ラウンツ:おネエパワー・メイクアーップ☆
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パウリーちゃんのお店を出た後は、モモちゃんたち御用達のお店でウィッグを買ったの。
金髪で綺麗なウェーブのかかったロング……アアンッ楽しみだわぁっ!
「この後ウチのお店でラウンツちゃんにメイクの講習会よっ!」
「そうねっ! アタイたち秘伝の芸術的なメイクアップ、特別に教えちゃうわっ♡」
「みんな……何から何までアタシのために……っ!」
「ラウンツちゃんっ! まだまだこれからよっ! さっ、イクわよぉっ!」
そして「カマぱら」に戻ったアタシは、別人になれるおネエメイク、つまり「ドラァグクイーンメイク」なるものを初めて体験するコトになったの……。
「さぁ、ラウンツちゃん、覚悟なさいッ!」
「モモちゃんっ! その包帯は何っ⁉」
「包帯じゃないわっ! コレと糊で顔を引き上げるのよっ! まずはウィッグのネットを被ってっ!」
アタシは言われるがままにネットを頭に被ったわ。地毛がウィッグから出てこないようにするためのものよ。
そしてチェリーちゃんがノリに浸された細長い布を〈送風〉で乾かし、イイ感じになったらモモちゃんがアタシの顔回りから後頭部へ布を貼っていったわ!
「キャッ! 顔が引っ張られるわぁっ!」
「コレで小顔になるのよっ! ベースメイクだけで一時間かかるわよっ⁉」
「一時間⁉」
「メイクに時間がかかるのもっ……ミニスカートで寒いのもっ……女子の宿命よっ! 諦めなさいっ!」
そう言いながらモモちゃんがアタシの顔を布で引っ張り上げていく……こんな力技をモモちゃん達は毎日……。
(女子ってスゴイのね……アタシってばなんにも分かってなかったわぁっ!)
「モモちゃん……ヤッてちょうだいっ!」
「言われなくてもヤッてるわーーー!」
そしてリンゴちゃんがアタシの眉に何かを塗り出した!
「エッ⁉ リンゴちゃんっ! ソレってそこにあるノリよネッ⁉」
「そうよっ! 眉毛はノリで固めて、ヒゲと一緒にコンシーラー塗って消すわよっ!」
「じゃ、じゃあ眉毛はどこにイッちゃうのぉっ⁉」
「描くのよっ! 眉毛の上にっ! 目を描くために眉が邪魔なのようっ!」
「め、目を描く⁉」
(はみゅエルちゃんみたいにならないわよネッ⁉)
「次はフェイスシャドウよっ!」
リンゴちゃんがこげ茶のファンデを取り出したわぁっ! フェイスシャドウってそこまで濃い色だったけっ⁉ 間違えてないかしらっ⁉
あああっ! スポンジでガッツリ茶色い線を! 線よぉっ⁉ ブラシじゃないのっ⁉ アタシ今イジメられてないわよネッ⁉
そこからは驚きの連続だった。
本当に眉はコンシーラーで見事に消され、おでこに向かって眉毛を描かれた……。その下の眉があった場所に真っ白なハイライト、さらにその下の瞼のくぼみにはまたこげ茶、瞼にはまた白を……。それ以外にも顔全面にフェイスシャドウとハイライトの線を交互に描かれたわ。
今、鏡の中のアタシの顔はドクロみたいだけど本当に大丈夫なのかしら……。
でもその心配はリンゴちゃんがアタシの顔をブラシで撫で始めてから消えた。
……一時でも疑ってごめんなさい……リンゴちゃん……。
そう、濃淡の線がボカされて見事に光と影が作られたアタシの顔は……それだけで別人だった。
ジェニーさんに手加減してもらった時とは全く違う……これが本物のおネエメイク……。
「女性っぽい……」
自然とそう呟いていた。
「あったり前よっ! んじゃっ! 今から描いてイクわよっ!」
「えっ⁉ まだやるのっ⁉」
「まだまだこれからよっ! 精密作業だからジッとしててっ☆」
さらにアイシャドウを塗られ、アタシの顔に手が加えられていった。
アイラインはこめかみに届くんじゃないかってくらい長く太く描かれたわ。もちろんつけまつげは鳥の羽根? ってくらい大きくて長かった……。エッ⁉ 下まつげにもつけまつげを⁉
アタシの目……こんなに大きくなるの……? 有り得ない……でもこれは現実……。
「ンン~、ラウンツちゃんのリップはおっきくて魅力的ねっ☆ 口紅だけでイイわっ!」
「エ……アタシ、もっとモモちゃん達にお任せしたいわぁ……」
「ラウンツちゃん、メイクは人の顔を変えるモノじゃないわ。本人の魅力を引き出すだけ。つまり……それで完成よっ☆ ラウンツちゃんの顔でしか表現できない芸術! それが『アナタ』よっ!」
アタシ……これがアタシにしか表現できないアタシ……。
「最後はウィッグを被って……っと! 出来上がりよっ☆」
「アアンッ! ラウンツちゃん最高だわっ!」
「悔しいケド綺麗になったじゃなぁいっ!」
鏡には……モモちゃん達と同じようで同じじゃないアタシがいた。女のコ……いえ、「女性」のアタシが。
「みんな……ありがとぉ……っ!」
「泣くのは狙ったオトコの前だけよっ⁉ メイクが崩れちゃうっ!」
「ハッ⁉ そ、そうね……せっかくのメイクだものっ☆ それにしても別人ネッ! これなら仮面はいらないわぁっ!」
そしてアタシは、名残惜しいけどメイクを落としてからディメンションへ帰ったの。
「勝負の日」が決まったら伝える。と約束をして。
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四天王戦初日、アタシの勝負の日の目途はついた。
早速「早ければ明日」とモモちゃんに念話したわ。
モモちゃんは「朝イチならアタシ達がメイク出来るから確定したらまた教えてっ☆」と言ってくれた。
パウリーちゃんからはとっくに装備を受け取ってる。これで変装の準備は万端!
アーニャちゃん達には最高のエンターティメントをお届けするわぁっ!
でも……まだ魔王様に装備の報告をしていない……。アタシは意を決して魔王様とお話しする勇気が中々出なかったの。
だケド……何としても許可を頂かなくては。
だって、アタシにも譲れない想いが、あるのよ……。
そしてついに「勝負の日」の朝、やっと腹をくくったの。
「おネエを出す事」に、こんなにも緊張したのは魔王軍一次選抜試験を受験した時以来よ。
「メイリア、ニーナ、ちょっと厨二夫婦を起こしてこい」
「はいっ!」
「……はい……」
ニーナちゃんとメイリアちゃんが走って行ったわ……。今ダイニングにいるのはアタシと魔王様、コーディちゃんだけ……。
もう今しかないわぁっ!
「んじゃその後ムーバーイーツと四天王戦だな。ラウンツ準備はいいか?」
「バッチリよっ☆ ケド一つだけ魔王様にご相談が──」
「あん? なんだ?」
「ちょっち……アタシのお部屋でお話ししたいの……」
「…………おう……」
勘のイイ魔王様は黙ってアタシの部屋へ付いてきてくれたわ。
これがアタシにしか表現できないアタシ……。だそうです。
Twitterで更新情報発信してます。@NANAauaa
布とノリ。この世界にはガムテープが無いかな? と思い苦肉の策です。
「ドラァグクイーン」で動画検索すると一時間は楽しめます。




