ドワーフと獣人
たくさんのブクマ評価ありがとうございます!
今朝はみんなでお店の様子を見てみる事にした。 宝箱に入れる宝はすでにルルさんに渡してある。
カウンターに立つのはルルさんメイリアさんとコーディさんだ。 残りの人は店の奥で観察。 魔王様はふんぞり返って椅子に座っている。
早速冒険者さんが恐る恐るやって来た。
「メ、メイリアちゃん、俺ら今日6階層に行くんだけど、何か必要かな?」
「……麻痺薬と、ボス対策に毒消し持っていった方がいい……」
「そ、そっか! じゃぁ5個ずつお願い」
「……ん……」
冒険者さんはテントに帰って行った。
「今日俺メイリアちゃんとお話出来たぞ!」
「何っ⁉ 昨日俺は何も話せなかったぞ!」
「5階層まではポーション必要ないからな。 どうだ羨ましいだろ!」
「くそぅ! 俺はピンチになったらルルさんに助けてもらうんだ! 救援魔道具を買ってくる!」
同じテントから別の冒険者さんがやって来た。
「あ、あの、今日はボスまで行くかもしれないから救援魔道具を買おうか迷ってて……」
「あら、頑張ってね。 刃物は効きにくいけど大丈夫?」
「は、はいっ! 俺のバトルアックスなら打撃もできますから!」
「そう……今日は私、ダンジョンに潜る予定だから何かあったら駆けつけるわ」
「……‼ 救援魔道具下さい!」
「はい、無理しないでね」
ルルさんが冒険者さんの手を包み込むようにして魔道具を渡した。 冒険者さんは耳まで真っ赤になってテントへ帰って行った。
「どうだ! 俺の演技指導はバッチリだろ!」
「凄いですね……見事に売れてます」
「メイリアは普段塩対応だからな、喋るだけでレアだ。 ルルのボディタッチもこうかはばつぐんだ!」
「何となく魔王様が言っていた事がわかりました……ホント心理戦が得意ですね」
「まぁな! プロだからな!」
異世界の経験かな?
「じゃあ店も順調だしドワーフ達の隠れ家に行くか……」
「魔王様、何だか元気がないですね?」
「ああ、うん。 昨日ドワーフに念話したんだけどちょっと行きたくないなーって……」
何かあったのかな?
「魔王様! イケメンの獣人が私を待ってるよ! 行こうよ!」
「わかったわかった、じゃあ残りの4人はダンジョンをよろしくな」
そう言って魔王様は私とお兄ちゃん、アーニャを連れて転移した。
急に転移するのやめてってばぁ……。
「うお! 岩だらけだな。 もうキャラリア山脈ですか?」
「そうだぞ。 あそこに洞穴が見えるだろ? あれがダンジョンだ」
周りを見渡すと、高いはげ山に囲われている。 ここは山脈の中にある低地みたいだ。 こんな険しい山々に囲まれているなら隠れ家にピッタリだな。
「ダンジョンの中に住んでるってどんな感じなんだろ! 早く行こうニーナ!」
「ま、待ってぇ」
魔王様達に着いて行ってダンジョンへ入ると草原が広がっていた。 木造のおうちらしきものがたくさんある。
「ドルムー! ミアー! いるかー?」
魔王様が呼びかけると、お家から小さいひげもじゃおじさんがバッ! っと出てきた。
「ハイド! どの面下げて来た⁉」
「ごめんごめん! もう反省してるから昔の事は水に流してくれよ……」
「お前のせいでカルムがいまだに嫁に行かんぞ! どうしてくれる!」
……魔王様、何やったの?
「ハイド様ニャ⁉」
今度は猫っぽい人が来た、獣人さんだ! 頭の上でピコピコしてる耳と尻尾がモフモフ! 青っぽいグレーの毛並みが綺麗だな。
「お! ミアおっきくなったな!」
「ニャウ!」
「ハイド! 無視か⁉」
「いやぁ……ホントすまないって」
「魔王様、なぜ怒られているのですか?」
「あー……俺も昔は若かったからさ、可愛い子には挨拶代わりに口説いてたんだよ。 そしたらまだ子供だったカルム、このドルムの娘が懐いちゃって……ドワーフって子供か大人か分かりにくいんだよな」
「魔王様チャラかったんだね!」
「アーニャ……うん、確かに昔の俺はチャラさ100パーセントで出来ていたな……」
魔王様ぁ……。
「全く! それで大事な用とはなんじゃ⁉」
「まぁまぁ、ゆっくりさせてくれよ。 俺の配下も連れてきたんだ、茶でも出してくれていいぞ?」
「お前に出す茶などない」
「じゃあ僕のお家に来るニャ」
男の子なのかな?
「イケメンだね! 私はアーニャ、よろしくね!」
「レイスターです、よろしくお願いします」
「ニッ! ニーナです!」
「よろしくニャ。 ちなみに僕は雌ニャ」
……アーニャがショックを受けてる。
なんだかんだドルムさんも一緒にミアさんのお家に来た。
「久しぶりだからな、手土産を持ってきた」
魔王様がドラゴン酒を出した。
「おお! カッコイイの! ……ん゛ん゛っ……だがこんな物では騙されん!」
「別に許してもらいたい訳じゃないぞ。 ちなみに邪龍のヒレが入っているこの世でただ1つの酒だ」
ドルムさんの耳がピクッとした。
「あと邪龍の素材も持ってきた」
ドルムさんの耳がピクピクッとした。
「ところでさ、このダンジョンまだ持ちそうか?」
「その件か……ダメじゃな、2階層は落盤が酷くてもう住めん。 今はこの1階層で何とか暮らしておる」
「ハイド様、ダンジョン作りはどうなったニャ?」
「朗報だ、ゴブリンしか出ない森のダンジョンが出来たぞ」
「ホントか⁉」
「ニャー!」
「ただ場所がオルガの城下町近くなんだよ。 ホントは住み慣れたこの山脈に作ってやりたかったんだけどな」
「人族怖いニャ!」
「む、鉱山もちと遠くなるのう」
「あ、あのっ! ダンジョンは私達魔族と魔王様が管理しているので、人族は手を出して来ないと思います……」
ずっと魔王様はドワーフさん達の事を気にかけてたみたいだからきっと守ってくれるはず。
「俺達にはドワーフさん達の力が必要なんです」
「ワシらの力?」
「うん、実を言うとダンジョンが出来たばっかで宝箱が空っぽでさ、ドルム達ドワーフに宝箱に入れる武器を作って欲しいんだ。 ミア達獣人はダンジョンの管理をしてほしい。
俺が魔王として責任をもって安全を確保するからさ、来てくれないか?」
……静寂が流れる……。
「あ! ミアちゃん! ダンジョンではラヴィも飼ってるよ!」
「ラヴィ⁉ 行くニャー‼」
じゅ、純粋すぎるよぅ!




