表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
220/285

四天王戦 帰還

 カスがバトルフィールドをバンバン叩いている。


「魔王~魔王~! これ壊せる~?」

「あー……うん、壊せるぞ。なんせ俺様は四天王よりはるかに強いからな!」


 カスの隣にシュバッ! と跳んだ魔王様は、結界に近付くと思いっきり右こぶしを振りかぶった!


「──ッオラァ!」


 バギャッ! 


 ああっ! なぜ結界を殴ったの⁉


 ──バリバリバリバリンッ!


 うーん……結界と柵が割れる演出は必要なの? 必要なんですね。


「おおっ! 魔王どちゃくそ強いやん!」

「まぁな! フフン!」

「弟子にしてや⁉」

「あん? やだよめんどくさい」

「そんなケチ臭いこと言わんと! まだ魔族が二人おんねん! 俺は師匠の下で修行中の半人前やからな、けったいな魔族は師匠に譲るわ!」


 コイツ……四天王戦を回避しようとしている……ッ!


「じゃあ四天王を倒したら弟子にしてやる! 頑張れよ! ははは!」


 魔王様は即、転移でカスから逃げた。グッジョブです!


「ああっ! 俺は四天王を倒すために弟子になりたいんやーーー! 魔王どこやーーー⁉ 今どうやって消えたんー? 俺にも教えてやぁ! 師匠ーーー!」

「リュー……魔王に媚び売るなんてさすがウチの認めたクソボケゴミカスや。ブレないとこだけが自分のええとこやな……」


 ミルムさんも呆れている。


「勇者よ! 四天王はちゃんと殺したな⁉」


 あ、アレイルの兵士さんだ。そういえば駆け付けてたんだった。


「おっ! 俺が殺したからもう安心や! 二体ともグッチョグチョでグロかったでぇ~……」


 くっ……! カスの手柄ではないと大声で叫びたいけどできないっ!


「皆、確認だ!」


 アレイル兵がダダダッと現場に駆け付け、死体を探している……マズい。魔王様が回収しちゃったよぅ!


「リュー! ミルム! 大丈夫かっ⁉」

「おお、レクサスさん! もっとはよ来てや~! 閉じ込められて小便チビるか思うた!」


 あっ! 都市で勇敢にお兄ちゃんに立ち向かったイケメン冒険者さんだ!

 ミルムさんに念話したのはこの人だったんだ。こんなカスの心配までして中身もイケメンですっ! 勇者になれなかったのが悔やまれる……!


「この結界に阻まれてどうする事も出来なかった……すまない」

「ええよええよ! 誰にでも失敗はある! 次頑張ってな?」


 カスぅ~~~! どの口でそれを言うのっ⁉


「ははっ、リューは相変わらずだな。……ところでミルム、魔族に備えて私と行動を共にしないかい? どうやら魔族はリューを狙っているようだ。一緒にいては君まで危険な目に──」

「嫌や! 自分のお上品な感じはサブイボ立つねん! ほんで自分が狙うてるのはウチやろ⁉ 魔族に狙われた方がマシや! リュー、城に行くで!」

「……うちの嫁には逆らえへん。レクサスさんほなまた~!」

「…………」


 ……レクサスさんもミルムさんを好きなのかな? でもやっぱりミルムさんは下品なクズがお好みらしい。何だかんだ言いながら、四天王戦に巻き込まれるリスクを負ってまでカスと一緒にいるなんて……。勿体ないようっ!


「待て勇者! 死体どころか血の一滴も無いぞ⁉ 先ほどまではあったよな⁉」


 ひぇ! 兵士さんしつこい! もう四天王は死んだからいいでしょっ⁉


「お? ……えっとな~、なんかアレや! オニが宿ってたばいたい? はまだ呪いが残ってるかもしれへんから、魔王が魔界で厳重に処分してくれるらしいで? 知らんけど。ほんでお掃除してくれはった! ええヤツやんなぁ!」

「呪い……」

「国王様になんと報告すれば……」

「とりあえず四天王の死体があったのは私達が見ている、ここにもう用は無いな。帰還する!」

「「「はっ!」」」


 ……ホッ。カスのくせにナイスだ! 助かったよ!


『魔王様が勇者へ指示したのかしら?』

『ルル正解! 片付けてる時に勇者へ念話した!』


 前言撤回! カスの頭の中はやっぱりスッカスカだった! 魔王様に感謝するがよい!


『魔王様さすがネッ! 呪われてる残骸なら魔王様が責任をもって処分しなきゃイケナイものっ☆』

『そういう事にした! ちなみに勇者からの念話がうるせぇから今は遮断してる。ははは! じゃあ俺らもディメンションに帰ろうぜ! さっきからアーニャの念話もうるせぇ。お疲れ様!』


 アーニャ……ディメンションでお留守番してるんだった。




 転移の浮遊感の後、ブーツが踏みしめたのはいつものディメンション二階の床。

 魔王様の転移でやっと帰って来れた……疲れたようっ!


