表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/285

ドブグロ

評価ブクマありがとうございます!

 悲劇は回避されなかった。


「メイリアさん……」


「…………」


 メイリアさんも悲しそうだ。


「ニーナ! メイリア! どうじゃカッコイイじゃろ⁉」


「あ、はいソウデスネ。 お店はどうですか?」


「早速商品を並べたぞ! 中へ来るんじゃ!」


 メイリアさんと店内へ入ると、棚や(たる)に武器が陳列されていた。 防具もある。

 他のドワーフさん2人が値札を付けている最中のようだ。


「……安すぎる……魔王様かルルさんに相談した方がいい……」


「なにっ⁉ このなまくらでエール100杯は飲めるんじゃから十分じゃろう?」


 メイリアさんがふるふると頭を振る


「そういえばルルさんがドワーフさんの武器は価値が高いって言ってましたね。 ちょっと魔王様に念話します!」




 しばらくすると魔王様がいらっしゃってくれた。


「おい! 何で店の名前がドブグロになってるんだ!」


 魔王様! 魔王命令で変えてぇ! ……あ、ドワーフさんは魔族じゃないから命令できないぃ!


「ワシらの店じゃ! 文句ないじゃろう!」


「くそー! それで? 値付けのチェックだっけ? どれどれ……」


 魔王様でも不可能な事があるんだな……世界は広い。


「値付けの前に、ドルム! この棚はなんだ! お前が自慢してた最高傑作(けっさく)ばかりじゃないか!」


「ふふん! それはワシが認めた奴にしか売らん!」


「だぁーーー! あのな! こんなの置いといたらお前が武器と一緒に(さら)われるだろうが!

 これは亜空間に入れとけ。 ドルムが認めるやつが来て、いざという時にだけ出せばいい」


「む、人族に狙われるのは面倒じゃの。 しょうがないのう……自慢したかったのにのう……」


「ラウンツやレイスターにでも売ってやれ。 もっと性能の低いやつを商品として並べてくれよ、こんなのとか」


 さっきドルムさんがなまくらと言った剣を魔王様が手に取った。


「仲間の失敗作じゃぞ?」


「ドワーフにとっては失敗作でも、人族にとっては傑作だ、これは50万ディルでいい」


「な、何っ⁉ 詐欺にならんのか⁉」


 確かにホストクラブといい、魔王様の値段設定は詐欺(まが)いだ! 気を付けねば!


「メイリアさんはどう思う?」


「……多分妥当(だとう)……」


 メイリアさんがいうなら安心だ。


 その後も魔王様とメイリアさんが値付けをしていった。 最高で100万ディルの物もあった。


「よし、こんなもんだな。 しばらくはこれ以上の品質の武器は出すなよ? 余計な問題が起きる」


「失敗作や小物ばかりじゃな……普通の品質の物はどうするんじゃ? ワシらは失敗作を作るためにハンマーを振ってる訳じゃないぞい?」


「そうだな、通常品質の物はダンジョンの宝箱に入れよう。 金はちゃんと払うぞ。

 しかし武器屋までやるとは思ってなかったから失敗作が足りないな。 20階層以降のボス部屋にだけ通常品質の物を入れるか」


「ボスを倒せる位のやつにならワシらの武器を使わせてやってもいいの」


 その後魔王様が通常品質の武器や防具をいくつか買い取っていた。 ひとつ200から500万ディル位の物だ。

 手持ちのディルが無いので、魔王様は一旦ルインで払っていた。 そのうちルインをディルに換金するとの事。


「魔王様、また赤字にならないのですか?」


「うーん、実は赤字だ。 でもドワーフの武器が出るなら国もここをドワーフ達の村だと認めてくれるかもしれないし、冒険者もわんさかやってくるぞ。

 先行投資ってやつだな。 ホストクラブを開けたらガッポリ元を取るぜ!」


「……はい! 人族からガッポリ儲けてやりましょう! そして系列店を増やして人界征服ですね!」


「そうだ! 系列店をバンバン作るぞー!」


 ふふふ……人族は魔王様の罠に気付かないだろうな。


「上手いことハイドの遊びに付き合わされて大変じゃのう……」


 ドルムさんがポツリと何か言ったけど聞こえなかった。




 そのうち商人が来たらドブグロの扉を発注しようという話をして、ディアブロのお店へ戻って来た。


 ……ラウンツさんとアーニャがダンジョン入口の看板を手直ししてる……。


「メイリアさん……」


「…………」


 2人でコクリと(うなず)いて覚悟を決め、看板を見に行った。




 [♡エルドラドへようこそ♡

  1階層エリアは全てドワーフと獣人の村エルドラドです

  1階層で無用な戦いをしたら魔王様に代わっておしおきよ☆

  注:魔眼によって監視されています]


