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計画通り

ルフラン視点 → ニーナ視点。

「アレン、カリン帰ったぞ」


 カチャ……。

 アレンの部屋に向かって声をかけた途端、ドアからアレンが顔を覗かせた。


「おまっ! ずっとドアの前にいたのか⁉」

「さすがにこっちまでは会話が聞こえなかったよ、残念」

「あっ! おにいちゃん! おねえちゃんにないしょしたよ!」


 チビ二人がダダダッとアレンに駆け寄ってきた。


「おにいちゃんいるのね、ないしょ! だいせいこー!」

「ないしょごっこたのしかった!」

「僕も楽しかったよ、二人ともご褒美だ!」

「「わーい! おかしー!」」


 アレンとチビがはしゃぎながらリビングへ向かう。

 はぁ……。アレンだけ外に出すのも悪いと思って隠れてもらったけど……やっぱりアレンは楽しんでた! くそー!




 リビングでチビ達と菓子を頬張る。もちろん茶を入れるのはアレンの役目だ。


「るふらんおへやでなにしたのー?」

「ちゅーした⁉」


 チビが口の周りにクリームを付けながら聞いてきた。クリームのかかった菓子が食えるようになるなんて、ホントいい兄を持ったなお前ら。


「カリンとはただの友達だからそういう事しねぇよ」

「えー!」

「じゃあこいものがたりごっこ?」

「それは……違ぇよ」


 ガキの遊びでそういうのあるけど! 意味は違うけど当たってんだよな!


「さて、何を話したのか教えてほしいな! アドバイスした僕は聞く権利があるよね?」


 アレンがいそいそと茶を配り終え、ソファに座った。


「あー……多分カリンは元通りになる」

「なんやかんや一周回ったのかな?」

「そういう感じ。俺が仕事辞めていいって言った」

「うんうん、それで? カリンちゃんは今さら普通の仕事に戻れないって?」

「おう……俺達の予想通りだ」

「でもその後どうやって話を持って行ったの? ルフランも悩んでたよね? それでお店に呼んでも結局『口だけだ』って言われるって」

「……半分将来を約束した」


 するとアレンの笑みが深まった。


「結婚営業だね!」

「そこまで言ってねぇ! ……とりあえずうやむやにするのは上手くいった」

「えげつないなぁ」

「るふらんけっこんするのー?」

「るぅらんけっこんしちゃらめ!」


 あーもうチビまで騒ぎだした。


「うるせぇ、俺は夢を見せただけだ。最後にライバル店の偵察に行けって言っといたから、全部俺らの計画通りだろ」

「ライバル店ね。カリンちゃんがそっちに流れないといいね。それにしても……魔王の金のなる木(僕たち)を引き抜こうだなんて命知らずだよね」

「そのくせディメンションを辞めるのは俺達の責任、店を移るのも俺達の責任でよろしくだもんな。俺らを舐めすぎだろ。あーもう疲れた! 何も考えたくねぇ! 風呂!」


 立ち上がり風呂場へ向かう。そろそろ出勤の準備だ。

 ……あとはとりあえず他の客と初回を頑張るか。





──────────────


 ああ! 昨日はカリンさん祭りと私のもらい事故で大変だったよぅ! 人族にフラれるとはなんという屈辱! この汚名はいつか晴らさねば!


 そんな決心を胸に抱き昼食を食べ終える。

 魔界に行っているメイリアさん以外のみんなは、ムーバーイーツに備えそのままダイニングで待機した。


 しかし魔王様がメイリアさんと帰って来ると、今日からムーバーイーツメンバーは私とルルさんと魔王様だけでいいとのお話だった。

 どうやら一つの町に配る食糧の量が把握できたので、魔王様が食糧を準備するオルガ側に仕分けまで依頼していたらしい。メッセージを挟む作業はすでに廃止済だ。だから亜空間の大きい私とルルさんが倉庫代わりになって魔王様の転移だけで終わるとの事。


 ……魔王様、いつのまに仕事効率化を! 配下である私が気付くべきだったのに!

 くっ……! なんとか挽回を! ……あっ! そうだ!


