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ハシゴ

 今日は三週目四日。


 メイリアさんは魔界のキキュー育成を頑張っているらしく、ディメンションの方はずっとお休みしてる。結局お店に出たのは「破壊の乙女戦」の翌日だけだった。

 ……そういえばメイリアさん、一ヶ月で魔界とオルガのキキューを成長させたいって言ってたけど……もうすぐその一ヶ月が終わる。だから焦ってるのかな? 大丈夫かな。


 ともかくアーニャとバックヤードへ待機する。ルルさんは何だかんだお客さんとしてホールにいる方が楽らしい。


「ねぇアーニャ、ゴンゾさんどうするんだろうね?」

「ん~、それさ、そもそも魔王様なら単純に『パクった詫びに俺の下で働け』って持ちかけるだけでイケそうじゃな~い?」

「え? それは……魔王様が直接関わる話になると、ゴンゾさんが怖がるから断ってくるって事じゃなかったっけ?」

「でも結果は同じだよね? 怖がるも何もなくない?」


 ……確かに。


「それより息子のノエルくん、あの儚げな雰囲気は磨けば光るって私の魔眼が言ってるよ!」


 ゴンゾさんの息子、気弱そうな黒髪の青年ノエルさん……。アーニャのイケメン大辞典で引くと「儚い系男子」に属するらしい。


「あ、ニーナ、今日カリンちゃんが来る方に賭ける? 私は来ない方に賭けるよ!」


 アーニャは新たな遊びを見つけたようだ。


「……私も来ないでほしいから賭けにならないよ」

「おはよう! 今日カリンがライバル店へ行くらしいぞー!」

「ぎゃぴっ⁉ お、おはようございます……」


 魔王様が転移でいらっしゃった! 急に背後に立つのやめてよぉ!


「魔王様おはよ! 今日は遅かったね!」

「バレットとライバル店に行ってた」


 ハッ⁉ バレットさん、そういえば今日いなかった。……どんなお話をしたんだろう。

 魔王様はバックヤードの椅子にドカッと座り、その長さを見せつけるように脚を組んだ。


「何しに行ったのー?」

「まぁちょっと、な。んでバレットは俺様の事を上手く言ってくれたみたいだけどよぉ、どうもあのオッサンが怖がって仕方ねぇ」


 魔王様……昨日あれだけ恐ろしい計画を立てておきながら、自覚が無いの?


「魔王様から見てナイトくんはどうだったー?」

「あっちの若造? そもそも興味ねぇ。まぁしいて言うなら、バレットのおかげか最後の方はあんま怖がってなかったな、俺の事」

「今度はこっちが引き抜こうよ!」


 アーニャはディメンションにイケメンを増やしたいだけだ。


「うんにゃ。カリン祭りのためにあの店が営業してないと困る」

「あっ、そうだった! さっき今日カリンちゃんが行くって言ってたね!」

「おう。あ、カテリーナが来たぞ。見事に育ってきたな~!」


 アレンさん指名の貴族、カテリーナさんのご来店だ。最近羽振りがいいみたい。


「今日もお仕事頑張ろうね、ニーナ! じゃあ集え、鎮魂歌(レクイエム)──」


 私も集音魔法を発動しようとしたら魔王様に脇腹をつつかれた!


「ぎゃみゅっ!」

「ニーナ、あの店はボーイズバーに変えるから安心しろ」

「……え? ボーイズバーとは……」

「ただの酒場だ。イケメンがいるって事以外はな」


 魔王様はいつもの挑発的な笑みを浮かべると、私の頭をくしゃくしゃっと撫でてくださった。


 ……ホストクラブから酒場に戻すって事? ……私がホストクラブのイメージを崩されたくないって思ってるから?

