんとトッドさんが幸せだからまぁいっか!
ドルムさんからラヴィを受け取って、私がニャンダフルへ返した。 ラヴィカフェは明日出来上がりそうとの事。
明日に備えて早めに寝ることにした。
「ルルさん! 作戦は大成功だったよ!」
アーニャが早速ルルさんに報告する。
「あら! おめでとう」
「2人はドルムさん公認の仲になって、カルムさんが花嫁修行を始めるみたいですよ!」
「ったく……お前はずっと俺のそばにいろ! 離れるんじゃねーぞ‼」
アーニャがトッドさんのモノマネをした!
「ぷくくっ……! アーニャ相変わらず上手いね!」
「あらあら……プロポーズね、うふふっ」
「メイリアちゃんのおかげでバッチリだったよ! さすがうちのブレーンだね!」
「……ふふ……」
「あ、そうそう、明後日の謁見だけど、申請した全員許可が降りたわ」
ぎゃぴっ! 忘れてた!
「うぅ……私まで行くんですか……」
「ニーナちゃん……頑張ってね」
まぁ私は結界を張るだけの簡単なお仕事だしいっか……。
「はいぃ……もう寝ましゅ……」
明日のラヴィカフェを楽しみに生きよう……。
──────────────
翌日、昼にはニャンダフルの建物が出来上がった。 屋外のラヴィの柵はニャンダフルの裏口に移動していた。
ディアブロで帳簿の整理をしていたらエリーさんが呼びに来たので一緒にニャンダフルへ。
入口の扉を開け、中に入るとすぐに、腰の高さの柵があった。 ラヴィが逃げないよう、二重に入口があるとの事。
柵の左手には小さいお会計カウンターがあり、カウンターの後ろはキッチンみたいだ。
柵を開け先に進むと壁に沿って一段床が高くなっており、その前にローテーブルが置いてある。 この段差に座るんだな。
「あ、魔王様おはようございます」
「おはよう! 今日はシミュレーションをするぞー! ニーナ、特別にお客様第1号にしてやる! エリー、やってくれ」
「おまかせプゥ! ニーナ、料金は30分毎に500ディルプゥ、飲み物は無料でおかわり自由、帰りに精算プゥ」
「えっ! 時間制⁉ ……はい」
段差に座って待つと、エリーさんがお店の裏口からラヴィをたくさん連れてきた! ふぉおおお! 店内をラヴィが飛び跳ねてる!
「ニーナ、ラヴィにあげるご飯は300ディルプゥ」
「えっ! それもお金かかるんですか⁉」
「フッ……エサは持ち込み禁止だ。 じゃないと儲からないだろ!」
魔王様め! ……エリーさんが手のひらを差し出したので仕方なく300ディルを支払う。 するとラヴィの好きな野菜が入った小さい器を渡された。 ついでにメニューから紅茶を頼んだ。
早速ラヴィが寄ってきた!
「魔王様すごいです! ラヴィが膝に! わっ! わっ! 待って! 野菜は順番だよぅ!」
「ニーナ、紅茶プゥ」
「ありがとうございます! それどころじゃないから置いといてぇ! ……魔王様、すぐ野菜が無くなっちゃいました……」
「おかわりするか?」
「くっ……魔王様の手には乗りませんよ!」
「ニーナ、ランランは1000ディルプゥ」
「ください!!!!!」
1000ディルを払い、再びフィーバータイムだ! ふはははは!
……ランランが無くなると、ラヴィはもう私に用は無いと言わんばかりに床を跳ね回り出した。 せ、世知辛い……。
ラヴィを目で愛でながら紅茶をすする……。 ふぅ、こうやってまったりするのもそれはそれでありかもしれない。
ふとメニューに目を通す。
「エリーさん、ラヴィオムライスとは? ……まっ! まさかラヴィの肉を⁉」
「違うプゥ! 作ってあげるプゥ」
しばらく待っていたらいい匂いがしてきた。
「お待たせプゥ!」
「こっ……! これはっ……⁉」
黄色い卵のお布団から、ケチャップライスで出来たラヴィのお顔とおててがこんにちはしてる……!
「くっ……! こんなに可愛いもの……食べられないっ……!」
「フッフッフ……すっかりこの店の虜だなニーナ!」
「魔王様ヒドイです! 食べられません! グリーンピースのおめめが何かを訴えてくるんですよ!」
その後、結局泣きながら食べた。
そして大人しめのラヴィを撫でたりして至福の時を過ごす……。
「ハッ⁉ 時間! お金取られるんだった!」
「今50分プゥ、あと10分いられるプゥ」
「なんだよかった」
「ハッ⁉ 今何分ですか⁉」
「1時間20分プゥ」
「ちょ、キリがない! 帰ります!」
また魔王様の罠だ! なんて悪質な! 私が何とかせねば……!
柵を出てカウンターでお会計をする。
「1時間半の料金とオムライスで3000ディルプゥ」
「…………」
貴重なディルをこんなに使うなんて……!
仕方なく支払う。 全部で4300ディルも使っちゃったよぅ! ニャンダフル、恐るべし……!
とぼとぼと帰ろうとしたら魔王様に呼び止められた。
「ニーナ帰るなよ……じゃあ店はこんな感じだからあとはよろしくな! 俺は他を回る」
あ、そうだ。 私が副店長だ、お仕事しなきゃ。 まずはこの悪質な時間システムを何とかするぞ!
時間制に関しては、お客様毎に砂時計で管理するらしいので、5分前位に声をかけることに決めた。 機械時計なんて高級品は無い。
ちなみにアーニャが昨日言っていた時刻はテキトーだ。 雰囲気作りだったらしい。 なんか変な騎士物語でも読んだのかな……。
とりあえず帳簿も付けて、今日のお仕事は終わりだ。
はぁ……明日は謁見かぁ。 気が重いよう。