 魔族っぽくとっても悪い笑みを浮かべ、魔王様へ名案をお伝えする。


「魔王様魔王様、そういえばアレイルへの輸送代金ってどうなってるんですか? ここはちょっと吹っ掛けてガッポリ儲けましょう!」


 すると魔王様は呆れた顔で私を見下ろした。


「はぁ……そんなの会談の際、とっくに交渉済だ。輸送費はタダ、その代わりホストクラブ出店に協力する事! どうだ、かなりいい条件を付けただろ?」

「えっ⁉ タダ働きですかっ⁉ どこがいい条件なんですかっ⁉ 魔王様はアレイル国王に何か弱みを握られているので⁉ くっ……卑劣な人族めっ! 魔王様、悩みがあるなら私達に仰ってください!」

「うん、ニーナならそう言うと思ったぜ」


 魔王様は人差し指をピンと立て、得意げにこう続ける。


「『ホスクラ出店に協力する』なんてフワッとした条件、期限も縛りも無いんだぞ? つまり! 実質アレイルは永遠に俺様の思い通り! 計画通りだ! フハハハハ!」

「な……なんですとーーー⁉ さすが魔王様っ! すでにアレイルを支配下に! 素晴らしいです!」


 みんなでパチパチ魔王様に拍手を送るとルルさんからストップが入った。


「みんな魔王様に遊ばれているわよ。あのね、条件を詰めていないという事は、アレイルがなんやかんや理由を付けて断れるとも言えるわ。つまり、お互いの信頼関係で結ばれているだけの約束ね。しかも有効期限は魔王様がお元気なうちまでよ」

「え……嘘……。魔王様……ま、まさか契約書も作成してないとか無いですよね⁉ いつも口約束だけは信用するなって──」

「口約束だ! ははは!」


 ま……魔王様のへっぽこーーー! なぜそんな凡ミスをっ⁉


「契約書ってのは信用してないやつ相手に作るもんだ。そしてタダより怖いもんは無い。だからこれでいいんだよ。よし、じゃあ今日からルルとニーナだけで行くから他は解散!」




 魔王様の有無を言わさぬお言葉でその場は終わり、私とルルさんはムーバーイーツのため魔王様に転移させられた。


 う~ん、あの守銭奴の魔王様が口約束……アレイル国王も心で支配下に置くための作戦だったのかな?

 でも結局私達はタダ働きで、しかも魔王様が約束を取り付けたのってホストクラブの事だけだよね? 手っ取り早く隷属国にしちゃえばいいのに……。

 あ! それだと人族からの反発が凄いからやっぱり水面下で事を進める計画で⁉ ……なるほど! さすが魔王様です!

 あ、いや、やっぱり魔王様ってホストクラブ出店の事しか考えてないんじゃ……。もしかしてだけど魔王様のノリなら有り得る……。

 まぁいいや! 忠実な配下の私は魔王様に付いて行くまでだ! きっと私では辿り着けない高度な心理戦なのだ!


「ニーナ、さっきから百面相してるとこ悪ィけどよ、食糧を亜空間にしまってくんね?」


 ハッ⁉ 考え事してたらもうオルガの商会にいた!


 急いで食糧を受け取りアレイルへ転移して、今日のムーバーイーツは一時間で速攻終わった。

 最初の頃は昼から夕方までかかってたのに……魔王様が有能すぎる……。




 ディメンション二階のダイニングへ戻るとルルさんがお茶を入れてくれた。

 そして魔王様とルルさんと三人でテーブルを囲む。魔王様は椅子をギコギコ前後に揺らしながらご機嫌だ。


「さて、ムーバーイーツも簡略化したし、これでディメンションに復帰できるなー!」


 ハッ! ディメンション! カリンさん祭りの最中だった! どどど、どうなるんだろう……。


「ルル、まだ客で通った方がいいか?」

「そうね……もう必要無いんじゃないかしら? ナイトくん達の研修はとっくに終わりよ」

「そうか、じゃあルルは空いてる時だけ店で遊んでくれよ」

「承知しました」


 ルルさんもバックヤード組かぁ。……これでアーニャからのイジメが減るかも? やったぁ!


「よし、じゃあそろそろ開店だから出勤しようぜ!」

「あのぅ……魔王様、今日もカリンさん祭りですかぁ? やだようっ!」

「カリンはしばらく来ないかもな。アレンとルフランにライバル店から引き抜きの声がかかった。カリンは近々偵察に行かせるぞ!」


 え……? ライバル店って何……? 引き抜きって……?




カリンちゃんとお話したルフラン、アレンの前のルフラン。ルフランの本心はどっちにも取れるので好みでご想像ください。

魔王様はホストクラブの事しか考えてません。


12/7(火)はお休みします(∩´ω`∩)

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