がんばって作りました
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広場では何組かの冒険者がテントを張っていた。
「魔王様はまたどんな罠を……」
「罠ってほどじゃないわよ。 とりあえず疲れただろうからお店で休んだらどうかしら?」
「ひゃい……」
ルルさんに着いて行ってお店のカウンターまで来た。
ポーションが並んでいる所にたどたどしい字で「よくきくポーションです。がんばって作りました」と書いてある木札がある……。
お客さんがいなかったので、お店の裏口から入って魔王様にお聞きする。
「魔王様、あの木札は何なのでしょう? メイリアさんはもっと達筆ですよ」
「フッフッフ……俺の戦略に早速気づいたか! あれはメイリアのファンを作って売る作戦だ!」
「ファン?」
「そうだ。 メイリアみたいな素朴なちびっこががんばって作ったポーション……応援したくなって買わずにはいられないだろう⁉」
「は、はぁ……でも何でへたっぴな字なんですか」
「男は自分より頭のいい女を嫌うからな、庇護欲をかきたてた方が売れる」
「わざと子供っぽくしてるって事なんですね」
「そうだ。 しかもポーションを選ぶ際にメイリアとお話が出来るという特典付きだ!」
「ただお話しするだけの事に価値があるとは思えないんですけど……」
「まぁ見てろって! ルルは色気と母性で売るぞ!」
ルルさんなら放っておいても勝手にファンが出来そうだ。
というか、さっきからずっと気になっていた事が。
亜空間からメイリアさんの為に採取した草を取り出し、裏口の扉を開けてモフモフパラダイスへとダッシュした。 もう我慢できない……っ!
「ルルさん! ラヴィが5匹も! ごはんあげていいですかっ⁉」
「うん、いいわよ」
ラヴィに草を差し出すと、フンフンと鼻をひくひくさせてもしゃもしゃと食べだした。
「かわいい〜! ってか、もう柵を作ったんですか? 外だと魔物に襲われないかな?」
「私は金属加工ならお手の物よ。 結界の魔道具も使っているから魔物は大丈夫」
魔道具なら魔力を込めるだけで誰でも結界を張れる。 ルルさんの魔道具ってすごい。
「……ラヴィ……麻痺薬の材料になる……」
「だっ! だめだよメイリアさん!」
「……冗談……ふふ……」
ちょ、念のため袖の下を送っておこう……。 平和的解決というやつだ。
「メイリアさん、マッドフロッグと薬草らしきものを採ってきたよ。 これで我慢してぇ」
ササッと亜空間から取り出してグイグイと押し付ける。
「……ありがと……」
メイリアさんは嬉しそうにお店の中へ戻って行った。
ふぅ。 メイリアさんは本気か冗談か分からない時があるよ……。
モフモフを愛でたらみんなで外でご飯を作って、お店の中のテーブルで食べることにした。 食べながら魔王様に今後の予定を聞く。
「手土産は揃ったからな、そろそろキャラリアへ行こう。 メイリア、ドラゴン酒を見せてやってくれ」
メイリアさんがテーブルにドンッと置いたボトルはまさにドラゴン! って感じだ。
ガラスで出来ているので中に邪龍の素材らしきものが入っているのが見える。 ……飲んだら闇堕ちしたりしないかな?
「カッケェ……!」
お兄ちゃんがソワソワしながらボソッと言った。 そういえば旅行に行った時にドラゴンのキーホルダーを買ってたな。 魔王様いわく、そのレベルは厨二病初心者らしい。
「これと邪龍の素材を渡して、トドメはここで飼っているラヴィだ! ここに来なきゃモフれないようラヴィはここに置いて行く」
「ラヴィをモフりたくて絶対獣人さんは来てくれるね! ところで魔王様、ホントに私を連れてってくれるの?」
「約束したからな。 そうだ、お前ら幼なじみ3人を連れて行こう」
「やった! 楽しみだぜ!」
お兄ちゃんとアーニャと私で行くんだ、ワクワクする!
「魔王様っ! アタシは?」
「ラウンツ……お前はリーダーとして、一番大事なこのダンジョンを任せる! コーディを連れて行け」
「アラッ! コーディちゃんとダンジョンデートもいいわねっ! そういう事なら任せてっ!」
「まっ! 魔王様! 僕はお店に女性だけを置いてダンジョンには行けません! ルルさんとメイリアさんが危険です!」
「コーディ、ルルとメイリアはえげつなく強いから大丈夫だ。 地図作りは任せたぞ」
コーディさんが絶望してる……。
魔王様は物凄く真剣な顔で言ったけど私は知っている……ラウンツさんとコーディさんで遊んでるよぅ絶対!
あ、そうだ。
「魔王様、コーディさんとルルさんを交代してください」
「ん?」
「いちいち宝箱の仕込み……演出に行くのが面倒なので、ルルさんに宝箱の中へ転送の魔術式を描いて欲しいんです」
「なるほど……しょうがないな、わかった」
魔王様はつまんなそうな顔をしてたけど、コーディさんからは『ありがとうございます! このご恩は必ず……っ‼』と念話が来た。
「明日ちょっと店の様子を見て、昼に行くか。じゃあ俺は帰るな」
そう言って魔王様は転移してしまった。
「お兄ちゃん、今日も野営だね」
「言うな!」
お兄ちゃんは今日も泣きそうだ。




