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ラウンツ:運命の出会い

「ところでよぉ、ラウンツっておネエ?」

「……おネエ……とは……?」

「ん? えっとな、身体は男だけど心が女のヤツの事だ!」

「…………ッ! ちが! えっと、違います! 僕は魔王軍にふさわしい男の中の男として魔王様に忠誠を捧げます!」


 魔王様から突然そう言われ、アタシはなんとか「女男」と呼ばれていた事を隠さなくてはとパニックになったわ。

 ……でも、どこかストンと腹に落ちた感覚があった。

 魔王様の言う「おネエ」とは「おネエちゃん」という意味じゃない? 身体は男だけど心は女……という新しいカテゴリーがあるの?


「あん? いや、会ったばかりの俺様にいきなり忠誠を誓われても怖ぇよ。それよりラウンツの事を教えろ! 戦う時に『イクわよぉっ!』って言ってたのはやっぱあれか? おネエ言葉だと気合入んのか?」

「えっ⁉ えっとそれはあの……!」


(なんでバレてるのっ⁉)


「お前、走る時さ、両手をこうやって顔の横に猫みたいにしながら走ったりする?」

「ッ! な、直します!」


(これもバレてる! 見られてたのっ⁉)


「ははは! 好きなタイプは? 童顔系? ガチムチ系?」

「女性とお付き合いしたことがないのでわかりません!」


(バーラントお兄ちゃんみたいなムキムキよぉ!)


「隠すなよ~! 内股とか手の動きとか完全におネエじゃん!」


(エッ⁉ アタシってばそうだったのっ⁉)


 そしてアタシはリオル様の生暖かい視線を受けつつ、ひたすら魔王様から「おネエだろ⁉」と尋問を受け続けた。

 面接が終了する頃には、魔王様から「完全におネエ」というお墨付きをもらっていたわ……。


(アアンッ! 戦闘や魔王軍に対するアピールが出来なかったわぁっ!)


「よし、最後にお知らせだ。 今年、公共事業の一環で全地域の魔王軍宿舎を改築した。なんと全部屋個室だ! 狭いけどな。だからラウンツ、自室で()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

「え……それはつまり……」

「ラウンツ合格~! 楽しみだな、ははは!」

「あっ! ありがとうございます!」


(信じられないっ! やったわぁ!)


 アタシが心の中でガッツポーズをすると、リオル様がため息をついた。

 アッ! リオル様はご納得なさっていないのかしらっ⁉


「やれやれ……また魔王様のお戯れですか……。しかし人を見る目だけは信頼できますから仕方ないですね」

「何事も全力で遊ぶのが俺様の生き方だ! あっ! そういえば魔王軍におネエって二人目じゃね?」

「そうですね。うちの隊のジャンが初です」

「ラウンツもリオルの隊でいいよな⁉」

「それは形式上確認を取っただけであってつまりは決定事項ですよね? かしこまりました」

「お前は理屈っぽいな~モテねぇぞ?」

「間に合っておりますので。しかしなぜ魔王様は私の隊におネエを集めようとなさるのですか?」

「いや別に収集してる訳じゃねぇ……。リオルんとこは女が多いからなんとなくだ! ぶはははは!」

「…………」


 な、なんかよく分からないケド、リオル様は魔王様のオッケーが出たアタシを受け入れてくれるみたい。よかったわぁ。




 こうして、晴れて試験に合格したアタシは、春からリオル隊長が率いる魔王軍第三部隊への配属が決まった。

 そして魔王軍宿舎で地獄の訓練の日々が始まったわ。


 魔王軍は第一部隊から第三部隊までが魔王城敷地内にある魔王軍本部に属する。

 第一部隊は魔王軍の花形。第三部隊は魔法に特化した部隊。第四から第十部隊は各地域の支部を担当するから、実質魔王城の守りは第三部隊まで。


 ……でも魔王様はお一人で全部隊を殲滅できるくらいお強いという噂。

 つまり実際の本部の役目は魔王様の護衛ではなく、魔王城がある魔界の首都ラザファムとその周辺地域の治安維持、そして軍の総務や情報通信だった。


 魔法が苦手なアタシがなぜ第三部隊に配属されたのか……それはもう初日は緊張したわ。魔法が出来ないってイジメられるんじゃないかと思って。


 でもそれは杞憂だった。同じ第三部隊の先輩がアタシを気にかけてくれたの。

 ……そう、面接の時に魔王様が話していた「魔王軍初のおネエ」。つまり人生のセンパイよ。




「これより貴様ら新任を班分けする! 以後は班長の指示に従い、新任の仕事を覚えるように!」


 魔王城では、成人した年に魔王城に就職した者を「新任」と呼ぶ。

 若手の隊員の中から新任教育係の班長が選出されて、アタシ達に魔王軍のイロハを手ほどきしてくれるみたい。

 次々と班長さんが新任の班員の名前を呼んでいく。


「次はアチシね! 六班班長のジェニーよ~ヨロシクぅん! んじゃっ呼ばれたら来てぇん! ベル、バース、ラウンツ──」


 アタシは六班ね!

 ……このジェニーさんって……おネエかしら? ピンクの長い髪をアップにしてお化粧もしてるケド……声に違和感があるしアタシよりガタイがイイわっ!

 でも……魔王様が第三部隊のおネエは「ジャン」さんだって──


「みんな集まったわね、一応言っておくわ。アチシの本名はジャン! でもジェニーって呼んでぇん♡ 間違えたらオシオキよん⁉ 魔王軍三年目だからみんなのふたつセンパイねっ! じゃあ早速本部を案内するわよぉ~」

「「「……はいっ!」」」


(この人がジャンさんだったのね! でもなぜ偽名を⁉ 魔王軍の規律上、大丈夫なのかしらっ⁉)




 そしてアタシは地獄の訓練を課せられながら、その合間に新任のおシゴト、つまり雑用も必死にこなした。

 訓練の中でも特に模擬戦は悲惨だった。近接攻撃しかできないアタシは魔法でハメ技をされて毎日ボロ雑巾になっていたわ。


 第三部隊に配属され二週目最後の日、その日も訓練と雑用が終わって、魔法ダメージでボロボロの身体を引きずりながら自室へ帰った。

 洗浄魔法でお風呂を済ませるのはいつもの事。装備を外してそのまま寝たかったケド、身体作りも立派なおシゴト。ベッドの誘惑を振り切り食堂へ夕食を取りに行ったの。


(みんな魔法が苦手なアタシにも容赦無いわ……いえ、当然よね。常勝・必勝のための訓練をするのが魔王軍だもの。アタシも魔法の特訓を頑張らなくっちゃ! でも……なぜ地方支部ではなく本部の、しかも魔法特化の第三部隊に配属されたのかしら……。分からない、分からないわ……もう悔しくって泣きそうっ!)


 涙をグッとガマンして食堂のおばちゃんからトレイに乗った夕食を受け取ると、誰かがアタシを呼んだ。

 いえ、この声だけは誰だか分かったわ。


「ラウンツってばお疲れちゃんねぇ! ちょっち、アチシの部屋で一緒に食べなぁい?」


 パチンとウィンクをしたジェニーさんは、その時アタシに舞い降りた、まさに女神サマだったの。




女神サマだったの。だそうです。


ラウンツさんを目覚めさせた犯人が発覚! まさかの複数犯!

10/27(水)はお休みします(∩´ω`∩)

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