ルルに任せた!
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アーニャとお店に帰ってきたら魔王様がいらっしゃっていた。
「魔王様こんにちは……昨日は散々でしたよ……」
「ん? なんの事だ?」
魔王様はラウンツさんがネグリジェで寝てる事を知らないのかな? 知ってて逃げたんだと思ったけど……。
ジト……と魔王様を見つめたらふいっと目をそらされた。
あっ! これは知ってたな! ヒドイ!
「それよりルル、国との交渉の準備はどうだ?」
「バッチリよ! 任せてちょうだい」
「お、さすがだな! まぁ焦らなくていいぞ」
「あ、ルルさん、ディアブロまで商人が来てくれるようお願いってできますか?
獣人さんは麦や服、ドワーフさんはお酒や鉱石が欲しいみたいです。 特に小麦はすぐ必要だと思います」
「……私達も商人には来て欲しいわね。 いつまでも魔王様に食料を持って来てもらう訳にはいかないもの。 わかったわ、交渉に盛り込むわね」
「ルル、いつ頃行く?」
「今日オルガ軍に、交渉の席を設けてもらうようお願いしに行くわ。 向こうも準備があるでしょうから、実際の日取りはあちら次第かしら」
「よし! ニーナを連れて行け!」
ぎゃぴ! やっぱり!
「メイリアちゃんも連れて行っていいかしら?」
「全部ルルに任せた!」
魔王様に目で訴えたけど、シッシッと追い払われ、ルルさんとメイリアさんと街の門まで来た。
「……ブフォ! ……ごめんなさい。 ニーナちゃん、今日は私が声をかけるわね」
「はい……」
私だとラララライッ! しか言えないもんね。
というか、声をかける前に私達の姿を見た軍人さんが門から出て来てくれた。 段々私達に慣れてきたみたい。
そして遅れてライオットさんが来た。
「今日は何の用だ?」
「ライオットさんこんにちは。 お姫様と約束した折衷案を持ってきたわ。 出来れば冒険者ギルドマスターと商業ギルドマスターも一緒にお話できると嬉しいのだけど。 日取りが決まったら教えてくださる?」
「その件ならアリアヴェルテ様へ直接念話する許可をもらっている、少し待て」
人族も念話出来るんだ。 前に教えてくれればわざわざここまで来なくてよかったのにぃ。
でもどのみちライオットさんは念話先を教えてくれなさそうだな。 ベルラさんに聞いておけばよかった。
「今から姫様とギルドマスター達が来る」
「えっ! 今からですか?」
「ニーナちゃん落ち着いて、私は想定内よ」
お姫様ってそんなにホイホイ来ていいのかなぁ? まぁディアブロに遊びに来るくらいだからおてんば姫なのかも。
「門の詰所に来客用の部屋があるからそこへ案内する。 姫様を再びダンジョンまで向かわせる事ははばかられるし、かといって魔族を城に入れる訳にはいかんからな。 姫様の御心に感謝しろ、フン」
ライオットさんを先頭に門の中へ案内される。 門を通ったら街が見えると思ったら違ってた。
街を囲う外郭、つまり壁はかなり厚く造られており空洞があるみたいで、壁の中は通路や詰所と呼ばれる部屋があった。
いくつかある部屋の中のうちのひとつに通されたけど、煌びやかな家具が置いてある豪華な部屋だった。
他国の王族や偉い人が来た時用の部屋かな? 今からお姫様が来るからこの部屋なんだろう。
ソファに座って待ってるけど来ない……ルルさんとメイリアさんが作った魔道具のお話をしてるけど私はサッパリだ。
人界の毒をコンプリートしたいとか物騒な話をしてる……大丈夫なの⁉
ソファにぐでんーとなっていたら、カチャリと扉が開く音がしたので飛び跳ねて立ち上がり姿勢を正す。
ライオットさんに続いてお姫様、冒険者ギルドマスターのグレイムさん、商業ギルドマスターのワコフさんが入室してきた。
「ごきげんようなのじゃ、皆の者」
「楽しみにして来たぞ!」
「いやぁアリアヴェルテ様と同席させて頂けるとは光栄ですな!」
私達が挨拶交わすとライオットさん以外はソファに座った。
「ルルよ、意外と早かったの。 早速魔族の案を聞かせてもらおうぞ」
お姫様はワクワクしてるようだ。
「ええ。 まずは魔族からオルガ国への友好の品をお渡ししても?」
「おお! なんじゃ楽しみじゃのう!」
「私が受け取ろう」
ルルさんがライオットさんに金属の棒状の物をそっと渡した。 なんだろう?
