ぅゎまぉぅさまっょぃ。
「……決めた、私、魔王を指名するわっ!」
サシャさん、指名無しの初回フリーでユニコーン入れるのぉ⁉
魔王様がお金で人族に動かされるなんてなんかすっごい屈辱だ!
「うん、じゃあ俺様は指名出来ないから誰か適当に指名しろ。長い付き合いになるから今日の初回でじっくり見極めろよ? またな!」
そう言って魔王様はサッと席を立ってしまった。
……強い。
「……ガビーン! いなくなっちゃった!」
「代表の他に誰か担当を決めて、それからお酒を入れ下さいって事ですね。代表とのお話の続きはまた今度、という事かなぁ……」
「そういう事……クッ! 手強いわ!」
フィルさんの言う通り、魔王様は誰かの売り上げにしたいんだろうな。
全額お店の売り上げにして魔王様が多少儲けるより、ナイトさんに割り振ってナイトさんからの忠誠を高めるという作戦ですね⁉ 魔王様っ!
サシャさんのお会計は人界征服に直接必要無いから、魔王様指名なんぞに媚びない! カッコイイです! さすが魔王様ですっ!
「サシャさん! 俺のとっておきの魔法見る⁉」
「とっておき? どんなの~?」
あ、ヴァンさんのちんちん魔法劇場が始まる。
「ヴァン! フィル!」
そこにストップをかけたのがレオさん、さすがだ。
レオさんが頭上で右手をシュッ! と小さく振ったら「席を抜けて」の合図。
「くそーーー! 呼ばれた! サシャさん! 俺、ヒュドラの攻略法知ってるから指名して!」
「姫とお別れなんてしたくないです! 念話先交換してください!」
もう他のナイトさんがサシャさんの席に着くために後ろでスタンバっているので、二人とも必死だ。
サシャさんと握手して念話先を繋げ、「絶対指名してね!」と今生の別れのように叫びながら去って行った……。
「ぶはははははは! ミアの名刺もスゲー!」
「また一歩アイドルに近付いたニャ!」
ぎゃぴっ! 魔王様がミアさんの席にいるぅ!
「グッズが無いなら作ればいいんです!」
「今魔王様名刺も作成中です!」
「くっ……! 推し増しで出費が……!」
……魔王様、ミアさん名刺の出来も確認しに行ったんだ。そして魔王様名刺の普及が魔王様にバレてるよぉ! いや、バレていいんだけども!
「ははは! じゃあ今月もミアはナンバースリーか?」
「いえ! 友達もミアくんを推してます!」
「布教活動頑張りました! 私達は同担歓迎なので!」
「くっ……! ミアくんを独り占めしたい気持ちはあるけどそれよりも布教して集会を開いてミアくんの尊さを語り合いたい……っ!」
「アンナ達がお客様をいっぱい紹介してくれたニャ!」
「おっ、そうか! 頑張れよミア、アイドルはもうすぐそこだ!」
「はいニャ!」
アルディナさんが本当にミア教を立ち上げるかもしれない……。その暁にはパウリーさん達も入信させてあげてね。
「火竜の素材でお金持ちになったから何か卸そっかな~?」
火竜さんで儲けたらしいアーニャがネフィスさんにお酒の相談をしてる。
「おっ! アーニャちゃん景気いいな! 俺はフュリコがいい」
「水じゃん! ネフィスくんお酒キライだよね!」
「ナイトになってから嫌いになった……。毎日酒飲み過ぎて、ただの炭酸水を飲んでもシャンパンの味する気がするんだぜ? もう末期だ……」
「あははははっ! ルフランくんは何が喜ぶかな?」
「ルフランは消え物が好きだね……」
アレンさんが苦笑いでボソッと答えた。
消え物とはシャンパンやエール、ワインなどその日のうちに飲み切るものだ。売り上げ的に実質シャンパンの事を指す。
