つよつよ必須アイテム
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「レイスター! 四天王の出番だ!」
「ッ! お任せくださいっ! どこにおびき寄せますか⁉」
ぎゃぴっ⁉ さっき魔王様、まだ四天王戦はしたくないって言ってなかったっけ⁉
「いや、都市で勇者とすれ違うだけでいい」
「えっ?」
「えっとな、邪なる者が本当にいるって事を匂わせるだけに留める。例えばすれ違いざまに『フッ……面白ぇ奴みーっけ……』とかって言うんだ! これも鉄板の台詞だぞ!」
うわダサい!
「うおぉおおお! 何だそれー! 謎っぽくてカッコイイです! やります!」
「レイスターいいなー! 私もやりたい!」
お兄ちゃんとアーニャの琴線にはビシビシくる台詞だったらしい……。
「魔族だってバレないようにフード被った方がいいですか⁉」
「そうだな、都市で魔族ってバレると流石にマズイ。角のせいでフードの形がちょっと不自然になるだろうから一瞬で終わらせよう! レイスターはよくある茶髪だからいいけど、アーニャの水色の髪は念の為隠しておきたい。アーニャ我慢できるか?」
「クッ……! 今回は我慢するよ魔王様! メイリアちゃんに染毛剤をお願いしておこっと!」
「アーニャ悪いな! 四天王最弱ってやっぱり美味しいですね魔王様!」
歯を食いしばるアーニャを魔王様がなだめてお兄ちゃんが謝るほど美味しい役らしい……私には死ぬほど恥ずかしい以外の何物でもないけど。
「おう! 四天王最弱はたまんないよな! じゃぁ俺とレイスターが都市の物陰にシュッ! と転移して、レイスターは勇者とすれ違ったら〈縮地〉でまた物陰に隠れろ。んで俺様が回収して終了だ!」
「かしこまりました!」
「レイスターちゃん頑張ってっ☆」
「レイスターの本領発揮だね! クールキャラ設定でいくんだっけ?」
「ああ、クールなインテリ系だぜ! じゃちょっと着替えるな!」
お兄ちゃんはクールなインテリ系に憧れてたんだな……。私達の後方へ移動したお兄ちゃんがゴソゴソと着替え始めたみたい。
「ル、ルルさん……魔王様の作戦、大丈夫ですか?」
魔王様は前科があるからルルさんに確認してみた。
「……まぁ、これくらいなら大丈夫じゃないかしら……」
……ルルさん諦めてないよね? 本当に大丈夫だよねっ⁉
「あっ! 偵察キャラって言ったら棒付き飴が必須アイテムだな! ちょっと買ってくる!」
……魔王様が謎の小道具を買いに転移してしまった。なぜ飴を……。
「着替えたぞ! どうだ!」
お兄ちゃんの声でみんな一斉に後ろへ振り向いた。
……すごく……髑髏です。
お兄ちゃんは目と口以外を覆う銀色に光る髑髏の仮面を着けていて、黒いロングマントの下には前に見せてもらった髑髏が沢山描かれたシャツと所々破けている黒のズボンを装備していた。もちろんズボンには用途不明のチェーンが何本も付いている。装備力はほぼ無い。
「レイスター最高だね!」
「レイスターちゃんカッコイイわぁ!」
アーニャとラウンツさんはノリノリだ。
「ただいま! 飴買ってきたぞ! ……ぶはははは! ヤベェ! 俺も昔そういうの着てた!」
帰ってくるなり大爆笑の魔王様……やっぱり魔王様にも厨二病の過去が……。
「……魔王様、早くしないと勇者が宿へ帰るわよ」
「お、ルルサンキュー。ラウンツ、俺にマント貸せ」
ラウンツさんがお兄ちゃんと同じような黒のロングマントを魔王様に差し出し、魔王様もすっぽりとフードを被った。
……角が立派過ぎて目立つけど魔王様は人前に出ないからいっか。
「ラウンツサンキュ! レイスター、この飴をずっとしゃぶってろ。じゃ、行って来るな!」
「……? はい」
短い棒が付いた飴を咥えたお兄ちゃんと魔王様は転移で消えた。
二人の魔力を追い、身体強化で都市の中を見てみる。集音魔法も発動。
魔王様とお兄ちゃんは勇者の向かう先の物陰に見事隠れていた。
あっ! お兄ちゃんが通りを歩き始めた! このまま勇者とすれ違うんだ、飴の意味がよくわかんないけど頑張って!
