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威圧偵察さくせん

お待たせしました(∩´ω`∩)

 明日早速ライバル店への威圧偵察に行こうという事で魔王様とルルさんとのお話は終わった。


 ライバル店の名前は「恋騎士俱楽部~花乙女~」といい、陽が落ちた頃に開店するらしい。

 魔王様いわく「こういう()()()の店名の店はすぐ潰れる」というジンクスがあるんだって。……どういう法則なんだろ?

 でも潰れるなら大歓迎だ。しかもこちらには「破壊の乙女」がいる。負ける気がしない。

 この威圧偵察で色々と私の名誉を挽回するぞ!


「そういやニーナ、製本は進んでるか? そろそろ印刷が出来上がるだろ?」


 魔王様のお言葉にヒヤリとする! ……やばい、ナイトさんの姿絵本、忘れてたっ!


「も、ももっもちろんです!」

「楽しみだなー!」


 印刷の納期は明日だから、明日の偵察の前に印刷屋さんと製本所に行こう……。


 さぁ、予定も固まったし、気合いを入れて出勤だ!

 今日もおしぼりをクルクルして、開店したらルルさんと共にバックヤードへ待機。

 そしてアーニャにも人族の許すまじパクりを報告する。


「えーっ! ライバル店なんて出来たの⁉ 私達はあんまお店の外に出ないから気付かなかったよ! 魔王様、私も偵察に行きたい!」

「そう言うと思ったぜ、好きにしろ。暴れるなよ? ルルの言う事聞けよ?」

「オッケーだよ!」


 ふっふっふ……これでアーニャが加わったから戦闘面は安心だ! 頭脳派のルルさん、魔法担当の私と、バランスはバッチリ!


「ククク……アーニャ、人族を血祭りにあげるのが楽しみだね!」

「私は普通にイケメンを見たいよ! まだ『破壊の乙女』のリハビリが必要なんだよ!」

「いやアーニャはいざという時に冥府の〈闇爆炎〉を!」

「ニーナちゃん、攻撃しちゃダメよ?」


 ルルさんにニッコリと言われた。……くっ! そうだった! ()()()だけだけど頑張るぞ。




 そしてこの日はカリンさんもはみゅエルさんも来店せず平和に営業が終了した。

 お水を飲みにバックヤードへ来たルフランさんにアーニャが話しかける。


「あっ! ねぇねぇルフランくん! ライバル店に移るのー?」


 ぎゃぴっ! アーニャ、なんて聞きにくいことをっ⁉ ……でも実は私もナイトさんが辞めないか心配だ。せっかく配下にしたのに!


「え? ああ、辞めないから安心して」


 ルフランさんはサラリとそう言ってフロアの片付けへ戻ってしまった。


「ルフランくん稼いでるから辞めるわけないよね! 魔王様?」


 アーニャは心配してないみたいだけど……ナイトさんが魔王様の前で「辞める」なんて言えないよぉ……。


「ナンバー陣は大丈夫だろうな。でもうーん……もしかしたら飛ぶ奴が出るかもしれない。偵察の結果次第では新しいナイトを増やした方がいいかもな」


 魔王様に「飛ぶ」とは何かとお聞きした。つまり「辞めます」って言っても魔王様に辞めさせてもらえないと思い込んで、何も言わずに行方をくらましてしまう事だそうだ。


 ……魔王様のお店を辞めるなどと言う者は不敬罪だ! 絶対辞めさせないぞ⁉


「ニーナ、よからぬことを考えるなよ? ナイト達が怖がる。あと、俺は辞めたいやつがいても引き止めない。そういうやつに無理矢理働かせても店の空気が悪くなるからな」


 ギクゥ! 魔王様にクギを刺された! 後ろのキッチンにはジルさんもいるんだった……。


「そっ、そうですね! 魔王様に付いて行く覚悟のある者だけでいいです!」

「……俺魔王だし。ナイトがこの店を好きならそれでいいよ」


 めずらしく魔王様が弱気だ。どうしたんだろう? 開店前は自信満々だったのに。

 ……私もなんだかすごく心配になってきた。本当にライバル店が出来て「いい事」ってあるの……?




──────────────


 今日はついに威圧偵察の日だ!