「あー納得! シャンパンなら他のナイトくんがビンダしてくれるかもだしね! ルフランくん怖ーい!」
ルフランさんさすが……容赦ない。
そしてアーニャがキリッとした顔で「モエリ赤、コール無しで!」という、通なオーダーを入れた。
コールしてもらいたくて入れるシャンパンをあえてひっそり頼むことで、純粋にお酒の味を楽しみたいとか見栄っ張りじゃないとかっていうアピールが出来るらしい。前に魔王様がアーニャに教えてた。
でも……それを狙って結局目立つんだよね? まぁアーニャが楽しいならいいや。
「あ、ねぇねぇアーニャ、そういえば。ヴァンさんって採集しかしてなかったけどヒュドラさんの攻略法を知ってるの?」
さっき気になったので聞いてみた。
「え? ああ、ミアちゃん達獣人さんが攻略してるからミアちゃんから聞いたんじゃない?」
「なるほど……」
ヴァンさんがあの場面で「自分が知ってる」と言った所に、ナイトさん同士の水面下の攻防戦を垣間見た。
もしサシャさんに「ミアから聞いた」って言ったら、ミアさんを指名しちゃうかもしれないもんね。
「もうキマイラまでは人族もガンガン攻略してるからね~! キングバジリスクとキマイラの素材は出回り過ぎて、二十階層まで攻略してもパーティで50万ディル稼げればいい方らしいよ?」
「アーニャ詳しいね。私は最近のダンジョンの事はサッパリだよ」
「レイスターとラウンツさんとダンジョンに行ってたからね! シアさん達、ディアブロのお店の人に聞いたんだ」
「そうなんだ。ボス素材ってそんなに値下がったんだね」
「うん! 人族はまだヒュドラを攻略してないけど、それも獣人さん達が素材を流してるからかなり値下がったね。一番効率的に稼げるのは需要の多いミスリルゴーレムだってクレイドさんが言ってたよ! だから人族は三十階層を目指すのが流行ってるみたい」
確かに三十階層のミスリルゴーレムさんで稼げるならヒュドラさんや火竜さんの階層まで行く意味は無い、か。
「……あれ? サシャさんが今日キングバジリスクさんとキマイラさんを狩ったとしても200万ディルにならないんじゃ……」
「そうだね! 貯金かな?」
「貯金に手を付けたら破滅の道では……」
「そこはナイト君の腕の見せ所だよ! 切れるくらいなら細く長く通ってほしいよね!」
「あはは、その話ならちょうどルフランが頭を悩ませていますよ」
私とアーニャの話に耳を傾けていたアレンさんがニッコニコの笑顔で言った。
「えっ! またカリンちゃん祭り⁉」
「さぁ、どうでしょう?」
アーニャはなんでカリンさん祭りが好きなのっ⁉ 私は生きた心地がしないようっ! やめてっ!
ちょうどアレンさん達何人かのナイトさんが私達の席を離れ、今一緒にいるのはセシルさんアッシュさんフィルさんだ。
引き続き席に着いているセシルさんが、こっそりカリンさんのお財布事情を教えてくれた。私達はお店側の人間だから特別だ。
「カリンさんは先月、ルフランにナンバーワンを取らせるため貯金を放出したそうです。それでルフランは今月、カリンさんにあまり使わせていないのですが──」
「ルフランッ! やっぱり私のコトお金としか見てないんでしょっ⁉」
「ちょ! デカイ声出すなカリン! ちゃんと話すから!」
ぎゃぴっ! カリンさんの叫び声が聞こえてきたっ!
「あっ! カリンちゃん祭りの予感!」
「アーニャ! 不吉な予想はやめてっ!」
「あらあらルフランくん修羅場ね、うふふ」
ルルさんまで楽しみにしてる! そうだった! この店はそういうメンバーばかりだった……ッ!
ホストパートの主人公再登板w
11/24(水)はお休みします(∩´ω`∩)




