四天王戦 第二弾!
アーニャが胸の前で邪龍クロウをクロスさせ、カスに向かって跳んだ!
「解・縛・印ッ! ……うふふふふふふっ! イイわっ! イイわぁーーー! これが……風鬼の力……ッ!」
「もぉおおおーーー! 俺は戦う気無いって! 帰らせて⁉」
私だって帰りたい!
「ダメよぉ~? 貴方は人族唯一の希望! それを木っ端みじんにするのが楽しいんじゃなぁい! ……それこそ文字通りにねっ!」
アーニャが両手の邪龍クロウで容赦なくカスの聖剣を引っ掻く! 時々クロウから風魔力を放出して風鬼の演出も忘れないのがさすがだ。
……でもちょっとラウンツさんっぽい喋り方が気になる。
「ひき肉は勘弁や!」
「貴方のハンバーグ……美味しそうねぇ!」
「げぇっ! やっぱ魔族って人間食うんか⁉」
「そんなイカレた魔族はわたくし達四天王だけよ~! うふふふふ~!」
……私も人肉を食する仲間にされてしまった。
そんなの設定に無かったよねっ⁉ アーニャが「猟奇的お嬢様キャラ」演出をするために巻き添えをくった! お兄ちゃんの呪いも私が陰形鬼って設定が増えたし!
もぉおおおーーー! が言いたいのはこっちだようっ!
『ただいま!』
『ぎゃぴっ⁉』
急に肩を叩かれ振り返るとお兄ちゃんがいた! 〈黒霧〉を纏っているけど魔力で分かる。
『お、お兄ちゃん……なんで……』
『魔王様に戻してもらったぜ!』
『おう! レイスターはアーニャの戦いを見たいだろうからシュッ! と転移してシュッ! とな、ははは!』
『そ、そう……』
『レイスターちゃんおかえりっ☆ 見事な四天王最弱だったわよぉっ!』
『ありがとうございます! 四天王最弱の台詞が聞けて良かったです! でも三人で言うパターンがよかったなー。仕方ないけど』
お兄ちゃん……四天王最弱の台詞をその耳で聞きたくてすぐ転移しなかったんだ。アーニャは共犯だな。
『ンフッ! 四天王戦が終わったらアタシ達三人で言ってあげるわぁっ☆』
『あっ! それいいですね!』
えぇ……私も強制参加⁉ やだようっ!
「つーか! 自分アメドクロより弱いな! 解呪もしてくれてありがとさんっ!」
あっ! カスがアーニャを煽った! そしてクロウを聖剣ではじき返しながら大きな聖魔力を放出!
「──ッ! ぐあっ!」
アーニャがわざともろに喰らって吹っ飛んだ。そろそろ負け演出かな?
「ヘヘッ! トドメや!」
「今、弱いって言った……?」
あっ違った! 怒り演出だ!
立ち上がるアーニャの周囲に突風が吹き荒れ木の葉が舞い上がる!
……本当は小さな竜巻くらい起こせるけど手加減してあげてるな。
「四天王最弱の『残夢の呪縛』より弱いって言ったわね⁉ この! 『片翼の堕天使』様をっ!」
二つ名を強調してる! お兄ちゃんの分まで!
多分アーニャは、カスが二人の二つ名をスルーした事に怒ってる! 演技じゃない!
「ちょ! ちょぉ待って⁉ 風はアカン! ヅラが飛ばされるっ!」
カスは左手で必死にヅラを押さえている。
……ああ、ヅラを被っていないと聖剣の力が発揮されない設定だったね。
「黙れ黙れ黙れぇっ! 〈風爆砕〉ッ!」
「アッ……カーン!」
アーニャがさっきお兄ちゃんに使用した風魔法を放った! 地面に着弾した空気の塊が土を舞い上げる!
「わかったわかった! それエグいからやめて⁉」
横に跳び、風魔法を避けたカスが地面からヅラを拾って被り直してる……。
アーニャが一呼吸おいてから放出したからギリギリで避けられたみたい。
「小手調べはもう終わり……さぁ! 戦いましょう⁉」
アーニャの左足が軽く地面をえぐり、カスへ飛びかかる!
ねぇ! 今絶対「戦いましょう」って書いて「踊りましょう」って言ったよね⁉
お兄ちゃんも所々ぞわぞわする物言いをしてたし! 〈バトルフィールド〉とか! 一体今日だけでいくつの厨二単語が飛び交ったの⁉
──ギィイン!
