とある伯爵夫人:看板作り 前編
また新モブ増やしてごめんなさい(´;ω;`)
看板作りだけだと全く盛り上がらなかったので、今回はカテリーナという伯爵夫人を軸として看板作りのお話を進めていきます。4~5話くらいかな?
オルガ王妃はクリスティーネ。(アリアやディオルの母)
カテリーナとクリスティーネは、看板作り回以外ほぼ出てこないので後で忘れても大丈夫です。
わたくしはカテリーナ、ベルツ伯爵家に嫁いで16年あまり……。
なぜわたくしが平民街の仕立て屋などへ来てしまったのでしょう⁉ 貴族にとって商人は屋敷へ呼びつけるものですのに!
「看板ニャー! 楽しみニャー!」
「くっ……! ルナとディアナにも見せてあげたかった……っ! なぜ私の目には動いている風景を記録する機能が無いのっ⁉」
ナイトの隣に立つお客様が9人いるのでどうやらわたくしが最後に来たようです。
すでにワイワイガヤガヤニャーニャーとやかましいですわ。ああ……やはり来るべきではなかったかしら。
いえ、平民と同じ空間にいる事にはもう慣れましたのよ? あの方も耐えていたのですもの!
そう、アレンが是非是非と言うから仕方なくですわ! アレンと外で会える機会など他にないですし……。こ、ここまでして会いたいという事はわたくしがアレンの特別という事ですわよね⁉ そうですわよね⁉
……ですから仕方ないわ、わたくしも特別に足を運びましてよ。アレンがそこまで言うのであれば、ええ。
それにしても……それにしても……相変わらず平民はなんて破廉恥ですこと⁉
「ルフラン~! 看板チョー楽しみだね!」
「おいやめろカリンくっつくな」
「ケチ~!」
ああ! もう! コルセットも付けずあんなにだらしのない格好で殿方の腕にまとわりつくなんて! おやめなさい! 淑女としての価値が下がってよ⁉
カリンという娘とその周りにいる4人の娘達はディメンションでもよく見かけましたわね……。皆、素手で手……手を繋いで! いくら平民とはいえ人前で! ここはディメンションではなくってよ⁉
ハッ⁉ あああああ! 何てこと⁉ マーガレット様までいらっしゃるじゃない! どうしましょう! お声をかけて下さらないかしら⁉ でもでも、アレンが店の外でも他のお客様とお話ししてはいけないと言っておりましたし……。
「カテリーナ様、やはりご気分がすぐれませんか?」
ハッ! 何てこと⁉ また顔に出てしまっていて⁉
「何でもないわアレン。初めての場所に少し、そう、ほんの少し戸惑っただけですわ。貴方の余興を楽しみにしていてよ」
「そうですか、お誘いしてよかったです」
そう言ってアレンはいつも通りアメジスト色の目を綺麗に細めましたわ。わたくしは頬が赤くなる前にそっと扇子を広げます。
くっ……! こんなにも見目麗しい者が平民だなんて! 平民でさえなければ娘の婿にする事もやぶさかではなかったのでしてよ⁉
……いえ、我がベルツ家はそれどころではないのでしたわ。
そう、あれは二週間ほど前……。
──────────────
「カテリーナ様ぁ~! クラリゼッタ様が新しい社交をお始めになられたそうですよ~!」
メリッサが相も変わらず侍女らしからぬ言葉使いでパタパタとわたくしの部屋へやって来ました。全く、いくら男爵家出身とはいえメリッサはまるで平民のようですわ。
「メリッサ! その言葉使いと走るのは……クラリゼッタ様ですって⁉ あの社交嫌いのクラリゼッタ様が⁉」
「はい~、でも最近おやめになったそうです~。今は療養中とか~何があったんでしょうねぇ?」
「なんですって⁉ なぜもっと早く!」
「だって~ベルツ家は弱小派閥所属ですからぁ、情報が入ってくるのが遅いんですよ~」
「ですから! クリスティーネ王妃派閥にお近づきになるために奔走しているのでしょう⁉ 情報が遅くては意味がなくってよ⁉」
くっ……! わたくしの夫の母はアレイルからベルツ家へ嫁いだアレイル出身です。ですからお義母様の社交はあまり上手くいかず、ベルツ家は伯爵家でありながらオルガでの影響力は弱いのです! だから娘にも中々いい縁談が無く……。
……いえ本当は、今までお義母様を理由に、社交が苦手なわたくしも最低限の社交しかしてこなかったツケが回ってきたのですわ。
ですから! わたくしが変わらねばならぬ時が来たのです! クリスティーネ王妃派閥とも繋がる事が我がベルツ家の繁栄に必要なのです!
