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四天王戦 ラッキースケベ

「でゎでゎぁ~……メロディの! ショータイム☆はっじまっるよぉ~♡」


 ぎゅぎゅっと地面を踏みしめ、〈飛行〉で空中へ。そしてすぐさま火魔法を放──


「っふ!」


 ──聖剣を振り上げた勇者が目の前に‼ 斬ら──いや結界──あああ張ってないぃい!!!!!


「ッシャァ! ……あれ? また消えた!」


 心臓がドッドッドッドッ! と身体の内側から私を叩く。

 ……あ、あぶ……危なかったぁ! 咄嗟に避けながら影に潜り込めてよかった……。


 ──ッつぅ! ……? 胸からお腹がなんかジンジンする!

 もしかして……また斬られたっ⁉ 痛いぃっ! 影の中じゃ見えないし亜空間魔法も使えないからポーション飲めないようぅっ!

 なら手と口だけ外に出してコソコソッと──


(いた)ピンクどこやー! 逃げたん⁉ 卑怯やぞ出て来い! 帰ってええんか~⁉」


 勇者だけには卑怯などと言われたくない! そして私だって帰りたい!


『ニーナ! 早く戦って!』


 ひぃん! アーニャが容赦ない!


『き、斬られたよぉ!』

『ちょっと斬られたくらいじゃ死なないよ! ねっ? 魔王様!』


 くっ……魔王様がご覧になっている、戦わねば! ポーションは後!

 外に出るため、影との境界線を頭でぐにゅりと押し上げる。

 ……あ、あれ? これって外に出た途端、首ちょんぱされるんじゃ……。どどどっ、どうしようっ⁉


『ニーナ~早く!』

『……アーニャぁ……怖いよぅ! 勇者が思ったより俊敏で! ゴキブリ並みなんだようっ!』


 勇者の動きは目で追えるけど、実際に自分が戦うとなると身体を動かすのが追い付かない……。


『え~? 何言ってるの! ニーナの本気なら大丈夫だって!』

『モグラ叩きにされるのはやだようっ! コッソリ手だけ出して魔法をブッ放そう⁉』


 例え卑怯と言われようともこれが本来の私の戦闘スタイルだ!

 じゃないと地面から頭を出した瞬間にカチ割られる未来しか見えない……。目には目を、卑怯には卑怯を!


『……ニーナ、俺は期待している』


 ハッ⁉ 魔王様……。そうだ、私は魔王様のために戦うんだっ! 失望だけはされたくない……。

 見ていてください、魔王様。私の勇姿をっ!


 幸い勇者はギャーギャーと騒いでいるから声で位置は分かる。そして夜だから私はどこにでも〈影移動〉し放題だ。

 ……よし、影から出たら〈結界〉、影から出たら〈結界〉……行くぞっ!

 十メートル位先、勇者の後方へ移動しシュバッ! と真上に飛び出る。そして宙に浮いたまま〈結界〉! 台詞も!


「はみゅぅ~♡ 陰形鬼(おんぎょうき)のメロディの動きについて来ら──」

「せぇいっ!」


 はみゅっ⁉ また斬られるっ!


 ──ガキィン!


 跳び上がり上から私を狙った勇者は結界の存在に気付き一瞬目を見開く。かと思いきや、ニヤッと笑うとそのまま連続で斬り付けてきた!


 キキキキキンッ! キキンッ!


 ヤツは目にも止まらぬ速さで上下左右斜めと結界をメッタ斬りに! メチャクチャな攻撃に見えるが、結界へ斬り付けた反動を利用する事で宙に留まり続けながら斬撃を……くっ、中々やる!

 そして共通して狙っているのは恐らく一点、私の胸部だ。

 ふふふ……しかし! 私をすっぽり球体状に包む結界を破る事など、魔王様でも出来ないのだよ!


「おっぱいサービスありがとさん~!」


 おっぱい……? チラと自分の胸元を見る。

 ……あああああっ⁉ 服も裂けてる‼ 縦に! 狙ってやったの⁉ なんて卑怯で卑猥(ひわい)なゴミ虫ッ!

 コイツ……殺すッ! 死を()ってしても償いきれぬっ! もはや灰すら残さないんだからっ!

 確実に仕留めるため、両手にギュワワッとありったけの魔力を集める! 無詠唱で〈炎天〉をブッ放してやる!


