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四天王 出現!

 最初の村の後は強制転移を繰り返させられ、ムーバーイーツが終わった私達人界征服メンバーはアレイル都市近くの上空に転移させられた。


 うう……冬は陽が落ちるのが早いから寒い。

 亀のようにポンチョのふわふわ部分へ顔をうずめる。

 ルルさんがくれた暖かくなる魔法陣の刺繍入りポンチョはラヴィ模様が可愛いんだ! えへへ。……ピンクなのが恥ずかしいけど。


 魔王様は早速お兄ちゃんと転移陣の仕込みに行ってしまった。

 勇者と戦える広い場所に転移陣が描かれた石板を置いてくるのだ。お兄ちゃんが倒される時にうまく石板に向かって吹っ飛び、そのまま転移して消滅演出をするためらしい。

 ちなみにギャラリーがいないと困るので、都市から比較的近い場所にするとの事……。

 転移陣の仕込みの後は魔王様がお兄ちゃんをこちらへ戻してメイリアさんのお迎えに行く。


 なのでほんのちょっとだけ休憩だ!

 ルルさんが出してくれた暖を取る魔道具を空間魔法で浮遊させ、みんなで手をかざし暖まる。火魔法は光で目立つから使えないのだ。


「ルルさんの魔道具は有難いわぁっ! アタシってば冷え性なのよねぇ……」


 ラ、ラウンツさん冷え性だったんだ……そんな所まで女子力が高いんだな……。

 あ、そういえば。


「ルルさんルルさん、次って本当にルーガルへ出店できるんでしょうか? 魔王様はアレイルがルーガルと縁を切るためって言ってましたけど……ルーガルは魔王様を目の敵にしているのでは?」


「そうね、一筋縄ではいかないわ。でもルーガルの目を私達魔族にひきつけておかないと、アレイルはもとより他の国で戦争が起きるかもしれないの。アレイルとオルガの代わりにね。一応、魔王様は出店できる確証を持っていらっしゃるみたいよ……」


「な、なるほど……さすが魔王様です! ルーガルが他の国と戦争したらその国にも出店できないですもんね!」


「でもルルさんー! それって私達がルーガルにいる間しか無理じゃないかな⁉」


「そうね……」


 アーニャの質問にルルさんは黙ってしまった……。魔王様、どうするんだろう。


「いざとなったらアタシがルーガルちゃんをオシオキするわよぉっ☆」


「いいねラウンツさん! 私の中の(ヤツ)も暴れたいって言ってるよ!」


 ラウンツさんのお仕置き……ルーガルが更地になるのでは。


「ただいま!」


 あ! お兄ちゃんが帰ってきた! 隣に一瞬見えた残像は魔王様だ。


「お兄ちゃんいよいよだね、頑張ってね!」


 これからお兄ちゃんが人族をビックリさせるぞー!


「レイスター三回も出番があるなんていいなー! 私も四天王最弱にすればよかった! 宣戦布告してみたかったよ!」


「早いもん勝ちだぜアーニャ! 四天王最弱はマジ美味(うま)いな!」


 ふふふ……都市に宣戦布告なんて何だかとっても魔族っぽい! 人族に魔族の力を見せつけられるなら四天王も悪くないかも!

 お兄ちゃんと魔王様の作戦……厨二病的な意味で不安しかないけど、アレイルを安心させるために頑張るぞ! 勇者の力をアレイルに認めさせるのだ!


