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ノエルくん 前編

前後編、前編。

 街を歩きディメンションのお店が見えてくると、ノエルさんの顔には驚きと期待に満ちた人間らしい表情が戻り、店内へ入るとさらにそれは高揚による輝きを増した。


「……すごい! キラキラしてる……夢の世界みたいだ……」

「フフン! かけた金とセンスが違うからな! 特別にVIPに座らせてやる!」


 私達はVIPの白いヒュドラ革ソファに着席した。ノエルさんはソファのボヨンボヨンとした弾力性に驚いているようだ。

 そして魔王様が改めてノエルさんの処遇をお話しし始める。

 

「さて、春になったらお前にゴンゾの借金分の金を渡す。それをゴンゾに渡そうがお前が貯めこんでおくかは自由だ」

「ブノワ商会に返済します。父さんに手切れ金をくれてやります」


 ノエルさんが即答した。


「おぉ……。まぁそうなるわな。……なんか悪かったな、俺がチャチャ入れなきゃオッサンの嫌な部分なんて見なくて済んだろうによ」


 ええっ! 魔王様が人族に謝るなんて前代未聞ではっ⁉

 でも元はといえば私がパクり店を潰しちゃったことが原因で……あああっ! 私のせいで魔王様が人族に謝罪を! ごめんなさい魔王様、そしてノエルさんも!


「いえ、父さんの性根は昔から分かり切っていた事です。父さんに期待する事はもう諦めました」

「……ノエルにとっては俺の下で働くより借金奴隷の方がマシだったんじゃないか?」

「いえ実は……オレ達、あ、父さんの店のナイトです。は、みんなネフィスと友達で……。だから魔王……様の下で働くのは怖いけど、稼げるってのは知ってました」


 えええ⁉ ネフィスさんとお友達だったの⁉


「ほう……世間は狭いな。あと俺の事は代表かエグゼクティブエンペラーって呼べ」

「? ……はい。それで、ネフィスはずっとヒモをやってて、それをオレらは心の中でバカにしてました。でも、ここで働き始めたネフィスからどれだけ稼いでるか聞いて……正直、羨ましかったです」


 ネフィスさぁん……ヒモだったのぉ⁉ でもすっごい納得!


「ふ~ん。ならウチの店で働きゃよかったじゃねぇか」

「父さんが魔王……代表には関わりたくないと……親に迷惑かけるなって……」

「あー、あのオッサンやたら俺を怖がってるよな! 気持ちは分からんでもないけどよぉ」


 魔王様が不必要に脅すからだようっ!


「結局ブノワ商会のせいで代表に盾突く事になりましたけど……」

「気にしてないぜ! それでゴンゾの借金の清算が終わったらよ、俺達魔族は他国でホスクラを開く! そのためには人族の協力者がいると助かるんだ。もちろん使い捨てはしないぜ? 人材の教育には金と時間がかかるからな、元は取る。んで立て替えた金も毎月可能な範囲で返済してもらう、利息は無しだ。でも契約の履行(りこう)は春な。それまでは好きにしてろ」


 真剣な顔で魔王様のお話を聞いていたノエルさんがキュッと口を引き結び、こう言った。


「春までこのお店で働かせてくれませんか? もう父さんとは話したくないです」


 えっ⁉ そ、そんなにゴンゾさんの事嫌いなのっ⁉ 確かにダメダメな人っぽいけど……。


「……つってもよぉ、結局自分ん家に帰んだろ? 春までにオッサンとちゃんと話し合えよ。今お前は冷静じゃない、頭を冷やせ」

「……分かりました」

「ニーナ、ノエル送って行け」

「ぎゃぴ⁉ わ、私ですか⁉」


 いいから行けと命令され、私はノエルさんを送って行くことになった……。

 普通、男性が女性を送って行くものじゃない⁉ なんの意図が……っ!




 ディメンションを出て、曇り空の下をぽてぽてと歩き始めたらノエルさんが話しかけてきた。


「ネフィスやバレットさんが言ってた通り、魔王って先駆(せんく)的な人ですね」

「……! ノエルさんっ! あなたは人を見る目がありますっ! そうです! 魔王様は魔界で数えきれないほどの魔界改造計画をですね! 法整備をしたり新しい施設を作ったり、経済成長も目覚ましく! とにかくすごいお方なんですっ!」


 ハッ⁉ しまった! ノエルさんがポカンとしてる! 魔王様のお話で興奮してしまった!


「……ははは! 昔人界に攻めてきた魔王と同一人物とは思えないね」

「そっ! それは魔王様のご意思ではなく一部の魔族がはやし立ててですね! 魔王様はいじわるだけど……本当はとってもお優しいです」

「ふーん。そういえばなんでいつもニーナさんが来るの? 悪い意味じゃなくて。父さんの担当みたいなのに任命されたの?」

「えっ⁉ えっとそれは……なぜでしょう? いつも便利だからと言われてますけどへっぽことも言われます……」

「へっぽこ……でも仲が良さそうだね」

「あ! それは魔王様の拾い子だからです。私は赤ちゃんの時に魔王様に拾われたおかげでいつもお側にいられるので、役得なんですよ!」


 どうだ羨ましいだろ! とちょっと胸を張ってみた。ふふふ……。


「拾われた……」


 あっ、ノエルさんの同情を誘ってしまった!


「でもでも、魔王軍エリートのお父さんお母さんに育てられたので、とっても裕福な暮らしをさせてもらってます! 家族みんな優しいので魔王様に拾われてよかったです! 魔王様は『俺が拾ったんだから俺の娘だ!』なんて言ってですね、実は私の事を羨ましがっている魔族はたくさんいるんですよ!」

「……義理の親でも幸せという事なんだね。本当の両親の事は知らない、の?」


 ──それは聞かないでようぅっ!




(∩´∀`)∩明けましておめでとうございます!本年もどうぞよろしくお願いいたします!

1/4(火)はお休みします。

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