ニーナの休日?
「ぎゃぴぃっ⁉」
……またメイリアさんのツタでくすぐられて起きた。今日もエルドラドへ行こうって事かな?
店休日は惰眠を貪ろうと思ってたのにぃ! ……でもリサさんの所へ名刺を取りに行かなきゃだ、忘れてた。
……あれ? 私って結局お休み無くないっ⁉ 魔王様めっ!
「メ、メイリアさん! 今準備しますのでちょっと待ってくださいぃ!」
急いで顔を洗って着替え、ダイニングへ出たら朝食が準備してあった。ありがたい。
すると魔王様からパ-ティ念話が来た。
『今日からアレイルの事で動くから、いつでも動けるように心構えよろしく! また追って連絡するな!』
全員、了承の旨返事をした。
そうだった……メイリアさんが「決戦日が終わったら魔王様は動く予定」って予言していたのを忘れてた。みんなもお休みが無いよぅ! やっぱり魔王様は『漆黒の傀儡使い』だっ!
メイリアさんとご飯を食べようとダイニングテーブルに腰掛けたら、お兄ちゃんとアーニャ、ラツンツさんがテーブルでなんか話してる……。
私とメイリアさんは同じテーブルでもしゃもしゃご飯を食べ始めたから嫌でも会話が耳に入ってきた。
「それでね! 変装なんだけど、キャロルちゃんとシャナさんが仮面を作ってくれるらしいよ!」
……変装するの? 嫌な予感が……。
「仮面! いいな! 俺は髑髏がいいぜ!」
お兄ちゃん……やっぱりまだそういうのが好きなんだね。
「私はすでにヴィッド蝶モチーフでお願いしたよ! ラウンツさんはどんなのがいい⁉」
あの毒々しいカラフルな蝶を? ま、まさか本物を使わないよね⁉
「ンン~ッそうねぇ……乙女っぽいのがいいわぁっ☆」
「じゃぁ同じ蝶々にしようよ! ニーナもそれでいいよね⁉ あ、あとさ、全身マントとかよくない⁉ 普段は身分を隠すためにマントを羽織った謎の魔族、だがその正体は! バッ! 『我こそが四天王が一人! 片翼の堕天使!』みたいにマントを脱ぐの! キャー! カッコイイ!」
ちょ……私が意見を言う前に仮面が決定されてしまった! というか四天王の話をしてたんだ。そういえば私も四天王の一人……やだようっ!
「いいなそれ! 憧れるぜ!」
「アーニャちゃんイイわぁ! 中の装備もいつもと変えなきゃいけないわネッ☆」
「うんうん! 勇者と戦った悪の四天王がホストクラブで働いたらお客さん来ないもんね!」
あ、なるほど。身バレ防止の変装かぁ。
「四天王は魔王様に謀反を起こしたって事にしないと魔王様がホストクラブ開けないって言ってたもんな! 反逆者……悪者っぽくていいぜ!」
魔王様はあくまで人族と友好なポジションのままでいるんだ。確かにそうしないと系列店が出店できない。
「勇者に殺られる悪いコちゃんは四天王だけにしないと人族が怖がるものネッ☆」
謎の悪の四天王は闇に葬り去られる設定か……そういえば私だけ勇者育成計画を聞かされてないんだけど? まぁいいや、このままアーニャ達の話を聞いていよう。
「中の装備はオルガで適当に買えばいいかな? 今日みんなで買い物行こうよ! ニーナも!」
「ぎゃぴっ! わ、私はメイリアさんとエルドラドだからっ!」
この3人のテンションに付き合うのは疲れるっ!
「えー! 私が勝手に買うよ⁉ 魔王様っていつも急に行動するから早く準備しとかないとだよ⁉」
「ふ、普通の服を買っておいて! 仮面は自分で用意するから!」
メイリアさんとルルさんにお願いしてみよう……キャロルさんのセンスは絶対にヤバイ。
「アタシはちょっちアテがあるからぁン、アーニャちゃんとレイスターちゃんでお買い物デートして来てっ☆」
ラウンツさんがお兄ちゃんにウィンクしたからお兄ちゃんがビクッ! となった。
不意打ちのこのユニークスキルは相変わらず硬直効果が抜群に高い。
「は、はい……アーニャ、とりあえず行こうぜ」
「オッケー! あ! レイスターの考えた新しい治癒魔法詠唱はチョーカッコいいんだよ⁉ 私が考えたのとどっちがいいかラウンツさんちょっと一緒に考えて!」
「ンフッ♡ 毎晩2人で練りに練ってるものネッ! 教えてっ☆」
……もう食べ終わったからそろそろエルドラドへ行こう。厨二詠唱は聞きたくない……というかアーニャは先に魔術式の勉強をした方がいいと思う。
メイリアさんと目で頷き合いながら食器を片付け、そっと1階へ降りた。
「メイリアさん……あの3人の勢いだと私が仮面を着けるのは免れそうにないです……ルルさんと何か作ってもらえませんか?」
「……ん……作っておく……」
「メイリア様! ありがとうございます!」
そんな話をしながらバックヤードからディアブロのお店へ転移した。
「あ! ニーナ! 仮面はバッチリ任せろし!」
ひぇ! キャロルさんの作業台の上にヴィッド蝶がっ!
「お、お土産にあげたんじゃないんですか?」
「それがさー! 誰もいらないって! 激レアなのに! だからどちゃくそ楽しみにしてて!」
ぎゃぴっ⁉ 本当にヴィッド蝶をそのまま使う気⁉
「ひ、ひぇっ! わ、私はメイリアさんが作ってくれるのでけけけ結構ですっ!」
「えー!」
メイリアさんと逃げるようにしてエルドラドへ向かう!
「メメメ! メイリアさんっ! お願いですから生き物を使うのはやめてくださいねっ⁉」
「……大丈夫……」
メイリアさんが言うなら安心だ。先にお願いしておいてよかった。
名刺受け取りのため、いつも通りリサさんのお家のドアをノックして中に入れてもらった。
「リサさん、決戦日までに全員分間に合わせてくださってありがとうございました」
リサさんはナンバースリー30枚ずつと、他のナイトさんとバレットさん14人10枚ずつの計230枚を1週間足らずで作成してくれたのだ。
「お任せコン! じゃあこれ、ミアの分30枚コン」
名刺を受け取り代金をお渡しする。
「ありがとうございます、ミアさんのはすぐ無くなっちゃうから助かりました。あ、そういえばナンバーが確定しましたよ!」
リサさんが仕立て屋パウリーの看板を描くからナンバーをお伝えした。……恐らくバレットさんも確定であろうことも。
「リサさんはとりあえず誰かから指示があるまで名刺だけで大丈夫です。看板の件は魔王様に確認しておきますね!」
「わかったコン! そういえばハイド様の姿絵は作らないコン? あのお顔は描きたいコン……」
「そういえば魔王様、姿絵は嫌がっていました……」
私も喉から手が出るほど欲しいよぅ! ……ハッ⁉ ……クックック。
あ、でもでもぉ……怒られないかな? 完全犯罪を成立させるためには……。チラリとうちのブレーンの顔色を窺う。
「メイリアさん、魔王様の姿絵名刺、欲しくないですか?」
メイリアさんがピクッと反応した。




