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四天王戦 ニーナ戦、開始!

「月夜に浮かぶ双角(そうかく)──あれが四天王の首魁(しゅかい)、か。行くぞ! その仮面、()ぎ取るのは私だッ!」


 荷台の上でキリッとカッコいい台詞をキメたレクサスさんがシュルリと片手剣を抜いた。

 くっ! この人が相手だったらどんなに楽だったか!

 なぜなら私はカスを「カッコよくて強い勇者」に仕立て上げなければならない……。任務放棄したいようっ!


 でも魔王様の人界征服のために、私は……頑張るって決めたんだ! 魔王様がへっぽこじゃないって言ってくれたもん!

 ぎゅっとこぶしを握り締め、自分の心を奮い立たせる。そして拡声魔法を準備し、両手で作った二つの輪っかを眼鏡に見立てるポーズをしたらここで台詞開始!


「みゅみゅぅ~っ⁉ ゆーしゃを発見☆なのだっ! こっちこっち~♡」


 上空にドゥン! と火魔法を打ち上げ人族に注目させ、バサッとマントを脱ぎ捨てる。

 ……よかった、上手くいった! カッコよく脱ぐのって意外と難しいんだよね!

 遠くで姉御コールが聞こえるけど聞かなかったことにする。


四天王(してんのー)が一人! 『刹那の雪月華しぇちゅにゃにょしぇちゅげちゅか』とはメロディのことだぴょん♪ ぷいぷい~♡」


 シュリエルさんがやっていたように、両手のピースで自分のほっぺをむにゅっとする。意味が無いことに意味があるのだ、きっと。


「……まぁたけったいな服と仮面やなぁ~。今度こそ女やんな?」


 ポカンと口を開けたカスが私をおネエじゃないか疑ってる……。失礼なっ! ルルさん程じゃないけどちゃんと()()もんっ!

 とにかく、カス勇者と一騎打ちに持って行かなければならないので作戦通りカスへ向かって一直線に飛ぶ!

 途中で〈影移動〉を使い、荷馬車にいるカスの後ろへ潜り込んだ。


「消えた!」

「来るぞ!」


 影からニュッと出たらカスの脇を持ち上げて拉致!


「うわっ!」

「アカン!」

「リュー!」


 ──シュッ! ダンッ!


 あああっ! 荷台を蹴って跳んだらまた足首がぐにぃって! 折れてないよねっ⁉ もうやだこの靴!

 とにかく急いで魔王様達がいる木の方へ! オーガさんと反対方向へ!

 〈飛行〉でビューンと飛んでいるうちに何か違和感が。

 ……? 左腕が熱い! ……斬られた⁉ くっ、多分レクサスさんだ!

 あああああ! 結界張るの忘れてたようっ! 痛い痛い痛いぃいいい! こんなに痛いの初めてだよぅ! 怖いようっ!


「お? デカいな! ちゃんと女や! ……ヘヘッ!」


 わ……私の胸に頭をうずめたカスが何という事を! 色情狂めっ!

 カスを抱きかかえてるってことは、私がカスの胸に手を回して抱き着いたことに⁉ なんて不本意な! 空間固定で運べばよかったじゃん! 私のバカバカッ!

 飛行速度を上げ目的地に降り立つ前にカスを落とし、私は距離を取ってから着地する。


「うおっ! 落とすなや! ヅラ取れるやろ⁉」


 カスはヅラを押さえながら身体をひねって器用に着地した。

 くっ……早くポーションを飲みたい! でもまずは台詞だ! 不測の事態はアーニャがサポートしてくれるから信じよう!

 内股で脚を大きく開き、バッ! と両腕を左右に伸ばす。……くっ! 痛いけど、はみゅカッコいいポーズのためだ!


「みゅっふっふ……〈はみゅはみゅ☆フィールド〉♡!」

「げぇっ! また閉じ込められる!」


 この合図で魔王様が周囲に結界を張ってくれるはず!

 ……しかし前回と違って出来たのは、ハートで装飾がなされたピンクの可愛らしい柵だった。多分ラウンツさんのフリフリハートエプロンと同じ属性。


「もぉおおおーーー! なんで俺ばっか狙うん⁉ 勘弁してや! レクサスさんと戦ってくれへん⁉ っちゅーかオカマの魔族──」


 ちょ、ちょっと黙って……やっと一つ目の拉致作戦が終わったの! 次のフェーズに移行しなきゃいけないの! 左腕、痛いようっ!


「ゆーしゃリュー……そなたをメロディのおもちゃにしてあげりゅのだっ☆ 『残夢の呪縛』『片翼(かたは)の堕天使』『破壊の乙女』、この三人(しゃんにん)を殺したそなただけ特別だみゅっ♡ 光栄(こーえー)に思うがよいのだ! きゅぴーん☆」


 ぴしっとカスを指差しウィンク攻撃!