『……えっ⁉ ニーナダメッ! 手加減して! ちゃんと詠唱してモーションも忘れないでね⁉』


 私の一撃必殺の魔力を感じ取ったアーニャから演技指導が入る。

 ……くっ! そうだった! 〈炎天〉の厨二詠唱は確か──


 ──ギィインッ!


「チッ! 硬ェ!」


 ずっと私の結界を斬り付けていた勇者の動きが止まった。

 ヤツは一旦地上に降り、(アゴ)を引いたままギン! と私を睨むと聖剣を低く構えた。


「……激アツ勇者──」


 あっ! 勇者の必殺技が来る⁉ イヤァアーーー! 受けたくない! 受けたくないけど……っ!


「──ストレートフラーーーッシュッ!」


 聖属性の波動が私へ向かって飛んでくる!

 私はお兄ちゃんのように後ろに吹き飛ばされた感じを演出しつつ、後方の地面へ向かって飛び、その攻撃を受け流した!

 ……ひぃっ⁉ 何この聖魔力、なんか濃い! 重い! 気持ち悪ぃい! 脳みそを直接揺らされてるみたい!


 予定されていたボロボロ演出のため、ズザザァーーーッ! と全身で地面を滑り一瞬だけ〈結界〉を解除しながら再び影に潜った。

 これで服が泥だらけのはずだ! もう超ピンチと言っても過言ではない。


『アーニャ、そろそろいいよね? 私ピンチだよね? 殺していいよねっ⁉』

『まだまだだよ! 全然戦ってないじゃん! あと殺しちゃダメだよ!』


 えぇ……もうおうちに帰りたいようっ! ラウンツさんのフリフリハートエプロンが恋しいっ!


「また消えた⁉ 転移魔法なん⁉ 俺にも教えてや! あっ! 魔王はよ来てくれへんー⁉ 魔法教えてやーーー!」


 勇者が魔王様を呼んでる……私も早く来て終わりにしてほしい。


『魔王様ぁ……もうラストの作戦行きましょうよぅ! 魔王様出て来てくださいぃ!』

『あん? ニーナのミッションはまだ二つ残ってるぞ! 気合い入れてやれ! あと隠れてばっかじゃなくてちゃんと戦え!』


 ああん! 戦いたくないのがバレてる! ……これはマズイ。私は絶対、魔王様から勲章をもらうんだ!

 そしてミッションかぁ……仕方ない。

 また勇者から離れた地面まで影の中を移動し、先ほどと同じように地面からシュバッと飛び上がった。ここであの台詞!


「みゅみゅぅ~っ! やったにゃぁ~? ゆーしゃよ、にゃかにゃかやるのだっ☆ でもでもぉメロディのは転移じゃないもんっ! 腰抜け魔王なんかの魔法といっちょにしないでくれりゅぅ? メロディはぁ~、にゃ、にゃんと! 影を自由自在に操れりゅのだっ☆」


 あくまで四天王の謀反(むほん)であるという設定と、陰形鬼(おんぎょうき)の特性を説明した。

 魔王様ごめんなさい! でも分かってくれているはず! そしてこれで残るミッションはあとひとつ!


「はぁ~? 影ぇ? なんや転移魔法やないんか。ほんなら用はあれへん! はよ死んでや!」


 むぅっ! 失礼な! 遠距離かつ連続で転移できる魔王様も凄いけど、〈影移動〉は私だけのユニークスキルなんだけど⁉

 でも……くっ! 人族に私だってバレたら困るから詳しく説明できない! もどかしい!

 もういい、私だって早く終わらせたいもんっ! 行ってやるぅ!


「みゅみゅっ! 喰らえ、メロディ☆まじっく! にゃのだぁーーーっ♡」

「激アツ勇者──」

「〈炎ッ……天〉~!」

「──ストレートフラーーーッシュッ!」


 ゴォオオオオオオーーー‼


 互いの紅白の魔力がぶつかり合った!




ついに挿絵が完成しました! 262話「もうひとつの着せ替え人形【挿絵有】」の最後にあります。

素敵なイラスト著作:八十八様 Twitter @88_Hattoya 転載・無断使用・自作発言等禁止。


1/28(金)、29(土)はお休みしますm(__)m

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