三人称:強制三国会談 もうぶっちゃけ~
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会談の間にやっと落ち着いた雰囲気が戻る。
ひと悶着あったので魔王含む三人の王には新しい茶が出され、まずオルガ国王が懐から毒見の魔道具を取り出した。ルルとメイリアが作製した魔族からの献上品である。
アレイル国王のいぶかしげな視線を受け、オルガ国王が独り言のように呟いた。
「これは毒見の魔道具での、これが出来てから毒見役と時間が減って助かっておる。魔族からもろうた友好の品じゃ」
「っ! バルフレア国王! やはり魔族と手を組んでおるな⁉」
バルフレアとはオルガ国王の名前である。
オルガ国王はアレイル国王がこう来ることを分かっていた。さっさと話を進めるためにあえて魔道具を出したのである。
「どう思われるかは他者が決める事じゃからの。アレイルから見て魔族と手を組んでいる我が国は何をしようとしているのかの?」
「それは、わが国への侵攻であろう!」
いきなり一触即発の発言である。
しかしアレイル国王とオルガ国王は旧知の仲、「魔王が出て来たらこの話を出して良い」とお互い阿吽の呼吸で分かっていた。
アレイル国王の予想では、魔王はアレイルを征服する話をするためにやって来たのだろうから。
オルガ国王は、未だ完全に信じられないが魔王が戦争を止めるためにやって来たと知っている。
この二人、仲がいいのか悪いのか謎である。
「……我が国オルガから見たアレイルはオルガへ侵攻しようとしているように見えるがのう? アレイルは食糧と武器をアレイル都市や南部に集中させているという情報が入っておる」
「同盟国にそのような事をする訳が無かろう! 蝗害が起きても政治の中核であるこの都市だけは平常通りそれらを集約する必要がある! 南部はオルガからの食糧輸入経路であるからそう感じるだけであって、心外だな! そもそも疑惑の発端は魔族を受け入れたオルガであろう⁉」
アレイル国王は蝗害が発生してもルーガルから武器の輸入を続けている話を流し、オルガ国王もまた今はその話題に触れないでいた。
砂糖とミルクをたっぷり入れた紅茶を毒見の魔道具でくるくるとかき混ぜながらオルガ国王はこう続ける。
「……この魔王の前で何が出来る? 勝手に入ってきた魔族を追い出すことは不可能じゃ、ならば幸い少数の魔族を監視・警戒するしか策は無かった。それにドワーフの武器防具はアレイルへも流したであろう? ドワーフが産出する武具の流通は冒険者止まりじゃ、軍へ支給するには数が足りなさすぎる。そして魔族がオルガへ売ったのはこのいくつかの毒見の魔道具のみ……我が国は何一つ軍事力など上がっておらぬのじゃよ」
「少数でも一騎当千の魔族こそがオルガの新たな軍事力であろう……」
アレイル国王は忌々し気にオルガ国王を睨んだ。
「それこそ心外だな! 俺様は魔族に人族への攻撃禁止命令を出して細々と飲み屋をやってるだけなのによぉ!」
じっと二人の話を聞いていた魔王がやっと卓上から脚を下ろしヘラヘラと口を挟んだ。
一千万のボッタクリペガサスデコを目の前に「細々」とは一体。
「まずよぉ、俺達魔族がオルガに加勢する意味が無ぇ。アレイルを落とすつもりなら魔族だけで出来る。っていうかその前にとっくにオルガを征服してる。オルガでやってる事は酒場経営とドワーフと獣人の保護だけだ! ドワーフと獣人の人権を守るために魔族がオルガを監視してんだ、そこんとこ間違えんなよ?」
アレイル国王は魔王の言葉が事実である事もまた理解していた。密偵にディメンションやエルドラド含むダンジョン・ディアブロの情報を探らせていたからである。
だが、歴史が語ってきた魔族の気質からしてにわかには信じがたい。魔族とは人族を家畜と同等に見ている種族なのだ。
そしてアレイルはもう元の道には戻れない。例えドワーフの武器が多少手に入ったところでルーガルに攻め込む気など無かったが、オルガより軍事力の高いルーガルから半ば脅迫され従ってしまったのだから。
「……オルガの用心棒として金儲けをしているであろう? オルガから金を吸い、我が国を手中に収めオルガ国の属国にし、本命はルーガル辺りではないのか?」
アレイル国王が言っているのは十万ディルのクラリゼッタの領収証の事。実はアレイル国王はルーガルから現物を見せられていた。
領収証などアレイルに撒かれたビラのようにルーガルがいくらでも捏造できるが、オルガが魔族へ継続的な資金提供をしてその力を借りようとしていてもおかしくはない。だからたった一枚の領収証の真偽など些細な事であった。
「オルガで金儲けしてるのは恋物語の酒場、あ、ディメンションって言うんだけどさ! ディメンションだけだぞ? ってかさ、いくらディルを稼いでも魔界のルインにはならねぇから完全に俺様の趣味だぜ! んで次はアレイルをオルガにやるって話か? そんなことしてもさー、オルガがアレイルを征服完了するまで人手と時間がかかるだろ? もし俺様がルーガルを狙ってるんならそんなまどろっこしい事せず直接ルーガルに突っ込むな。昔ルーガルに一発入れたのは狙ったんじゃねぇ、魔界から近くて強そうな城の形をしてたのがルーガルだっただけだ! だから魔界に近いアレイルとイリアはルーガルに感謝しろよ?」
謎の感謝を強要する魔王。そもそもの元凶は魔王である。
そしてニーナの予想「魔王様、絶対強そうだからって理由だけでルーガルを選びましたね?」、実は当たっていた。
ちなみにイリア国はルーガルの西に位置する国だ。
「ハッシュウェート国王よ……魔王の言う通りじゃ。本当はそなたも分かっておるのであろう? ……この事実を受け入れる事によって困る事が何かあるのではないか?」
オルガ国王は同情の色を隠さずふさふさの眉を下げた。オルガ国王としてではなく、アレイル国王、ハッシュウェート・ヴェム・アレイル個人の友人として。
「無い」
だがアレイル国王はピシャリと即答。今さら浮気相手のルーガルを振って元カノのオルガとヨリを戻そうとしても、浮気相手が着々と準備している刃物がこちらを向くだけなのだから。
アレイル国王の取り付く島もない態度で会談の間が沈黙する。
しかしすぐさま口を開いたのは魔王であった。
「おうおう……俺はアレイル国王みてぇなヤツを散々見てきたぜ。アレイルの考えてる事なんざ全てお見通しだ。……なぁ? ゲロっちまえよ? 楽になるぜぇ?」
その時、外で雷鳴が轟いた。
真っ白な光が一瞬、人形のように綺麗な魔王の顔をよりいっそう人ならざる色へと塗り替える。
実は魔王が無詠唱遠隔発動した雷魔法であった。やはり演出は大事らしい。
輩に絡まれたアレイル国王、ピンチである。
上半身を卓上に伏せた魔王のニヤニヤとした上目遣いは、ただただタチの悪いガン付けにしか見えない。これが幼子であったらさぞいじらしかったであろう。
だが残念ながら目の前にいるのはアーデルハイドくん33さい、しょくぎょうまおうである。
再び魔王のターン、事情聴取が開始される。
9/17(金)はお休みします(`・ω・´)
生活リズムに余裕が出てきて楽になりました。いつも更新後にお読みくださりありがとうございます(∩´ω`∩)




