仕立て屋パウリーさつじんじけん
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「ま、魔王様……魔王様のせいですよ……パウリーさん達全滅してるじゃないですかぁ! 人族への攻撃は禁止って言ってたのにぃ!」
「え? 俺のせい? 攻撃してないぞ?」
「ラウンツさんが人口の増えるベビードールを発注したからパウリーさん達まだ継続ダメージを受けてますよ⁉ デザインを耳でしか聞いていない私ですら強力な呪いがかかっているのに、縫製して現物を見たパウリーさん達が喰らったダメージ量を考えると……っ! いくら魔王とはいえ極悪非道すぎますっ! 魔王様が凶器を用意して魔王様の配下であるラウンツさんが殺害実行犯だから、魔王様は……魔王様は……殺人幇助という殺人より重い罪を背負ってしまったんです! くっ……! あの時私が魔王様の凶悪なデザインを止めていればこんな事には……ッ!」
「お、おお……。なんかスゲー冤罪だな……。いや俺だってデサイン案を出した時はまさかさ、ラウンツが発注するとは思わなかったんだよ……」
「供述なら法廷でお願いします! 魔王様にも黙秘権があります! 供述は法廷で魔王様に不利な証拠として用いられる事があります! 魔王様は弁護士の立会いを求める権利があります! 魔王様には不要でしょうが、公選弁護人を付けてもらう権利もあります! とにかく今は罪を償うために魔王様がパウリーさん達を生き返らせてくださいぃいいいっ!」
「……そういえば俺が魔界にミランダ警告作ったな……よく覚えてんなニーナ。はぁ、わかったわかった。
パウリー! 看板ナイトが決まったから生き返れ!」
しかしこうかがないみたいだ……。
「はぁ……奥へ行くぞ」
ええ……。
でもここにいてもどうしようもないので魔王様に付いて行き、お店の奥を覗いた。
そこは……大量殺人現場としか表現できなかった。
パウリーさんやパタンナーさん、その他従業員全員が大きなテーブルに突っ伏してガタガタブルブル震えている……。デザイナーさんにおいてはもうピクリとも動いていない。完全にこと切れている……。
「パウリー元気出せよ! 看板作ろうぜ! ガッポリ儲けようぜ!」
魔王様がパウリーさんの背中をバシバシと叩いたらぬらり……とパウリーさんが顔を上げた。
「看板……そうでした……。はっ……! ラウンツさんは看板に載らないですよね⁉」
パウリーさん……怯えて錯乱している。ラウンツさんが怖すぎてあり得ない可能性まで考えちゃってる。
「お、おう、ラウンツは載らないから安心しろ。同じ内勤のバレットは載るけどな!」
やっぱりバレットさん確定だった!
「ひぃ! という事はラウンツさんも今後載る可能性が⁉」
再びパウリーさんが悲鳴をあげた。
「魔王様! これ以上パウリーさんを攻撃しないでくださいぃ! パウリーさんも冷静に考えてください、ラウンツさんがナンバー10に入る訳がないですし、看板は1回しか作りませんよね? もし今後作るとしても絶対にラウンツさんがモデルにならないよう、私がパウリーさん達を守りますから安心してください! 史上最強の結界を張ります! 私、結界は得意なんですよ!」
ラウンツさんをモデルにさせない結界など無い。でも今は嘘も方便だ!
「おお……おお……ニーナさんっ! 魔族にも月の女神がいた! ありがとうございます!」
ふぅ……とりあえずパウリーさんだけは生き返ってよかった。他の従業員さんはまだ呻いているけど……。
そして魔王様は亜空間から男本を取り出して、パウリーさんにナンバー10入りしたナイトさんの姿絵を見せた。
「こいつらがモデルになるナイトだ。ミアは女だから採寸の時は気を使ってやってくれな! バレットだけ歳いってるけどバリエーションがあったほうがいいだろ?」
「……女性の獣人⁉ 是非! 是非! うちの新作をっ!」
ミアさんのおかげでパウリーさんが完全に生気を取り戻した。全従業員も希望を見出したかのような顔で次々と起き上がり生き返った。
そうだった……このお店は獣人さんの女性用装備を作る事に生きる意味を見出している人達ばかりだった……。ミア教が出来るのはそう遠くない未来かもしれない。
「あーミアなー。アイツは男装が趣味だから女物は着てくれないと思うぞ? そもそも騎士服を着たくてナイトになったからな」
「な、なんということだ……」
「最初に言っただろ? 男物だけだ! 美女ならカリンがこの店に来たろ、パウリーが直接交渉しろよ」
「おお! カリンさん! ルフランさんというナイトの騎士服を仕立ててくれましたね! その時にベビードールもお買い上げ……ぐあぁっ!」
あっ! パウリーさんがベビードールでまたラウンツさんの事を思い出しちゃった!
「パ、パウリーさんしっかりしてくださいぃ! ミアさんの事だけを考えてください! 女性の獣人ですよ⁉ ケモミミ僕っ娘ですよ⁉ 獣人さんの魅力を最大限に引き出すのがパウリーさん達のお仕事です!」
「はっ⁉ そうでした! また呪いに呑み込まれそうに……ニーナさんありがとうございます……」
……仕立て屋パウリーの呪いも永遠に解呪できそうに無い。ミア教を早く作らねば! パウリーさん達には安寧の場所が必要だ!
「3日後は女神の休息日だろ? その日にナイトを連れて来るからその時に採寸でいいか?」
「はい! デザインはすでに選定してありますから、後はナイトさんの雰囲気に合わせて選んで採寸するだけです!」
人界では週の7日目を「女神の休息日」と言ってほとんどのお店がお休みになる。もちろんディメンションも。
7日目がお休みなのは魔界と一緒だ。言い方が違うだけで暦は魔界も人界も一緒なのだ。
魔界では「魔神様の覚醒日」や「魔人様の休息日」などの曜日があるけど、魔王様が「長ぇんだよ! 月火水木金土日にしろ!」と仰ったので口語ではそれが定着しつつある。
でも人界では通じないので、私は何週目の何日かで数えている。
というか魔王様、ナイトさんの休日の予定を勝手に決めてる……いいのかなぁ。
そして今日はこのお話だけで終わったので仕立て屋パウリーを出た。
……すぐ終わるって魔王様が言ってたけど、全滅からの蘇生イベントが発生して疲れたし時間がかかったよぅ!
「じゃあ俺は国王んとことか行って来るから今日は解散な! ゆっくり休め!」
「えっ⁉ もう王様の謁見許可取ったんですか⁉」
「俺と国王はツーカーの仲だぜ! ……嬉しくないけどな」
ツーカーってなんだろう……。でも魔王様名刺の件で動ける! やったぁ!
「かしこまりました! いってらっしゃいませ!」
ククク……メイリアさんと合流しよう。
魔王様と別れて急いでディメンションへ戻り、ディアブロへ転移した。
魔力感知したらメイリアさんがドブグロにいる! ウッキウキで向かった!
読者様投票したらラウンツさんがナンバーワンになりそうで怖い。
そしてこの世界での最強装備が「エクスカリバー」でも「アルテ〇ウェポン」でもなく「人口の増えるベビードール」になってしまった(´;ω;`)