「えっ⁉ あのオカマ死んだん⁉ せやなぁ⁉ 死んだよなぁ⁉ でも生きてんねん! 俺にアメドクロの呪いがかかったまんまやねん! 解呪教えてや⁉」


 え……? ラウンツさんが生きてる……? いや、生きてるけども、破壊の乙女戦の阿鼻叫喚地獄絵図は本人から聞いている。


「はみゅっ? 金鬼(きんき)の力はもう感じられないみゅっ! その聖剣で完全にやられたぴょん♪ あとあとぉ、『破壊の乙女』は女のコ……だ、みゅ……ぅ……」

「はぁっ⁉ (うせ)やん!」


 ウソですごめんなさい! でもこの流れで私の設定を話さねば!


「ホントだもぉん! あっ、でもでもぉ~、女のコを(あや)めたからって気にちないでねっ? どぉせメロディがやちゅら三人(しゃんにん)を殺しゅ予定だったからっ☆ じゃないとぉ~メロディランドがちゅくりぇにゃいもんっ! みゅふふっ♡ しゃてっと……メロディの中に(うごめ)陰形鬼(おんぎょうき)──この力をちゅかって鬼は召喚しちゃったよぉ~? 早くメロディを倒しゃないとアレイルが鬼で溢れるぴょん! どうしゅる? みゅみゅっ☆」


 大げさに身振り手振り、子供の用に手足をバタバタさせながら設定を話し、最後は内股で上体を傾け、重ねた両手を左ほっぺに当て両目をぎゅぅ~っとつむった。リリーさん直伝、意味はないけど可愛いポーズだ。


「あのオーガはアレイル兵が()ってくれるからええねん! そないな事より解呪教えてや⁉ 毎晩オカマの悪夢にうなされんねん! アメドクロと黒いお姉ちゃんにハメられてん! 『オカマの呪いはどこまでも追いかける、夢の中までも』なんや!」


 両手で(ヅラ)を抱えたカスの必死の叫びにピキッと固まる。

 無言のパーティ念話の向こうでみんなも固まっている気がした。


 ……あああああっ! ラウンツさんの最強装備を見ちゃったからカスまで私達と同じ被害に⁉ いやむしろ! 封印(胸のリボン)開放を見た勇者の被害は甚大だっ!

 一週間もあの悪夢と戦っていたの⁉ しかもお兄ちゃんの呪いのせいだと思ってるようっ! 違います!

 ……だが一週間も生きて乗り越えたこいつは本物の勇者かもしれない。敬意を表し、今からでもせめて「勇者」と呼んであげよう。

 しかしこの勇者は目を離せば四天王戦から逃走するクズだ。絶対に私と戦わせねばっ!


「ぁ、ぁあ~……? 『残夢の呪縛』の呪いだみゅっ? メロディを倒しぇば解けるかもしれないみゅっ☆」

「やっぱそのパターンなん⁉ もぉおおおーーー! しゃーない、()ったるでぇ! 後でおっぱい揉ませてな!」


 やっぱり殺そう、このカス。

 と思った瞬間、アーニャから指示が入る。……ありがとう!


「あっ! 後ろに『破壊の乙女』の亡霊がいるのだ♡!」

「げぇっ⁉」


 勇者が後ろを振り返った隙にすかさずポーションを飲む!


「……おらんやん! おらんよな⁉ 俺オバケも苦手やからホンマやめて⁉」

「メロディジョークだみゅぅっ☆」


 こちらへ向き直った勇者から隠すようにポーション瓶を亜空間へしまい、魔王様にしたようにテヘペロ☆ポーズをする。

 うぇえん……治ったけど痛かったよぅ! シクシク……。

 でもさっき斬撃を喰らったおかげで本物の出血演出はバッチリだ! ナイスですよ、レクサスさんっ!


 ……だからなんであの人が勇者じゃないのっ⁉ もういいっ、戦闘フェーズへ移行だ!

 よし、行くぞ! 戦うぞ! 魔王様のために! えっと……次の台詞は──


「でゎでゎぁ~……メロディの! ショータイム☆はっじまっるよぉ~♡」


 ぎゅぎゅっと地面を踏みしめ、〈飛行〉で空中へ。だってこの靴じゃ歩けないもん。




 そして私はまた忘れていた──あんなに魔王様に言われていた事を。




ニーナのおっぱい事情が判明。表紙の通り意外とおっきかった(`・ω・´)


現在の第五章が長いため、211話「四天王準備」から第六章としました。


明日1/25(火)は211話に「~人物紹介3~ ネタバレ無し」を挿し込み予定。

「四天王準備」以降は1話ずつ後ろにズレます。しおりもズレたら申し訳ありません。

人物紹介はキャラの台詞でプチエピソードも盛り込んでいるので、良かったらご覧ください(∩´ω`∩)


1/26(水)はお休みしますm(__)m 本編再開は1/27(木)。

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