「これはなんじゃ?」
「お姫様、お食事の際はいつも毒味が終わった後の冷めたスープを召し上がっているのではなくて?」
「む? おお……そうじゃな、冷めたスープは好かん」
「これは毒味の魔道具ですわ。 こちらを使えば毒味の時間が短縮され、温かいスープを召し上がる事ができましてよ」
毒味の魔道具か。 だからメイリアさんが協力してたんだ。 毒を何に使うのかずっとヒヤヒヤしてたよぅ!
「なんと! それはいいのう! 毒味でほじくり返された魚を食すのも好かんのじゃ、魚も毒味できるかの?」
「出来ますわ。 ライオットさん、その魔道具に細い棒が折り畳まれているから出して頂けるかしら?」
ライオットさんが魔道具から棒を出したらアイスピックみたいな形になった。
「この細い棒を刺せばどんなものでも毒味が出来ますわ。 毒を検出したら持ち手部分が赤く光り、逆に毒が無ければ青く光ります」
「おお! 早速試そうぞ! ライオット、何か毒入の食事を持ってこさせるのじゃ!」
「……私からの話だけでは料理人も毒入りの食事を作れないでしょう。 ひとつ間違えば首が飛びます。 大変恐れ入りますが姫様から念話して頂いても?」
「お、おお……そうじゃな、悪かった。 しばし待て」
「私はベルラに料理を持って来させます」
お姫様とライオットさんの念話が終わるのを待つ。
「その間に、この魔道具の説明書と登録されている毒のリスト、あと毒物のサンプルをお渡ししますわ」
メイリアさんが書類と薬包や小瓶に入った毒をテーブルに広げた……毒だけで100種類以上ある。 メイリアさんどんだけ毒を集めてたの⁉
「……リストに無い人界の毒欲しい……追加で登録する…」
メイリアさんはニヤニヤしてる、自分用にも新しい毒が欲しいんだね!
「ふむ、専門家にリストを見せておく。
しかし姫様、この魔道具を実際に使うまでには時間がかかりますよ? 万が一の事を考えて、国でこの魔道具の精度を確認しなければなりません」
「な、なんじゃと⁉」
「それも承知しておりますわ。 ただこの贈り物の目的は別にありますの」
「む? どういう事じゃ?」
「魔族からの贈り物が攻撃性の無いものであるという事が重要なのです。
オルガ国が、魔族から殺傷能力の無い物、むしろ身を守るための物を贈り物として受け取ったならば他国から警戒されませんわ」
「……つまり国の軍事力強化のための交流ではないとアピールするための飾りという事じゃな?」
「さようでございます。 あとは……隠れ住んでいたドワーフと獣人を、オルガで魔族が勝手に保護している。 だけれども、万が一に備えてオルガ国としても彼らを保護するために魔族の監視をしている。 ……とでもすれば体裁は整えられるのではないかしら?」
「なるほどの……ドワーフ達の希少性を盾に使い、国としては魔族に気を許している訳では無いと言う事もアピールするのじゃな。
……ふむ、他国からの警戒を解くという点ではまぁいいじゃろう。 しかしそれだけでは魔族を街に入れる理由が無いのう……」
なんかよく分からないけど魔族との交流はオッケーが出たみたいだ! あとは街中に入れるかどうかかぁ……。
「ここに魔界で魔王様が開いた酒場の帳簿の写しをまとめた物がございます。 それに加えて、酒場に付随して街の経済活動がどれだけ活発になるかもまとめております。
あとはディアブロ、ダンジョン経営の帳簿の写しと、私達魔族やドワーフ、獣人による経済活動の予測値の資料もお渡し致しますわ。
よろしければ今、ワコフさんに見て頂いても?」
「やっと私の出番ですな! 毒味の魔道具も早く取り扱いたいところですが、まずはこちらを拝見しましょう!」
ワコフさんの帳簿を持つ手が震えている……。
「たったひとつの酒場でこれだけの利益ですと⁉ 普通の酒場の10倍は軽く超えてますぞ⁉」
あ、うん。 そういえば市場の10倍、プラス30パーセントの価格設定だもんね、決戦日は大金貨も動くし。 忘れてたよ。
冒険者ギルドマスターのグレイム、商業ギルドマスターのワコフの自己紹介は、22話「ルル……恐ろしい子……!」に移動しました。