 しかしその前にブブゼさんの所へ行き、製本用の姿絵と奥付、百冊分を受け取る。

 次はベロニカさんの所だ。


「おはようございます。ベロニカさんいらっしゃいます──」

「おはようニーナちゃん! 出来たのねっ⁉」


 ダダダッとものすごい勢いでベロニカさんが奥から出てきたっ!


「は、はい……お渡しします」

「奥に来てちょうだい!」


 製本所に入らせてもらい、奥の部屋で姿絵を納品した。

 ベロニカさんが食い入るように一枚一枚見てる……そして多分、今じっと見つめているのはバレットさんのだ。


「……ふう、ご馳走さま。じゃなかったわ。本当に木の表紙でいいのかしら? 今新しい革の表紙が──」

「あ、あの、大丈夫です。薄い本なので。装丁(そうてい)は安くって魔王様が……」

「そうだったわ……くっ!」


 するとベロニカさん用の一冊は特別装丁の提案が来た。柄付きの革表紙で角に金具まで付けたいらしい。……もう好きにしたらいいと思うよ。

 魔王様に念話で金額の相談をし、ベロニカさん用の姿絵を三万ディルで販売した。

 ……製本される前になぜか本が売れてる。


 そして製本代をお支払いし、納期は一週間後と約束をしてディメンションへ帰った。




「あっ! ニーナおかえり! どう? プリンセスっぽい⁉」


 ……アーニャが水色のドレスみたいなロングワンピースを着てダイニングにいた。くるりと回ってスカートをふわっふわっさせてる。髪まで丁寧に編み上げて……ルルさんがやってくれたんだな。


「アーニャ、もしかして戦いはもうすでに……」

「始まってるよ!」


 やっぱりフローラさんに似てる! 馬車まで手配してそうだ。


「アーニャ、そんなに気合い入れてどうすんだよ……」


 お兄ちゃんはまだ見ぬパクりナイトに嫉妬しているらしい。


「アーニャちゃん可愛いわぁっ☆」

「パウリーさん、流石の見立てね」


 ラウンツさんとルルさんはうんうんと頷いている。午前中にみんなで仕立て屋パウリーへ買いに行ったのかな?

 「ニーナちゃんの服も買いに行きましょう、髪を結いましょう」とルルさんに誘われたけど丁重にお断りする。戦いには着慣れた普段着が一番だ!


 そして魔王様とメイリアさんが魔界から帰ってきたので、一週間後に姿絵本が出来上がる事をみんなに報告し、本屋のボンドさんに納品日の念話をした。

 よし、これで心置きなくパクり店へ()()()に行けるぞ!


「じゃあ私とニーナちゃんはムーバーイーツへ行って、時間になったら『恋騎士俱楽部~花乙女~』へ行きましょう」


 ルルさん、そのパクり店の店名を口にするの恥ずかしくないのかな? まぁいいや。




 ムーバーイーツが終わり、ディメンションに出勤のためみんなで一階へ下りる。


 すぐにバレットさんやナイトさん達が出勤して来て、みんなアーニャの服を褒めていた。


「まるで水の精霊セインディーネのように美しいですね、本日の姫も是非おもてなしさせて頂きたい」

「もうっ! バレットさん上手いんだからー! まぁ気が向いたらまた遊ぶよ!」

「はっはっは! 楽しみです!」


 ……バレットさん恐ろしい! アーニャまでお客にしようとしてる! アーニャは持ち上げられてまんざらでもなさそうだ。でも私は二度とボッタくられないぞ!


 そしてディメンションが開店し、しばらくバックヤードで待機。

 ()()()の言葉を一生懸命考える。


 どうしたら怖いかな……あ! そうだ、クラリゼッタさんを参考にしよう! 「あら? ナイトの教育がなってないのでなくって? オホホ!」とか「わたくしのお酒が飲めないのかしら? オホホ!」とか?

 ふふふ……いいぞいいぞ! クラリゼッタさんっ! あなたのイビりは最高でした!

 あの胃が痛む毎日は無駄じゃなかった! この日のためにあったんだ!


「ニーナちゃん、アーニャちゃん、そろそろ行きましょうか」


 ルルさんの声でスッと立ち上がり、アーニャとアイコンタクトを取る。

 さぁ、出陣だ!




店名が漢字のホスクラはすぐ潰れるというジンクスは本当にありました。〇本店は特別。

この世界に漢字はありませんが、魔王様は名詞の羅列で何となく察知した模様。


次回、「いあつていさつ」

明日12/12(日)も更新します!

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