 よかった……前とほとんど変わってない。 いや、変わってない事は残念だけど。 酷くなるよりはマシだ。


「あ! ニーナ、メイリアちゃん! 魔王様に言われて看板を変えたよ!」


「うん……お疲れ様。 あ、そうだ、ドワーフさん達の武器屋が出来たから見てきたら? 強い人にはドルムさんの最高傑作を売ってくれるらしいよ」


「アラッ! じゃあレイスターちゃんとコーディちゃんも誘って行くわぁ!」


 その日はラウンツさん達前衛職が大木を相手にドワーフさん達に実力を見せ、ワイワイしていた。




 そしてドブグロは早速大繁盛だった。


「ドワーフの武器屋っ⁉」

「伝説の武器が買えるだと⁉」

「こんなもの失敗作じゃ! 20階層まで行ってワシらの本当の作品を手に入れるんじゃな! ガッハッハ!」

「20階層でタダで手に入るのか⁉ 明日からもダンジョンにこもるぞ!」


 などとお店からたびたび叫び声が聞こえてきた。




──────────────


「おはよう! 今日からドワーフと獣人が本格的に店に出るからな、護衛のためにみんな見守ってやってくれ!」


「アタシに任せてっ! オイタをしたコはアタシのモーニングスターでお尻ペンペンよっ!」


 そんな事したら人族はミンチになるよぅ! ラウンツさんはドルムさんにモーニン(鎖付き)グスター(鉄球)を売ってもらったんだな。


「お兄ちゃん達は何か売ってもらったの?」


「俺は邪龍の剣を作ってもらう約束をしたぜ!」


「私の中の(ヤツ)も邪龍と相性が良さそうだからね! レイスターと一緒でまだお預けだよ!」


「僕は値段が高すぎて手が出なかったです。 ホストクラブでバリバリ稼いだら買いますよ!」


 ラウンツさんしか買わなかったんだ。


「コーディさん、欲しい武器はいくらだったんですか?」


「1000万ディルです……」


 コーディさんはズーンとした表情をしていた。 そ、それは高い……。

 ラウンツさんは近衛隊だからお金持ちなのかな。


「ドルムさんはタダでくれると言ってくれたのですが、それでは締まらないと魔王様がおっしゃって。 僕もそう思いますし、楽しみがあると仕事に身が入りますからね!」


「そうですか。 お兄ちゃんとアーニャはお金どうするの?」


「パパのスネをかじるに決まってるよ!」


「アーニャ、いっそ清々しいね」


「父さん買ってくれるかな……ニーナ、一緒に説得してくれよ」


「えー……。 あ! そうだ、お父さんの分も特別に買えれば一緒に買ってくれるかも!?」


「それだ! ちょっとドルムさんに交渉して父さんに念話する!」


「あ! 念のため私も!」


 お兄ちゃんとアーニャは〈縮地〉を使ってドブグロへ向かった。 よっぽど欲しいらしい。


 アーニャのお父さん、ミゼルさんは魔王軍第二部隊長だから欲しがるだろうな。

 お父さんがドルムさんの武器を手に入れたらミゼルさんに自慢するに決まってる……。




「ニャ⁉ ドブグロが採用されるなんて聞いてないニャ! ズルいニャ! 僕もニャンダフルっていう名前をずっと温めてたニャー!」


 ドブグロを見ておんおんと泣くミアさんをルルさんがなだめてる……。


「魔王様……ミアちゃんが可哀想よ」


「うお! ミアそんな事で泣くなよー」


「そんな事じゃニャいニャ! ドワーフとの全面戦争も辞さないニャーーー‼」


 ひぇえ! どどど、どうしよう⁉




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