 と決心した所で魔王様がメイリアさんと戻ってきた。


「ただいま! メイリア連れて来たぞ! 早速作戦決行だ、準備はいいか?」


「「「はいっ!」」」


「……勇者が都市に向かって移動して来ている、魔物狩りの帰りってとこか。レイスター、勇者の魔力は追えるな?」


「はい! 都市で宣戦布告した後に勇者の所へ向かい、開けた場所へ誘導します!」


「オッケー! 俺が合図したらアレイル都市に出現しろ。あ、(アメ)渡しとくな」


 棒付き飴……やはり必須アイテムらしい。


「ありがとうございます! これで強キャラ感が出るってやっと分かりました!」


「おっ! レイスターも分かるようになったか、ははは!」


 ……私は一生分からなくていいや。

 お兄ちゃんは髑髏の仮面の口の隙間によいしょよいしょと飴をねじ込んでいた。……四天王のこんな姿は人族に見せられないな。


「じゃあ残りは都市内に潜伏だ!」


「「「はいっ!」」」




 返事をした途端、ざわざわと人の声や足音が聞こえた。


 あ、建物の屋上に転移したんだ。石造りの建物みたいで、ちょうど腰の高さくらいの囲いがあり身を隠せる。

 左右に魔王様とアーニャ、ラウンツさんルルさんメイリアさんの姿を確認した。


 壁からこっそり都市を覗くと、少し先に広場があるみたい。大きなオブジェの周りにあるベンチに腰掛けて飲み食いしている人族が見える。……木のオブジェ? 人族が信仰してるユグドラシルっていう木かな?


「「「〈黒霧〉」」」


 〈黒霧〉を発動できるみんながボソッと技名を唱えると、私達の身体に黒い霧がまとわりつく。

 黒い人影なんてめちゃくちゃ怪しいけど魔族ってバレるよりはマシだ。人族に見つかりそうになったら魔王様が転移させてくれることになっている。


『よしレイスター、やっちまえ!』


『お任せください!』


 魔王様のパーティ念話が展開されるとすぐに都市上空から大きな魔力を感じた。

 お兄ちゃんだ!


 濃い紫色の空が一瞬だけ昼の明るさを取り戻したかと思うと、木のオブジェの上空に黒い人影が見えた。その両手からは光が溢れ出ている。


 ……暗くなってきて人族から良く見えないから発光魔法で注目させたんだ。手から発光し続けてるのは攻撃魔法じゃない、自分の姿が見えやすいようにライティングしているだけだ。

 ……お兄ちゃんの涙ぐましい演出努力がうかがえる。こんなに分かりやすくしてあげるなんてお兄ちゃんも人族に優しいよ……。

 そして飴は喋りにくくないのかな?


「な……んだ、あれ……」

「角だ! 魔族だ!」

「セレネー様の神託は本当だった! 逃げろーーー!」


 ふふふ……人族が恐怖で混乱し始めた! いいよいいよお兄ちゃん!


「クックック……クククッ……フハハハハハハ! 聞けーーー! 人族よ!」


 お兄ちゃんがバッ! と黒いマントを脱ぎ捨て──亜空間にしまった。うん、また使うかもしれないもんね。


「俺は魔王直属精鋭部隊、四天王が一人! 『残夢の呪縛』! 人族を()べる者だ覚えておけ! 我ら四天王が人界を、征服する!」


「魔王⁉ 征服ですって⁉」

「攻撃される! 逃げろーーー!」

「ついに来たのか⁉ アホリューはどこ行った!」

「……無の呪縛? 何だ?」

「ザンムーバック? それが奴の名前か!」


 人族へのこうかはばつぐんだ!

 ……でも二つ名がすんなりと受け入れられてない。お兄ちゃんがムッとしてないといいけど。


「静まれ! 本来人界征服は魔王の使命! ……だが我らの頂点、魔王は人界を征服するどころか人族と友好関係を結ぼうとしている! そのような腑抜けた魔王を我ら四天王は見限った! 人族への攻撃禁止命令を出した魔王、そしてそれに従うすべての魔族! 我ら四天王四人は全魔族に失望した!」


 身体強化で細部までお兄ちゃんの顔が見える私にはわかる。顔に血管が浮き上がらせながら目を見開いて、メイリアさんみたいな猟奇的な笑みを浮かべているのは演技じゃないな……。

 魔王様の事を「魔王」なんて呼び捨てに出来る機会は今しかないから、絶対「悪いことしてる感」で興奮してる! 「魔王」呼びと厨二臭い役、ダブルで興奮してる!


「だから……我ら四天王がこの国を奈落の恐怖へと陥れてやろう……。まずはこの俺、『残夢の呪縛』様がなァ!」


 お兄ちゃん、二つ名をもう一回言った。


 ついに四天王戦第一弾が始まる……。




ガチムチなのに末端冷え性のラウンツさん。

10/8(金)はお休みします(∩´ω`∩)

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