「それっ!」
クロウが聖剣で受け止められると、アーニャがブワッ! と風魔力を放出!
「うあっ! ちょっとタンマ!」
カスが後ろへ飛びのいた!
……またヅラが飛ばされたらしい。ヅラの横に着地したカスが被り直してる。
ヅラと風魔法の相性が悪すぎるようっ!
「ホンマそれやめて⁉ 嫌がらせなん⁉ これ被ってんとセレネー様に怒られんねん!」
「…………」
……あのアーニャが黙ってしまった。
カスにヅラを与えた女神、もといアーニャは、イケメン演出のヅラと風鬼演出の風魔法をどう両立させようか悩んでるみたい。
普通なら風魔法でヅラを飛ばし、聖剣の力を発揮できない(設定の)勇者を倒す絶好の機会だけどそれは出来ないのだ!
「──〈土壁〉! リュー! いてまえ!」
「おっ! ミルムさすがや!」
えっ⁉ ミルムさんがカスを土魔法で閉じ込めた⁉
……かまくらみたいなドーム状の土壁がすっぽりとカスを隠してしまっている。アーニャの正面に小さい穴が開いてるけどとても剣は振るえない。いいのかな?
「……なんですってぇ⁉ クッ……いくら風鬼を宿しているとはいえ、風魔法でその壁を壊すことは……出来ないッ!」
あ、ピンチ演出だ! わざわざ「ピンチですよ」アピールしてる! 普通は自分の力量を推測されるような事なんて言わない!
っていうか、素で「ヅラが取れるとマズい」って敵にバラしちゃったカスはアホなのっ⁉
ともあれ、少しアーニャが持ち直した。
「ヘヘッ! これならヅラが飛ばされへん! 激アツ勇者ストレートフラーーーッシュッ!」
「……きゃぁーーー!」
うわセコい! カスが壁の穴から聖魔力を放出した!
そしてアーニャは一瞬悩んだけど、不意打ちを喰らった感じでそのまま受けた!
──ドサッ。
アーニャがゆっくりと後ろへ倒れる。
……わざわざスローで倒れたのは演出かな? いらないよそんなの!
「激アツ勇者ストレートフラーーーッシュッ! 激アツ勇者ストレートフラーーーッシュッ!」
カスがまだアーニャに向かって必殺技を!
クズだ! もう倒れてるのに! 確実に殺しに来てる! アーニャ大丈夫⁉
『魔王様どうしよう⁉ これ以上本気を出したら聖なるウィッグが取れるよ! もっと熱い戦いを演出したかったのに!』
アーニャの念話だ! 想定外の事態発生らしい。というかそもそもあのカスの存在自体が想定外だ!
っていうかアーニャ、念話してて大丈夫なのっ⁉ カスが必殺技を連発し続けてるよぅ!
『ぶははははははっ! 笑いこらえるの大変だったぜ! くくくっ! ……はぁー。えっと、俺がケツ持ちで出る。アーニャは俺相手に本気出せよ!』
えぇ……魔王様出るのぉ? まぁノリノリだったもんね。
『あっ! それなら私の強さが分かるね!』
『アーニャぁ……カスが攻撃し続けてるけど平気?』
『え? あーうん、結構痛いよ! でも全身闇魔力で覆って耐えるだけでいいから、軍の訓練に比べたら余裕だね!』
『そ、そっか……ならよかったよ』
……やっぱりアーニャも強いんだな。
『じゃぁシメに入るよ! 私の封印解放をその目に焼き付けてね!』
『アーニャ頑張れ!』
『アーニャちゃん楽しみにしてるわネッ☆』
お兄ちゃんとラウンツさんの声援を受け、仰向けに倒れていたアーニャがユラリ……と立ち上がった。
「げぇっ! 生きてるやんけ!」
「うふ……ふふ……ここまでわたくしを追い詰めたのは貴方が初めてよ……。でも残念ねぇ? わたくしの闇に潜む風鬼をもう抑えきれそうにない……呑まれ……る……ぐぁあああっ‼」
アーニャの左手が仮面を掴むと、顔から地面へ赤い光線が伸びた!
うわぁ……魔眼演出だ……。
10/14(木)はお休みします(∩´ω`∩)
黒獄闘技場はニーナに「バトルフィールド」としか聞こえてませんが、厨二臭さを察知した模様。
四天王戦ではルビ読みが発音です。




