詐欺じゃないよ! プルプル!
「なぜこんなに利益を出せるので⁉ 魔族にとっては普通でも、人族にとって真っ当な商売ですかな⁉」
ひぃ! ごめんなさい! 私も最初詐欺だと思ったよぅ! でも何故か訴えられないんだよぅ!
「ニーナちゃん、説明出来るかしら?」
ひぇ!
「あ、あの……そのお店は女性向けで恋物語の世界を楽しめる酒場なんです。 だからお酒代が高いけど、その分夢が見られる……そうです。
初回のお客様はお試し価格の1000ディルだけでお酒が飲めますから騙したりしてませんよ!
2回目からは高くなるのに、何故かお客様がリピートしてくださって、自ら高いお酒を頼んでくれるんですよぉ!
私にもなぜだか分かりません!」
途中から私も訳が分からなくなってドバーーーッ! っと話してしまった。
はい! 終わり! ホストクラブの世界は私の理解の範疇を超えている! これ以上はルルさんよろしくお願いします!
「酒場の給仕が裏で行っているようないかがわしい事は……」
ぎゃぴ! そんなお店じゃないよぅ!
「身体を重ねることは厳禁、プライベートでお客様と会うことすら禁止としていますわ」
「その話が本当なら……恋物語の酒場……ますます興味が出てきましたぞ!」
「酒場というより娯楽施設と考えて頂ければ」
「恋物語の世界か……女性向けの酒場は無いからの、新たな需要を生み出したのじゃな。 流行るのも頷けるかものう。 魔王め、やりおる」
「姫様、是非とも前向きに検討して頂きたいですぞ!」
「うむ、資料は渡しておこう」
「あと、お願いなのですけれど、商人さんをディアブロへ呼んで頂けないかしら? 小麦など生活必需品を買いたいわ。
私達はディアブロを通して人界の貨幣を稼いでいるから使いたいのよ。 魔界へ持って行っても使えないもの。
人界の貨幣は人界で回す。 損な話ではなくてよ?」
「姫様! なにとぞご検討を! ダンジョン前での出店の許可もお願いしたいですぞ!」
ルルさん覚えててくれてた! ワコフさんもノリノリだ! ありがとう!
「あいわかった、報告しておくのじゃ」
「あと残る問題は、私達魔族が街へ入っても住民に恐怖を与えないかどうかね……こればっかりは時間をかけるしかないと覚悟しているわ」
「そうじゃのう……」
「姫様、私も話をさせて頂いても?」
空気を読んでずっと黙っていたグレイムさんが口を開いた。
「うむ、なんぞ?」
「今のところ魔族と交流があるのは冒険者です。 国が魔族との交流を開始するのであれば、まずは冒険者から一般人へ話を広げてもらうのが早いかと。
そこにいるメイリア殿の作ったポーションも効果が高いと評判です」
「おお、そういえば冒険者は魔族と仲良くしておったの。 父上が方針を固めたらその方向性でいいじゃろ」
「はい。 ところでルル殿、救援魔道具の問題についても話があるのでは?」
「問題じゃと?」
「ええ、ご相談がありまして……」
ルルさんが救援魔道具の後払いの件を話した。
「あいわかった、これも父上の許可が出たら冒険者ギルドが取り締まる方向でいこうぞ」
ふぅ。 これでお話はおしまいかな? ルルさんのおかげでなんか上手くいった気がする!
「ところでベルラはまだかの?」
あ、忘れてた! 毒味!
「もう着くと念話がありました、お待ちください」
少しするとドアがノックされ、ライオットさんの返事でベルラさんが入室してきた。
「お待たせしました! 料理長を中々説得出来なくて……申し訳ございません」
ベルラさんがテーブルへ料理を置いた。 サラダ、スープ、肉と魚料理、パン、デザートだ。
「料理長にどうしても毒入りの食事は作れないと泣きながら懇願されまして……料理は普通のものです。 それで、軍で使用している麻痺毒をお持ちしました」
料理長さん……ごめんね。
「まぁしょうがないの……。 ではライオット、魔道具を使ってみるのじゃ!」
お姫様は瞳を輝かせている。
ライオットさんは、まずそのままの食事に魔道具を刺していき、全てが青く光った事を確認した。
その次に、麻痺毒を料理に振りかけたりして混ぜ、魔道具を刺す。 すると赤く光った!
おおー! さすがルルさんとメイリアさんの魔道具、すごい!
「おお! 反応するのう!」
「そのようですね。 登録されている毒のリストは国家機密になりますね……」
「うむ、リストが流出したら意味が無いからの。 よし! この魔道具が使える日が楽しみじゃ! 今日の話はこんなものかのう?」
皆が頷く。
「本日は有意義なお時間を頂きましてありがとうございました」
「あ、ありがとうございます!」
「……ありがと……人界の毒……待ってる……」
メイリアさんはやっぱりメイリアさんだった。
最後にベルラさんとギルドマスターさん達に念話していいか聞いて、私達は退室した。
疲れたよぅ……。 次は魔王様に報告だ!