「おかえり! 遅いよもう~!」


 アーニャがダイニングテーブルに突っ伏してふて腐れている。ごめんね。


「悪い悪い! さて、俺はアレイル国王に呼び出されるだろうから、ちょっと魔族の血だけでも本物を用意するか~」


 ひぇ! 血っ⁉ 採血するのっ⁉


「……魔王様……どうぞ……」

「ぎゃぴぃいいいいいっ‼」

「ニーナ! 『はみゅうー!』 だってば!」


 メイリアさんがリストカットを! いつの間に取り出したのか、ビンに血を注いでるぅーーー!

 何⁉ もしかして今、魔王様への忠誠心が試されてるのっ⁉ 私もやらなければ魔王様への忠誠が疑われるっ⁉


「ダァーーーーーッ! メイリアは寝てろよ!」


 魔王様がすごい勢いでメイリアさんの口へポーション瓶を突っ込んだ。

 ……なんだ、メイリアさんの忠誠心が暴走しただけか。メイリアさんって採血とか嬉々としてやりそうだし……。


「アタシがイチバン血の気が多いからアタシのを持って行ってっ☆」


 ラウンツさんが左腕をナイフで切って血を出し始めた! ……ある意味呪われた(おネエの)血だから適任かも。


「お前らホントためらいないな……。俺がやるつもりだったんだけどよ、まぁいいか。サンキュー!」


 くっ……魔王様が引くくらいの忠誠を見せたメイリアさんとラウンツさんが羨ましい! でも血はいやぁ!


「俺は今日脇腹やられたのでやめときまーす」


 お兄ちゃんはピンピンしてるからとっくにポーションで治したのかな。


「私の血は本物の呪いがかかってるから危険だね! やめておくよ! ……あっ! ねぇねぇ、今日の反省会やらない⁉」


 アーニャの血には厨二病の呪いがかかっている。


「やろうぜ! そういえば四天王最弱の台詞を三人で言ってくれるんだよな⁉」

「俺はアレイル城へ行ってくる! じゃあな!」


 ああっ! ラウンツさんの血を回収した魔王様が逃げた!


「じゃあアタシとアーニャちゃんとニーナちゃんで台本通りイクわよぉっ☆」

「はみゅっ⁉ ……はみゅう~~~!」




 結局、ボツになった台本「四天王最弱~三人バージョン~」を実演する羽目になった。

 実は四天王戦で台本があるのは私が関わる部分だけだ。他の三人はアドリブで出来るので私にだけ用意された。……有難いけど、そもそもやりたくないよぅ! しくしく。


 お兄ちゃんがダイニングテーブルの脚にもたれかかりグッタリとし、残りの四天王はマントを羽織って〈飛行〉で浮きスタンバイ完了。ルルさんとメイリアさんは観客だ。


「あらあらあらぁ~! 『残夢の呪縛』、殺られちゃったの~? だけど……あのコは四天王の中でも最弱……呪術しか能の無い雑魚だものね! 初めから分かっていた事よ!」

「ウフッ! ()られちゃったわねぇ……『残夢の呪縛』ちゃんっ☆ まぁアタシ達の前座としての役目は果たせたかしらぁっ?」

「……おい、次ニーナの番だぞ!」


 四天王最弱(死体)に急かされる。


「えと……。……みゅみゅぅ~? あのゆーしゃ、なかなかやるのだっ♡ 今殺しゅには惜しいかもかもぉ~? わらわの玩具(おもちゃ)に決ーめたっ! 『刹那の雪月華』であるわらわにあしょんでもらえりゅなんてぇ~、あのゆーしゃはラッキーなのだっ! みゅふふっ♡」


 くっ……なんという屈辱!


「ニーナ! 二つ名はもっと『しぇちゅにゃのしぇちゅげちゅか』って感じでもう一回!」

「言いにくいよぅ! ラウンツさんだっていつもの口調じゃんっ!」

「ラウンツさんは本番でもビシッと出来るタイプだからいーの! ニーナははみゅはみゅ語の練習が足りないよ!」

「くっ……はみゅはみゅ語は練習するけど、四天王最弱は今やったからもう終わりでいいでしょ?」

「えー! もう一回やろうよー!」

「ニーナ! もう一回やってくれ!」

「やだようっ!」


 た、助けて……救世主(ルル)様っ!




次回、ついにあの二人が! 乞うご期待です!!

明日10/18(月)も更新しますよ~!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