 ……魔王様、私のために……。


「よし! 早速カテリーナにV.S.O.Pだ! いいぞアレン!」

「10万だからコールだね! いっくよ~!」


 そして今日も営業が始まる。




 いつもの平和な日常が戻り、ボケッと売上表を見ていたその時。


「「「おかえりなさいませプリンセス‼」」」

「ただいま……」


 お客様には珍しくボソッと疲れた声がした。


「あっ! カリンちゃんが来たよニーナ! 今日の賭けも負けたよ!」


 えっ⁉ カリンさんっ⁉ こんなに早く⁉

 思わずアーニャと一緒にフロアを覗く!


「あっ、ラウンツさーーーん! やっぱディメンション最高ーーー!」

「アラッ⁉ カリンちゃんおかえりっ☆」

「ちょっと聞いてよ!」

「何かしらっ⁉ ルフランくんが来るまで聞かせてちょうだいっ☆」


 カリンさんはラウンツさんの腕をバシバシと叩きながら席に案内された。

 ラウンツさんと視線を合わせたまま受け取ったおしぼりで手を拭き、使用済みおしぼりの受け渡しをする所作は常連そのものだ。


「とりまシェッガ白! でね⁉ 聞いてよラウンツさん!」


 ──キュッ……ポンッ!


 カリンさんが座りながらオーダーを入れ、ラウンツさんが三角に畳んだおしぼりを卓へ置いたその瞬間、お兄ちゃんが予期していたかのように白ワインのボトルを卓へ置くと、すかさずラウンツさんが亜空間からグラスを取り出しワインを開けた。

 ……おかえりなさいませから乾杯まで二十秒しかかかっていない。


「あーカリンー! 会いたかったー!」


 すぐさまやって来たルフランさんが、いつもよりふにゃっとした笑顔でカリンさんに抱き着いた!


「きゃっ⁉ ……あ! ルフラン聞いて⁉ 偵察行ったけどさー、何あれ! ただの酒場じゃん!」

「え? ホスクラだろ?」

「あんなのホスクラなんて言わない! これっっっぽっちも! キラキラしてなかった! なんで私がただのパンピーにお金使わなきゃいけないワケッ⁉ ソッコー帰ってきたよ!」

「そっかそっか、おかえりカリン!」

「カリンちゃんおかえりっ☆」

「ただいま! やっぱり私のホームはココだね!」


 ……カリンさん……本当にライバル店へ行ったその足でうちへ帰ってきた……。

 ルフランさんはニヤニヤが止まらない。


「むしろカリンが帰ってきてこそのディメンションだからな!」

「三日もガマンしたとかありえない! 三日分飲むよ⁉ ラウンツさんモエリ白!」

「さっすがカリンちゃんネッ☆ 素敵な素敵な姫からモエリ白頂きましたぁー!」

「「「アザーッス!」」」

「それでねルフラン、よく考えたんだけど!」

「ん?」

「……私はルフランをまだ信じられない。でも私自身なら信じられる。……つまり、ルフランに私の人生全部BETする! その私を、私は信じるっ!」

「……カリンッ!」


 ……カリンさんは自分の中で何かを決心したようだ。

 そしてルフランさんは「なんかよく分かんねぇけど……オッケー!」って感じの間の後、カリンさんを思いっきり抱きしめた。


「ハッピーエンドだね魔王様!」

「お、おう……アッサリ終わったな……」


 アーニャのハッピーエンド宣言により、今回のカリンさん祭りは終息した。


 ……えええーーー⁉ 早い! 早すぎるようっ! ほぼ「魔王様の予想その2」通りなんだけどっ⁉

 カリンさん祭りのためにゴンゾさんのお店を潰さないようにするとか、色々魔王様がお考えだったのに……っ!




カリンちゃんはオリヴィアママの「男は信じちゃいけないよ。自分を信じな」が効いた模様。('A`)エェ……。

12/26(日)はお休みします(∩´ω`∩)


ラウンツ「みんなっ! Happy X’masよぉっ☆ 夢で会いましょっ♡」

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