表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
254/285

意外な事実

 カリンさん祭り終了……?

 ……えええーーー⁉ 早い! 早すぎるようっ!


「ま、魔王様ぁ……もっと最初の祭りみたいに、高度な心理戦とか、心の葛藤とか、そういうプロセスは無いんですかっ⁉ 勢いで終わったんですけどっ⁉」

「あー……うん。ぶっちゃけノリだけでどうにかなっちまう事は……ある。っていうかよくある」

「なぜですかっ⁉」

「はい! ディメンションが楽しいからだよ!」


 ぴし! と挙手したアーニャを魔王様がチラリと見た。


「まぁ……そういう事だ、ここは遊ぶ場所だからな」

「えぇ……えぇ……」

「カリンも自分なりに色々と心の葛藤があったんだろ。でも(はた)から見ればくだらなかったりするんだよなー! カリンは結局、自分とルフランが人生の主人公だと思いたいだけだ。それを無意識に自作自演してる事に気付いていない。まぁおめでたいヤツだな。俺は人間味があって好きだけど」

「つ、つまり……カリンさんはスポットライトを浴びるために、ディメンションという舞台に一人立ち続けているだけ……って事ですか……?」

「そういうこった! ルフランを信じるとか信じないとか言ってたけどよぉ、そもそもナイトなんて信じられないのが普通だ。それを何とか信じたいっつー気持ちで、カリンは一人心の中でどうにか信じられる理由を見つけるっきゃなかったんだな」

「それで『自分を信じる』と……」

「客の中で勝手に結論付けてもらうしかねぇんだよ。それをうまく誘導するのがナイトの仕事だ!」


 えぇ……。カリンさんはそうやって自分の心の中をかき回す事が楽しい……の? よくわかんないよぅ!


「あはは! ルフランくんとカリンちゃんはこういう事を延々続けるんだね! どころでさー、こんなに早く終わるなら私達がライバル店に偵察行った意味無かったね! ニーナがややこしくしただけだったね!」


 ひぃ! アーニャ! 余計な事をっ⁉

 ……魔王様がジロリと私を見てるっ⁉


「……くっそぉ……ほっといてもカリン祭り終わってたな! ゴンゾが俺の話を受けたいっつっても今更いらねぇ……もう無かったことにしよっかなー!」


 あああっ! 魔王様が投げやりだっ!

 でもゴンゾさんは助かったかも⁉ あ、いや、元々ゴンゾさんは詰んでるんだった! どうなるの⁉ ゴンゾさん!


 するとルルさんがシャッとバックヤードのカーテンを開けて入って来た。どうやらお店が混んできたのでチェックしたらしい。


「あっ、ルルさん! カリンちゃん祭り終わっちゃったねー」


 カリンさん祭り運営委員のアーニャが口を尖らせながらも楽しそうに話しかけた。


「そうね、見ていたわ」

「魔王様の言う通りウチに帰って来たね! やっぱ魔法もホスクラもノリが大事だよね!」


 アーニャの謎理論。


「ま、魔法はノリじゃないよぅ……」

「……いえ、アーニャちゃんの言う事は一理あるわ」

「え……どういうことですか?」


 異論を唱えた私に、ルルさんが真面目な顔で話し始めた。


「詠唱と魔術式、どちらも魔法を正しく発動させる、もしくは効果を高めるために用いるものだけれど、声に出して詠唱した方が強くて柔軟性があるのは知っているかしら?」

「……あ! 確かに、魔術式に魔力を込めても一定以上強くなりません!」

「詠唱した方がいっぱい魔力込められるよね!」

「そうよ。その理由は、魔術式だと最大出力値が設定されているからっていう事もあるんだけれど……」

「ノリノリで魔法放つとスッゴイおっきくなるよね!」


 え、いや……そこは込める魔力量を自分で調整できるからでは?


「そう、言ってしまえば『ノリ』や『火事場の馬鹿力』なの。鬼気迫った状況で実力以上の力を発揮できた事案など、これ以外に説明がつかないわ。アーニャちゃんがデタラメな詠唱で聖属性魔法を発動出来たのも証拠ね」

「そうなんだ! 魔法を作るコツはノリだったんだね!」


 ええ⁉ 真面目なルルさんが言うって事は本当なのっ⁉

 でも確かにアーニャはノリノリの厨二詠唱で聖属性を発現できたり、冥府の〈闇爆炎(あんばくえん)〉とか赤く光る魔眼演出とかオリジナルデタラメ魔法をいくつか作ってる……。


「ぶはははは! そういや俺様が教えたエタフォもノリで作った魔法だ! ホスクラも魔法も気合いでどうにかなんだよ!」


 ずっと黙って私達の話を聞いていた魔王様が急に笑い出した!


「……えええええーーー⁉ 究極魔法エタフォは門外不出の秘技だって、魔王様言ってましたよねっ⁉ だから使用許可が無いと……」

「ウソに決まってんだろ!」


 ええっ⁉ エタフォも魔王様の厨二病で作られたのっ⁉


「つーかニーナ、エタフォの詠唱恥ずかしがってんだろ⁉ お前はまだ真にエタフォを使いこなせてない! 修業が必要だな!」

「……魔王様、全詠唱しても恥ずかしがっていたらダメなのですか……?」

「そうだ! もっとアーニャみたいにカッコイイポーズでノリノリでやらないとダメだぞ⁉ 頑張れよ!」

「……ブフォ! ニーナ! カッコイイポーズなら任せて!」

「アーニャの真似をするのはやだようっ!」

「うふふ……」


 でも……カッコイイポーズをしていないから、私は魔王様より授かりしエタフォを使いこなせていないの⁉ なんという不覚!

 しかしアーニャみたいなポーズは……。……くっ! 背に腹は代えられない! ……でもいやぁあ!


 私がずっと心の葛藤をしているうちに、この日の営業は平和に終了した。




 そして翌日。

 午前中、アーニャにみっちりと「はみゅはみゅ語講座」と「カッコイイポーズ講座」を受講させられた私はダイニングに突っ伏していた。

 今日最後に行った実技演習……。はみゅりながら左脚だけで立ち、腕を十字にクロスさせ、さらにウィンクした顔をピースサインで横切らせる動作などなど……。

 くっ! なんという屈辱! 恥ずかしい以外のなにものでもないっ! 全っ然、ノリノリになれないようっ! これ意味あるの⁉


 涙でじんわりと滲む視界の端にはラウンツさんのフリフリハートエプロンがぼうっと見え、お昼ご飯のいい匂いがする……。


「ニーナ! 商業ギルドへ行くぞ!」

「はみゅっ⁉ まっままま、魔王様、なぜ商業ギルドへ⁉」


 魔王様がメイリアさんと魔界から帰って来た!


「ゴンゾをハメるために決まってんだろ! 行くぞ!」


 ……あああっ! 魔王様、やっぱりゴンゾさんをハメる気満々じゃんかぁーーー!




何をしようとニーナが恥ずかしがっているうちは効果が弱いのです。でもニーナには無理w

12/28(火)、29(水)はお休みしますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