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オルガのキキュー育成開始!

第七章です! 人物紹介は211話の「人物紹介3」からほとんど変わっていないので省きましたm(__)m

 朝食後、魔王様は私達全員を連れてオルガ国内のキキュー群生地域とやらへ転移した。

 オルガ国に教えてもらったキキューの生えている場所の中で、北の方から順番に育成していくらしい。


 ……辺りを見渡すと、朝霧の中に沢山の小高い山々が見える。

 ここは山岳地帯で、今私達がいる所はほとんど木が無く標高が高そうだ。足元では雑草らしきものが地面にこびりつくようにビッシリと生えている。まるで少しでも土で暖を取ろうとしているかのようなその姿に、植物も生きているんだと改めて感じた。

 だけど……本当にここ?


「アアンッ! お花畑が無いじゃなぁいっ!」

「この雑草がキキュー?」

「メイリア、とりあえずここらへんのはずなんだが……なんか魔界よりハゲてねー? なんつーかよぉ、キキューみてぇに背のある草が無いな。……オルガ国の情報は精度が低いのか?」


 魔王様も首をひねってブツクサと独り言を言っている。

 ……もしかして、生えてないの⁉ それじゃぁ予定していた殺虫剤の量が半分しか作れない……。


「まぁ所詮ただの花だしなー! 魔界はキャロルのじいちゃんが調べてたから情報があったけど、人界でもそんな上手くいくワケねぇかー」

「……みんな……この花を見つけてほしい……」


 今朝からずっと顔色の悪いメイリアさんが白や黄色の花を亜空間から取り出した。薬草のようにツンと匂うけど、花弁が多く小ぶりで可愛い花だ。これがキキューらしい。時期的にまだつぼみにもなっていないかもしれないから、葉っぱのギザギザと匂いで判別してほしいと言われた。

 そして本当にここら辺に生えているかどうか確かめるため、みんなで飛び回りながら探すことに。


 探し始めて間もなく。みんなから「あったよー!」という声がポツポツと聞こえてきたので、ホッと胸をなでおろす。

 私も見つけねば! と意気込んだところで、偶然キキューを見つけた。両手に抱えられるくらいの範囲にたくさん生えている。よかった!


「メイリアさん! 私も見つけましたよ!」


 シュバッ! とメイリアさんが私の所へ飛んで来たので、私は誇らしげにキキューの花を手で指し示す。

 ……しかしメイリアさんの顔色はますます暗くなった。


「……うん……ありがと……ニーナ……」


 メイリアさんはガックリと肩を落とし、そのままふらふらとゴーストのように佇んでいる。今にも倒れそうだ。

 ……えっ! どどど、どうしたの⁉ なんかマズかった⁉

 とその時、メイリアさんのそばにシュンッと魔王様が転移なさって来た。


「メイリア! 遠くの方も見たけどあんま生えてねぇ! 場所変えるか?」


 えっ? なぜ?


「魔王様魔王様、どうしてキキューが生えているのにここじゃダメなんですか?」

「あん? ああ、ニーナはそこまで理解してなかったか。えっとな、メイリアのユニークスキルは『範囲指定発動』だ。だからこんなまばらに生えてるんじゃ、むしろメイリアの負担に見合わねぇから厄介なんだよ。いっそのこと生えてなきゃ見切ったのにな」


 一瞬、ラウンツさんから聞いた「いっそ裸ならええのに!」という勇者の台詞がリフレインした。ものすっごく納得した。

 でも今は魔王様とお話し中なので、頑張って「死蝶」の姿を朝もやの向こうへと追いやる。


「な、なるほど……ほとんどロスになるという事なんですね……」

「そういうこった。メイリア、隣の山行ってみるか?」

「……しかし魔王様……この地域の農民はもう召集してくださっているのでは……?……」


 メイリアさんはふるふる震えながらボソッと魔王様へ答えた。


「あん? ……まぁそうだけどよ。『また機会があれば!』って言やいいじゃねぇか」


 えぇ……。「機会があれば」とは、「もう無い」と同義だ。大人って怖い。


「……その社交辞令は……人族の魔王様への忠誠心低下を招く恐れが……さらに冬の収入を期待している農民には酷……むしろ反感を……。……そしてまさに今、時間を無駄にしていることこそが無意味……。…………今日……や……やり……ます……」


 おお! さすが国立錬金施設(狂信者の館)出身のメイリアさん! 魔王様信仰を広めるという使命感が強い!

 様々な葛藤を経て、彼女はこのハゲ山での実行を決めたらしい。

 まぁ他の土地にキキューの密集地帯があるとは限らないし、スキルを使う前に全地域を調べるにしても数日はかかるもんね。だからもうここでやっちゃうって事かな?


「お、おお……。メイリア、そんな下からガン付けんなよ……怖ぇよ……」


 メイリアさん……猫背のまま顔だけ魔王様へ向け、死んだ目でカッ! と見上げてる……。

 なぜ……そんな死を決意したかのような顔をしているの?

 辛いなら魔王様のお言葉に甘えてもいいんじゃ……。どうかメイリアさんが無理をして死にませんように……。


「……申し訳ありません……」

「おう。じゃっ、俺は採集係の人族を転移させてくるな! ちょっと待ってろ!」


 そう言って魔王様は消えてしまった。

 メイリアさんの話によると、オルガの役人が近くの農村の人族を集めてくれていて、さらに魔王様がゴッソリ転移させてきてくれるらしい。

 その調整とメイリアさんの休養のため、昨日はメイリアさんもお休みだったとの事。


 そしてメイリアさんから「前もってオルガ国の人族の手配までなさってくださった魔王様は偉大流石は魔王様どのようなお仕事でも完璧にこなされるそもそも魔界のキキュー育成がスケジュール通りにいかずそのためオルガ国側の調整も難しくなんちゃらかんちゃら~」と、ひたすら魔王様の偉大さについて饒舌に語られた。


 少し遠くでお兄ちゃんとアーニャ、ラウンツさんルルさんが可哀そうなものを見る目で私を見てる……。た、助けて……。




 メイリアさんの「魔王様は偉大」語りを聞かされること数時間──いや、実際には数分なんだけれども、私は時の歪みというものを初めて体験した──。魔王様が百人ほどの農民とオルガの役人を連れて帰ってきてくださった。


「きゃぁ!」

「ヒィ! 騙された⁉」

「魔族が待ち構えてやがった! 俺達取って食われねぇだろうなぁ⁉」


 ……私達を見た人族が怯えている。

 違うよぅ! 魔族は人族なんて食べないもんっ! 失礼なっ!


「黙れ! 国王様のお言葉を疑うか⁉」

「「「…………」」」


 オルガの役人らしき人の言葉で人族は沈黙した。

 そして魔王様が両手を腰に当てながらガニ股で偉そうに人族の方へ歩いて行く。実際偉いんだけれども。


「まーだ言ってんのか? うるせぇなぁ~。上手い話にリスクは付きもんなんだよ! なんなら給料前払いしてやろうか? 本当に俺らが人族を殺すなら無意味だけどな!」


 魔王様が魔王様らしい! でも人族が余計すくみ上ってるよぉ! ここに来る前にもひと悶着あったのかな……。

 魔王様は人族にサッと背を向けるとアーニャを見た。


「アーニャ、準備はいいか?」

「治癒魔法の準備、オッケーだよ!」

「んじゃメイリア、やっちまえ!」

「……はい……」


 メイリアさん……どうか……無理しないで!




次回、メイリア視点。

2/10(木)、11(金)はお休みしますm(__)m{真の敵は確定申告ではなく青色申告!)

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