ゴブゴブ!
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「コーディ、今日もラウンツとルルはダンジョンか?」
「あ、はいっ! 今日は36階層以降を攻略するみたいです」
コーディさんから解放されたお兄ちゃんはすすす……と私の後ろに隠れた。 ちょ、隠れても無駄だってば。
「人族はどこまで攻略してる?」
「10階層を攻略するパーティが出始めたところです。 あといいお知らせがあります! 9階層までの宝箱は中身が自然発生するようになりました!」
「おっ! 赤字回避出来そうだな! お疲れ!」
「はいっ!」
「明日ドワーフと獣人を連れてきて1階層に住まわせる。 だから今日から1階層だけは素通りするよう冒険者に伝えたいんだが」
「そうですか! ではとりあえず今日は僕が外から、ラウンツさんとルルさんには中から誘導してもらいますよ。 念話しておきますね」
「頼んだ。 あとなんかいい感じの看板もよろしく!」
「はいっ!」
メイリアさんの方を見ると、錬成台に薬草がこんもりとあった。
「メイリアさんただいま。 採集に行ってきたの?」
「……違う……冒険者がくれた……」
「え? 買取りじゃなくて?」
「最初に買取りに来た冒険者さんが何故か置いていったんですよ。 それからみなさんお土産に持ってきてくれるようになりまして……」
「メイリアは素材を前にした時だけ笑顔になるからな! それが見たくて勝手に貢いでるんだろ。 ははは!
あ、そうだメイリア、ディメンションの系列店が出来たらここの店を離れる事になるけど、錬金術師で誰かいいやついないか?」
「……友達いない……」
「……そうだった。 お前の爺さんから友達作りのために推薦されたんだったな……」
ええ!
「メ、メイリアさん! 私とは友達だよね?」
「メイリアちゃんとはとっくに友達だよ!」
「お、俺も友達だぞ」
「……ありがと……」
メイリアさんが笑った、よかった! そしてメイリアさんの笑顔は確かにレアだ。 冒険者さんの気持ちも分からなくない……。
「錬金術師は俺が探しとく。 ドワーフ達を守るためにダンジョン経営の魔族も増やさないとな」
また拳によるお話し合いが開かれるのかな……。
「じゃあ1階層に行くぞ」
? 何しに行くんだろ。 木とか切るのかな?
ディアブロ1階層の真ん中に来た。 冒険者さん達はせっせと採集している……メイリアさんへのお土産かな。
「おーい! ちょっと工事するから悪いけど2階層へ行ってくれ!」
魔王様が拡声魔法で呼びかけると冒険者さん達はビクッとなって2階層へ向かって行った。
「じゃ、ゴブリン達を呼ぶからビックリするなよ」
え? と思ったら魔王様から禍々しい魔力が溢れ出した! 息苦しいよぅ!
「クッ……まだだ、まだ時刻じゃない……ッ‼」
アーニャは左眼をおさえて何かと戦っている。
「スゲー! 魔王様の覇気久しぶりだ! ちょっと苦しいぜ!」
するとすぐに魔王様の覇気はおさまった。
「おーい! ゴブリンちょっと集合してくれ!」
「魔王様、ゴブリンと意思疎通できるのですか?」
「ん? おお、俺の作ったダンジョンだからな! ちなみに魔物は死ぬ直前に素材を残してコアが回収される仕組みだから、実は魔物は使い回しだぞ」
「ええっ!」
「エコだエコ!」
何回も倒される魔物さん達が可哀想だよぅ! ラウンツさんに倒された魔物さんトラウマになってないかな……。
少しすると茂みからガサガサとたくさんのゴブリンが恐る恐るやって来て、魔王様の前に平伏した。
「みんなお疲れ! 明日からドワーフと獣人がここに住むんだけどさ、2階層に行ってくれる事ってできるか?」
「ゴブッ⁉ 2かいそうへいくとなわばりあらそいがキツいゴブ!」
ちょ、ゴブリンしゃべれたの⁉
「あ、そうなのか」
「ゴブ……」
「うーん……じゃあさ、1階層に住んだままでいいけどドワーフと獣人には攻撃しない事ってできる? 先に住んでるお前らには悪いんだけどさ。
冒険者達にもこの階層は素通りするようにさせるぞ。 もちろん正当防衛はしていい」
「ゴブッ! それならいいゴブ! 1かいそうはぼうけんしゃがたくさんくるからたいへんだったゴブ!」
ゴブリンさんにも悩みがあったようだ。
「俺はホワイト経営だから安心しろ! 他の魔物も悩みがあったら魔族に言うよう言っとけ」
「ゴブ!」
「ニーナ、川の近くに引っ越すから案内してくれ」
「あ、はい」
川のある方へ向かいつつアーニャが話しだした。
「魔物と話せるなんてディアブロは楽しいね!」
「今まで問答無用で倒してたからなんか罪悪感がわいてきたぜ……今度から戦う前に話しかけるか」
お兄ちゃんの意見には賛成だ。 ラウンツさん被害者の会ができる前に何とかしよう! と決心したところで川沿いに着いた。
「お、ここか」
魔王様の魔力が放出されたと思った瞬間には周りの木々は消えて、草原になった。
「魔王様……ダンジョンを作り変えられるんですか?」
「少しならな。 木を伐採しても元通りになっちゃうから根本を変えたぞ」
「さすが魔王様です!」
お兄ちゃんは興奮している。
「ええい! 恥ずかしいからもう帰る!」
出た、〈ちーと〉を恥ずかしがってる。
「そういえば魔王様、ダンジョンの魔物と話せるならキャラリアに作ったダンジョンでも良かったんじゃないんですか?」
「あーそれな、キャラリアは周りが鉱山のせいか、岩石エリアのダンジョンしか出来なくて住めなかったんだよ。 魔物の肉だけ食って生きていく訳には行かないからな。
あといくら魔物と話せるとはいえ、家の周りが強い魔物ばかりだと精神的に落ち着かないだろ? スタンピードは俺も制御できないしな」
「なるほど……確かにそれを聞くとここは住みやすそうですね」
「魔王様! 俺たちの家もここに作りましょう!」
お兄ちゃんは個室で寝たいらしい。
「商業ギルドの許可を取れるのが長引くなら考えるか……」
お兄ちゃんはこっそりガッツポーズをしていた。 早く許可をもらえるよう頑張らないとダメだよぅ?




