ぎゅんぎゅんぎゅん!
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キキュー採集後、魔王様は人族の転移を終えると私達をディメンション二階へ帰してくれた。
そしてダッシュで部屋に向かったメイリアさんをルルさんが引き止める。
「メイリアちゃん、確認させてほしいことがあるのだけれど」
「……? ……」
ギギギ……とこちらに振り向いたメイリアさんが首を傾げた。あの詠唱について言及されると思ったのだろうか……。
「実はメイリアちゃんのスキルが精霊魔法なんじゃないかって私がポロッと零してしまって……隠していたのならごめんなさいね」
「……精霊魔法? ……」
メイリアさんの首はますます傾き、ついには横90度折れた。……首、痛くないのかな。
そのままとてとてとダイニングテーブルに近付いたメイリアさんが着席したのを合図に、魔王様含め皆が腰掛けた。
「ええ、人は歌いながら詠唱すると精霊の力を借りやすいのよ。そしてメイリアちゃんに何もダメージが無かったって事は、精霊の力を借りたんじゃないかと思って……」
ほうほう、さすがルルさん、魔法には詳しい。
「じゃあさ! 私も歌ったら闇精霊魔法が使えるかな⁉」
アーニャうるさい。
「……? ……分からない……いつの間にか使えてたから……」
「本当? 精霊と契約した覚えは? 少なくとも精霊の名前は知っているはずだわ! 例えば歌の中に精霊名が入っていたりとか!」
「……? ……契約なんて……して、ない……名前も……知らない……」
「そ、そんなはずは……。……あぁっ! 『ンギュン』! そんな名前だったわ! 豊穣を司る大地の精霊!」
突然ルルさんがぎゃふん! みたいなことを言い出したのでみんなビックリしてテーブルの裏に脚をぶつけた。
「……んぎゅん……? …………もしかして……ぎゅんぎゅんぎゅん……? ……」
メイリアさんがぎゅんぎゅん赤くなっていく顔を隠すように下を向くと、ルルさんがガタッ! とテーブルに乗り出し顔をググイっとメイリアさんへ近付けた。
「そうっ! それよメイリアちゃん! そうに違いないわっ! あぁ~ハッキリ分かってスッキリしたわ~!」
「…………そんな偶然が……」
……つまり、やはり精霊魔法だったっぽい? それにしても「ぎゅんぎゅんぎゅん」が精霊名の「ンギュン」と認識されていたなんて……。
でもルルさんはよくそこまで知っていたなぁ。私も魔王城の図書館にある本はよく読んでいたけど、本には精霊魔法の「せ」の字もなかった。近衛隊長のリオル様が使えるんじゃないかっていう噂しか聞いたことが無い。
「ルルさんさすがです、詳しいですね! 歌で精霊を呼び出せるだとか、精霊の名前とかまでよくご存じでしたね! 魔術学会に発表したらどうですか⁉」
「……あぁ! それは──」
私がルルさんに羨望の眼差しを送ると、ずっと黙っていた魔王様が会話をぶった切ってきた。
「俺がルルに精霊魔法の本を貸したからな! 当然俺も知ってたぞ」
「あ、そうだったんですか?」
「うむ。さぁ俺様も敬え、ニーナ!」
バッと両手を広げウェルカム体勢の魔王様。
「常に敬っています……二百万の魔王様名刺をお忘れですか?」
「うわ、二百万もかけたのかよ⁉ ひくわー、超ひくわー」
「忠誠心の表れですっ! ってかなんで私にはその本を見せてくれなかったんですかっ⁉ 魔王様ズルイですぅ! 隠してた罪で相殺ですっ! ぷんだ!」
「精霊魔法は使い方を間違えると色々と厄介だからよ……公には発表しない。メイリアみたいに無詠唱で無理矢理発動させて命の危険を冒す、とかあるからな……」
チラ、と魔王様がメイリアさんを見ると、彼女はますます頭を下げた。テーブルの下に隠れそうな勢いである。
なるほど……そっかぁ。自分で扱える魔力以上のものをむやみに扱ったら身体に影響が出てもおかしくない……。まさにいつもメイリアさんがポーションについて説明している、「用法容量は正しく」なのだ。
メイリアさん……私達に歌を聞かれたくないがために身の危険を顧みず……。でも気持ちは分かる、あれを聞かれるくらいなら死んだ方がましだ。
「まぁメイリアのユニークスキルは精霊魔法かもしれねぇけど、とにかく他言無用な事には変わりねぇ。この話は終いだ。俺様は疲れたぞ! ラウンツ、メシ!」
「ンフッ! オッケーよっ☆ 今日は魔王様の大好きなお肉にするわっ♡」
ラウンツさんがしゅるりとフリフリハートエプロンを纏う。その姿を見て急にお腹が空くのはあれだ、なんとか効果ってやつだ。
「ルルさん! 闇の精霊の名前教えてー!」
「まさかアーニャちゃん……」
「そのまさかだよ!」
「ダメだアーニャ」
良からぬことを考えている闇の世界の住人アーニャへ、魔王様がストップをかける。
「えっ⁉」
「闇の精霊はな……召喚しようとすると逃げる……。つまりツンデレだ!」
「なっ……なんという……こと……ッ!」
「アーニャが自力で闇精霊の名前を見つける事ができたなら、あっちから来るかもな?」
「ホント⁉ じゃあ闇精霊が好きそうな詠唱をいっぱい考えておくね! メイリアちゃんみたいにどれか一つくらいは当たったりして!」
そう言ってアーニャはお兄ちゃんを連れ、「詠唱を考えるのに忙しいから後でね!」と自室に消えてしまった。
……魔王様、なんって余計な事を! 二人が一生懸命考えた厨二詠唱を披露される身にもなってよぉ!
そしてその日のディメンション営業中、バックヤードに待機していた私とルルさんがアーニャから「わたしのかんがえたかっこいいうたのえいしょう」を延々と聞かされたのは言うまでもない。
ついでに今日メイリアさんに使う予定だった治癒魔法の厨二詠唱も聞かされた……どうでもいいよ!
ルルさんはずっと生暖かい目で「あらあらうふふ」している。
「アーニャぁ……もうお腹一杯だよぅ!」
「待って! 最後に技名はね……〈甦生〉! だよ! カッコよくない⁉」
「……ぶはっ! アーニャはホント厨二真っ盛りだな!」
魔王様が吹き出した。
「ちゅーにって何~?」
「ところでニーナ、ナイトの姿絵本はまだ出来ないのか?」
アーニャを無視した魔王様が私を横目でチラリ。
…………ああああっ! 忘れてたようっ! どどどっ、どうなってたっけ⁉
進撃に沼っているからではない……偶然……。
次回こそ姿絵本発売を!
2/18(金)はお休みします(∩´ω`∩)
世界一いらない情報
最強装備のラウンツさんのラフ画をTwitterに上げました( ゜∀゜)・∵. グハッ!!




