四天王戦 ラウンツさんはウズいているようです
『魔王様ぁ……もうラストの作戦行きましょうよぅ! 魔王様出て来てくださいぃ!』
『あん? ニーナのミッションはまだ二つ残ってるぞ! 気合い入れてやれ! あと隠れてばっかじゃなくてちゃんと戦え!』
演出不足なニーナに喝を入れる。
……やっぱニーナは対人戦が苦手だな。でも頑張ってるちびっ子、たまんねぇ。
「レイスター、アーニャ、ちょっとここよろしく」
「はいっ!」
「オッケーだよ!」
俺はアレイル兵にやられたオーガを補充するため、急いでダンジョンへ転移した。
火山エリアの45階層に着くと、オーガ達がぎゅうぎゅうと集まり正座して俺を待っていた。
……余計暑苦しいぜ。ってかなんで正座知ってんだよ。
「お前ら人族を殺してないか?」
「「「はいっ!!!」」」
「よし! 繰り返すがいつかはここ、45階層にも冒険者がやって来る時がくる! 人族のマナがお前らのメシだからな、出来るだけ魔力を放出させろ! だから引き続き人族を殺さない訓練だ、気合い入れてやれ!」
「「「うぉぉおおお! がんばるぞー!」」」
「ニーナも配下のお前らに期待してるからな!」
「「「……うぉぉおおおーーーーー! 姉御ぉーーーーー!!!!! 姉御! 姉御! 姉御! ──」」」
ニーナ、お前オーガに何やったんだ……。俺様より慕われてるじゃねぇか、チッ。まぁ面白いからいいけど。
そして再びオーガを連れ、俺はアレイルに戻った。
オーガ達が戦っていた辺りに転移すると、アレイル兵はオーガが減った事によりニーナのいる結界を取り囲み始めていた。……あっちへ向かわせるか。
「「「──ッ⁉ 姉御があぶない! むかうぞぉおおおーーー!!!!!」」」
……俺様が号令を出すまでも無かった。
レイスター達のいる木に戻り、観戦を再開しようとしたが、ルルとメイリアの〈黒霧〉が解けかかっている事に気付いた。どうした?
「はぁぁ……たまらないわ……可愛い……可愛い……」
「……これで明日から頑張れる……」
……コイツら! 鼻血と涎を垂らしながらニーナに萌えまくっている!!!!!
まぁ想定の範囲内だ、放置。
さて、今ニーナはどうなっているかな? ……うん、また結界張り忘れてる。
「みゅみゅっ! 喰らえ、メロディ☆まじっく! にゃのだぁーーーっ♡」
「激アツ勇者──」
「〈炎ッ……天〉~!」
「──ストレートフラーーーッシュッ!」
やっとニーナが反撃したか。……メロディ☆まじっく……マジで言ってる! にゃんにゃんポーズくっそウケる!
「ブフッ……! ここで勇者に一撃喰らわせておこう」
「オッケーだよ魔王様!」
ニーナへの念話はアーニャに任せてある。
アーニャから指示を受け取ったニーナは勇者の聖魔力を〈炎天〉で押し返し、そのまま勇者ごと吹っ飛ばした。
「アッ……カーーーーーンッ!」
──ドサッ……。
ニーナは地べたでプスプスと煙を上げている勇者を空中から見下ろし、言った。
「こんのぉ~……カスでアホでギャンブル狂で色情狂めっ! 全女子の敵めっ! メロディ直々の天誅を受けるがよい! なのだっ☆」
「ハッ⁉ アカン! ヅラどこや⁉」
う~ん、かなりニーナの私情が入っている。斬られた服から胸が見えそうだからか? まぁいいや。
「レイスター、アーニャ、この展開どう思う?」
「定番は押さえています。でもだからこそ『破壊の乙女戦』の後だと物足りないですね……」
「はみゅはみゅはもうみんな堪能したよ! ちなみにこの場でニーナのおっぱいに興味があるのは勇者だけだね!」
「そうか……」
チラ、とルルとメイリアを見る。……完っ全にニーナに集中して〈黒霧〉が解けてるじゃねぇか。もう満足したよな?
「魔王様ぁ……アタシ、もう……我慢できないわぁっ!」
ねばっこい視線で俺を見るなラウンツ! 分かったよ! この出たがり野郎め!
「よし! ダレるからラストの作戦を開始する! ラウンツ、準備はいいな⁉」
「ンフッ♡ モチのロンで準備万端よっ☆!」
「ついにあの作戦だね!」
「ラウンツさん頑張ってください!」
「「…………‼」」
ルルとメイリアがあんぐりと口を開け絶望しているがスルー。そろそろ終演だ、楽しい時間はあっという間ってな。
『ニーナ、ラウンツ作戦だ! エタフォの準備を!』
──────────────
「おい痛ピンク! 俺のヅラどこやったん⁉ アレが無いと聖剣の威力が出ぇへんねん! ほとばしる俺の白いアレをぶっかけられへん!」
な! なんという聞くに堪えられないお下劣な台詞! 魔王様、早くエタフォの許可を! コイツだけは殺さなくてはっ‼
私はコッソリ〈影移動〉で回収したヅラを指で摘まみ上げ揺らした。
アーニャからの「勇者のピンチ演出」指示が継続しているからだ。
「みゅふふっ☆ これのことかにゃぁ~? こんにゃもの……ぽ~いっ☆ なのだっぷぅーーー♡!」
ヅラを遠くへ飛ばし、犬のように追いかける勇者を見てちょっとうっぷんが晴れた。
そしてヅラを触ってしまった手に洗浄魔法をかける。と、魔王様から念話が。
『ニーナ、ラウンツ作戦だ! エタフォの準備を!』
ついにエタフォ! やっと終われる!
……ん? 「ラウンツ作戦」って何? 聞いてないよ! ……えっ⁉ またラウンツさんが出てくるの⁉ また世界が滅亡するの⁉ ちょっと誰か説明を!
「……ヅラ無事やったぁーーー! さっすがセレネー様の装備や! 反撃開始やでぇ!」
ひぃ! 勇者がヅラを被りながらこちらへ向かって来る! と、とにかく二段階詠唱を開始せねば! あっ、あとボスっぽい台詞!
「あにょ攻撃を受けてピンピンしているにゃんて……さしゅがゆーしゃ、みゅ……。にゃ、にゃらば! メロディの本気を見せてあげるみゅっ♡ これを見る者はおぬしが初めてにゃのだっ! 今、生きているやちゅの中ではにぇっ☆」
いきなり私が狼狽え始めた意味が分からないが、フェーズ移行のためだ、多少の矛盾は仕方ない。……だってここからは台本にそう書いてあったんだもん。
台詞の次は、空中で縮こまるように両手をクロスさせ俯く。左足だけちょっと伸ばしているのがカッコいいコツだ。
「させへんでぇーーー!!!!!」
「漆黒より舞い上がりし雪の華よ! こにょ世の全てを凍てちゅかしぇ! 〈ダイヤモンドダスト〉ぉ~!」
バッ! と手足を広げ、私の全身から放出された氷の結晶が辺り一帯をキラキラ輝かせた!
「氷魔法⁉ アカン! 〈紅孔雀〉ッ!」
……くっ! 火魔法でちょっと削られた!
でも次はエタフォ、いっくよぉーーーーー☆!
ルルとメイリアについて念のため。百合ではなくあくまで萌えです。ワンコを可愛がるような感じ。
紅孔雀は麻雀のローカル役満です。キャンブル狂めw (ソーズの1・5・7・9 と字牌の 中 のみで揃える役)
1/31(月)と2/1(火)はお休みしますm(__)m