「今日はミルムの好きなドラゴンステーキ食いに行こや!」
「……ウチは許したわけやないで? でもドラゴンステーキは食べる……」
「フッ……面白れぇヤツ、みーっけ……」
「?」
「?」
三人は一瞬目が合ったように見えた。でもお兄ちゃんはすぐさま〈縮地〉で横道にそれた。
「……なんや? けったいなヤツ……」
「……なぁ、セレネー様がもうすぐそこまで迫って来とる言うてたヤツって……」
「えっ⁉ 今のヤツなん⁉」
「怪しすぎるやろ……動きが目で追えへんかったしヤバいで。リュー、目ぇ付けられたな……。やっぱウチは他人や! ほな!」
「アカンて! 怖いから一緒におってや!」
「ウチ勇者やないから関係あらへん!」
「そんな水臭いこと言わんと! 頼む! 夜しょんべん行かれへん!」
「嫌や! おしめしとき!」
魔王様とお兄ちゃんが私達の所に帰って来た。
「俺の演技どうでしたか⁉」
「バッチリだ! いいキャラだったぜ!」
「くぅ! レイスター最高だったよ! あの飴がキャラとギャップがあっていいね! 魔王様さっすが~!」
「アーニャは分かってるな!」
分からない私の方がおかしいのだろうか……? いや、きっと魔王様とアーニャみたいな厨二病上級者アイテムなんだ。
「勇者ちゃん達怯えてたわネッ☆」
「よーし! これで今日の仕事は終わりだ! みんなお疲れ! 帰ろうぜ」
やっと終わった……。
魔王様にディメンション二階へ転移させてもらったけど、もうご飯は食べたので私はメイリアさんに念話した。
やっぱりまだエルドラドにいる! 営業中の一階のバックヤードへ移動し、キッチンのジルさんにご飯のお礼を言ってからディアブロへ転移してメイリアさんの元へ向かった。
ああっ! メイリアさんが倒れてるっ⁉
「メイリアさんっ! 大丈夫ですか⁉ 夜中まで私が卵見てますから帰ってください!」
「……ん……ありがと……」
メイリアさんは敷物を敷いて横になりながら観察していただけみたいだ、よかった……。
あとちゃんと部屋で休んでくれるみたいでそれもよかった。
そして私はメイリアさんが置いていってくれた敷物の上で膝を抱え座った。このまま夜中まで卵の埋まっている土をボーッと見ることに。
今日も忙しかったなぁ……。
あ……食糧……どうなったんだろ……。捨てられちゃったのかな……。
……魔王様が思い付きで「魔族より」っていうメッセージを挟んだせいだ、と魔王様のせいにするのは簡単だ。
でももう私は大人。誰かのせいにしても問題の根本的解決にならないことくらい分かる。
もし魔王様がメッセージを付けず食糧だけ輸送したとしたら。人族にとっては突如現れた謎の食糧、やはり何かしら警戒するだろう。
ならやはり出所を明確にした方が人族にとっては迷いが少なくて済む。
人族の迷いとは「いい魔族」の存在を信じるかどうか。
なら信じてもらえるようにすればいい。
……でも私はみんなと人界征服するつもりでいる。人族にとって私はいい魔族じゃない。
どうしよう……。
「ニーナ」
「ぎゃぴっ! ……なんだ、お兄ちゃん……」
私の隣に来たお兄ちゃんが足を放り出して座った。
「どっか行ったから心配で来たぞ」
「あ、ご、ごめんね……メイリアさんに休んでもらうために卵の観察を交代したんだ。さすがに日付が変わる頃には戻って寝るよぅ」
「……ニーナなんかあったか?」
「へっ? なんで?」
「明らかに元気無いぞ。……ビラの事とかムーバーイーツの事とか気にしてんのか?」
「……あああああっ! ビラも私のせいだ! ムーバーイーツの言い出しっぺも私だし! どっどどど、どうしよう⁉」
「……え、じゃぁ今さっきまで何に悩んでたんだ?」
「……いい魔族じゃない私が配った食糧をどうやって信じて食べてもらうか……?」
「はぁ? へっぽこニーナは人族にとっていい魔族だろ」
……え? 何で?
9/9(木)はお休みしますm(__)m
無理なく隔日更新にしようかなぁ(・´ω`・)困ッタネェェ




