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【まおホス!】魔王様のホストクラブ作り!……に振り回されて大変です!【表紙挿絵有】  作者: つーちゃん
第五章 ちょっと戦争ブッ飛ばそうぜ
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カス勇者

「イケメン⁉ 魔王様、私も見たい見たい!」


「まぁ待てアーニャ、もうちょっと会話を聞いてみようぜ。面白そうだから」


 もしや魔王様の全ての基準って「面白いか面白くないか」なの……?


「アーニャは顔もまだ見てないのにイケメンならあんな奴でもいいのか……」


「レイスター分かってないね! イケメンはそれだけで正義なんだよ!」


 アーニャと勇者(仮)達の会話が両方聞こえててうるさいよぉ!

 ……とりあえず勇者(仮)の会話をもう少し聞いてみよう、(アラ)を探して魔王様に進言するんだ!




「おばちゃん蜂蜜ミルクひとつ! ミルムがやかましいからはよしてな!」


「……リュー、もう知らんで。今日は自分一人で稼いできてな? ウチはクエスト付いて行かへんで。そもそも何で急に蜂蜜ミルクが日課になったんや……」


「聞きたい? 聞きたい?」


「ウザッ!」


「あれは昔々のことやったぁ……俺の前に月の女神が現れたんや……それはそれは綺麗な女神様でな、名前はなんちゅーと思う?」


「セレネー様やろ」


「ちゃうちゃう! ミルムや! 俺のハニー、ミルム! ミルムとミルクって似とるやろ⁉ せやからハニーミルクを飲むことで俺は毎朝ミルムに愛を(ささや)いとるんや! どや⁉ バリセンスあるやろ⁉ なぁ!」


「……リュー……ええ話や……感動したわ……。とでも言うと思ったんか⁉ 残念やったな! ほんならウチは毎朝ドラゴンステーキ食べたるわ!」


「ちょぉ! それは高すぎる! 堪忍や!」


「せやったら蜂蜜ミルクも無しや!」


「……敵わん……プラチナクラスの俺でも敵わん……ミルムはダイヤモンドクラスに昇格出来るんちゃう?」


「リュー討伐クエストに限定すれば伝説のダイヤモンドクラスやな。……リュー協力してくれへん? なぁに、ちょっと死ぬだけや!」


「アカンて! 誰が依頼出すねん!」


「ウチや!」


「指名手配すな! 俺はちょこーーーーーっと借金があるだけの善良な冒険者や!」


「プラチナ冒険者が稼いだその日のうちにディル無しになるってどういうことなん⁉ カジノも禁止や!」


「カジノは俺の生きがいや! それだけは譲らんでぇ!」


「やかましわボケェ! カスゥー!!!!!」




 ……も、もういいかな? 聞いてて疲れるのにずっと聞いてしまったのはなぜだろう……。とりあえずカス冒険者とその彼女さんなのは分かった。


「あの(なま)りはアレイルの北東、キャラリア山脈に近い地方出身ね」


 ルルさんもカス冒険者の会話に疲れたのか、魔王様に話しかけていた。ルルさんがそう言うならその地方出身なんだろう。 


「ぶはは! ノリが良さそうだな、アイツに決めた!」


「ひぃ! まっ! 魔王様! 勇者ってアレイルの安心のために強い人族を人気者にするんですよね? あの人じゃ安心できるどころか不安しかないですうっ! カジノ狂いですよ⁉ 借金あるんですよ⁉ 絶対聖剣を即売り払いますよ⁉ おまけに下品ですしっ!」


「アホだけどさすがにこの世に1本の聖剣は売らないだろ。アレイルの武力強化のためだから強ければいいんだ! アイツには勇者をやってもらう!」


 何となく、いや、ものすご~くそんな予感はしていたけど、やはり私の言葉は魔王様に届かなかった……。

 アーニャとお兄ちゃん、ラウンツさんはまだカス勇者の会話を聞いているようだ。時折キャッキャとはしゃいでいる。


「よ~し、チャチャッと勇者を作るぞ! アーニャ、あのリューってやつに念話しようぜ! 月の女神の啓示だ!」


「……えっ? あ、つい会話に聞き入っちゃってたよ、ごめんね魔王様! フフフ……ついに女神の出番だね! ……そういえば魔力交換しないと念話出来ないよ? どうしよう!」


 ……うん、念話先はお互いが魔力を通し合って魔力交換しないと繋げられないね。魔王様のちーとで何とかするんじゃないの?

 ちなみに魔力交換は握手をして魔力を通し合うのが何となく慣習になっているけど、魔力交換さえできれば何でもいいのだ。


「……あ、俺は誰にでも出来るから忘れてた。ヤベェ……どうしよっかなー!」


 魔王様ぁ! いつも行き当たりばったりぃ!


「こうなったら私がイケメン勇者に接触するしかないね! 四天王の装備は持ってきたから変装は任せて!」


「アーニャ、四天王がいきなり勇者と魔力交換できる訳ないだろ……」


 お兄ちゃんが呆れてる。アーニャはカス勇者の顔を見たいだけだ。


「う~ん……あっ! そうだ、念話じゃなくて拡声魔法にしよう! そっちの方がアレイル都市の人族にも女神の啓示が与えられたって分かるからな!」


「魔王様あったまいい~! 拡声魔法の方が演出効果が高いね! 任せて!」


 魔王様もアーニャも仕込みに余念がない……。


「よしアーニャ、考えてきた女神の台詞を教えろ」


 そして魔王様とアーニャは私達から少し離れて台詞の確認を始めた。


 ……ずっと〈飛行〉で上空にいるの疲れたよぅ! 魔力は問題ないけど足場が無いから何となく落ち着かないし寒いし空気も薄い。

 ふとメイリアさんを見ると心底どうでも良さそうな顔をしていた……カス勇者だもんね。


「メイリアさん……この茶番を早く終わらせて魔界に行きたいですね」


「……うん……」




「よし、作戦はバッチリだな! アーニャ、やっちまえ!」


「オッケー!」


 アーニャが少し下降したと思ったら、アーニャ以外の私達を包むように結界が張られた。


「魔王様が結界を張ったんですか?」


「おう、拡声魔法でうるさいし聖属性魔法も使うからな」


「あ、ありがとうございます……」


 そしてアーニャの声がかすかに聞こえてきた。

 ……なぜわざわざちょっとだけ聞こえてくる絶妙な防音結界を。絶対魔王様が面白がってる!


「闇夜の狂乱に(むしば)まれし子羊よ……今ここに月の女神の聖なる光を()って浄化する……(なげ)きの魂よ! 月光より(あかつき)へと変貌(へんぼう)する(ことわり)遵従(じゅんじゅう)せよ! 〈聖なる光(ホーリーシャイン)〉!」


 ああ……ヴァンさんを光らせた発光魔法かぁ。〈解毒〉から〈聖なる光(ホーリーシャイン)〉に変わってるけどやっぱりダサい。


 そしてアーニャの左腕が頭上から地上へ振り下ろされるとともに、魔王様いわく作戦はバッチリ(前科一犯)な「月の女神の啓示作戦」が開始された。




優しいニーナにすら「カス」呼ばわりされる勇者。

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