最新の情報を仕入れるための情報が遅いですわ! この負のスパイラルをどう抜け出したら……。
「とりあえず~今からでも行ってみてはいかがですか~?」
「……行くとはどこへ?」
「魔王が経営していると噂の恋物語の酒場です!」
わたくしが倒れたと気付いた時にはすでにベッドの上でした。
翌日、早速恋物語の酒場とやらに向かいました。今はどんな情報でも欲しいのです!
馬車の中から見えたのは、まだ昼間ですのにやたら発光の魔道具でピカピカと照らされた小さな宮殿……ここだけ貴族街のようですわ!
「薔薇の生垣に宮殿……まるで──」
「あ、カテリーナ様ぁ、なんか上の方に大きな姿絵がありますよ~イケメンですねぇ」
わたくしの言葉を遮るメリッサ! まったく──何ですの⁉ あのように大きな姿絵がなぜ平民街に⁉ 盗難されるのでなくって⁉ それよりもなんて美しい姿絵かしら! あの者がこの酒場で給仕しているという事でして……?
ともかく、馬車を降ります。この程度で驚いていては魔王の陣地に踏み込む事など出来ません!
あああ! 何てこと! 入り口前の地面が桃色に光っていますわ! 昼間なのになぜ⁉ なぜ文字が描かれていて⁉ どういう技術ですの⁉
「すごいですね~。あ、カテリーナ様、入場はおひとりらしいですよ~本当に護衛を置いて行って大丈夫ですかぁ?」
「……クラリゼッタ様もおひとりで勇敢にこの魔王城で戦ったのよ⁉ 大丈夫です、では行って参りますわ……」
「ここでお待ちしていますね~」
……何かあったら念話で助けを呼びましょう。
メリッサが入口ドア横のボタンを押します。すると自動で扉が開きました! 発光の魔道具といいこの扉といい、なんて魔道具の無駄遣い!
しかしこの扉、閉じ込められるのでは──
「「「おかえりなさいませプリンセス‼」」」
な……なんてこと! 白い騎士服を着た眉目秀麗な者達が通路の左右に並んでおります! どういうことですの⁉
ハッ! いけません、ここは戦場なのです! クラリゼッタ様の情報を!
黒い角が生えた茶髪の若い男性がわたくしに話しかけてきました。……魔族が本当にいる!
緊張を悟られないよう、優雅に歩みを進めその者の後を付いて行きます。……話を聞いていなかったわ、なんという不覚!
案内されたのは店の奥の一段高くなっているスペースにある席、悪くないですわ。
……ソファの素材は見た事が無く、金細工の造りからして一目で一級品とわかります。このテーブルも……ああ! よく見るとシャンデリアまで我が家より豪華だわ!
視界の端で何かが動いたのでそちらへ目をやると、案内をした魔族がテーブルを挟んでわたくしの向かいに跪きました。……その態度は悪くなくってよ?
そして彼はこの店のマナーやシステムを説明し始めます。
……説明を一通り聞き、この店がなぜ「恋物語の酒場」なのかが分かりました。
こ、こんな社交の場は初めてすわ! ここでクラリゼッタ様はおひとりで戦っていたというの⁉ あの社交嫌いのクラリゼッタ様には酷です! ただでさえ普段の社交の場にもあまりお顔を出していらっしゃらないのに!
くっ……! クラリゼッタ様は魔王の動向調査のために、毎日神経をすり減らせながら死と隣り合わせの戦いを……きっと国王様の命でしょう、ああおいたわしや! ですからさすがに療養が必要なほど追い詰められて……?
「気になるナイトがいましたら呼びます、誰かいますか?」
ハッ! また話を聞いていなかったわ!
「そうね……このわたくしを満足させられるだけの者はいて?」
野蛮な魔族に意味が伝わるかしら?
分かっているわよね⁉ クラリゼッタ様とまではいかずとも、クリスティーネ王妃派閥の者と繋がっているナイトをお呼びなさい! できれば侯爵、公爵クラスのお客様と繋がっている者を呼ぶのですよ⁉ 絶対ですわよっ!
一部貴族の間ではディメンションが魔王城と呼ばれていたんですねw
クラリゼッタが魔王と戦った勇者説浮上。
呼ばれたお客様は無難にこうなりました。↓
New!カテリーナ(アレン)、アンナ(ミア)、カリン(ルフラン)、キキ(ネフィス)、ララ(セシル)、ミミリン(ヴァン)、マリン(アッシュ)、マーガレット(バレット)。その他はナイト未登場なので割愛。
1話と2話に挿絵が付きました!




