2回目の決戦日 戦後処理! 前編
今月のナンバーワンはルフランさんに決まった。やっとラストオーダー合戦が終わった……。
使った額の低いお客様からお会計とお見送りラッシュが始まる。沢山ナイトさんに貢献したお客様が最後の方まで残されるのは一種のステータスらしい。
そういえば……本当にミュリエルさんは何も入れてなかったの? アレンさん何位⁉
そしてキキカリン・はみゅエル戦争はどっちが勝ったの⁉
「はー! ルフランくんやったね! カリンちゃんさっすが〜!」
「ルフラン君で決まったわね……順位予想が目まぐるしく変わって最後まで目が離せなかったわ! ところでミュリエルちゃんはなぜ戦わなかったのかしら?」
ルルさんでも分からないらしい。
「あっ! ちょうどブヒエルちゃんが鳴いてるよ! 集え、鎮魂歌────」
もう勝負は着いたから私も〈集音〉っと。
「むぅっ! なんであの女が一番目立ってるにょぉっ⁉ みゅう達が一番お金使ったにょにっ!」
ミュリエルさんがアレンさんにブヒブヒ言ってる。
「ルフランがナンバーワンだから最後だっただけだよ。みゅう達が今日一番の高額だから勝ったね!」
みゅう達? 確かにカリンさんは約350万、シュリエルさんは約400万だから、シュリエルさんの方が使ったけど……ミュリエルさんは何も入れてない。
「むぅ……にゃんかにゃっとくいかにゃい……」
「ネフィスきゅんっ! あいちゅらぺがしゃすとクリハーとシャンパン入れたからしゅり達負けてないっ⁉ むかちゅくぅ~~~!」
あああっ! シュリエルさんが事実に気付いちゃった! キキカリンさん2人合わせると約500万だから2対2だと完全にあなたたちの負けですぅ! マリンさんも入れると570万! ボッコボコですっ!
「いや、そもそもお前らが戦った理由は俺の被りだろ? 他の子は関係無い」
「でもあの女もむかちゅくのぉ~!」
頼むからネフィスさんの言う通りカリンさんの事は忘れて! 魔王様が育てた最狂の最終兵器なんだから勝てないって!
「しゅりちゃん、代表が『お前らの勝ち』って言ってたって事は、そう店が審判したんだよ。よかったね! 魔王の発言に逆らえる人間なんてこの世にいないよ? あっちの席には代表着いてないしこっちの勝ちだ!」
アレンさん……っ! 魔王様の余計な一言を上手く使ってる! 確かに同じペガサスなのに魔王様はカリンさんの席には着かなかったな、何でだろ?
でもそんな事よりアレンさんの魔王様リスペクト発言! ククク……もうアレンさんは完全に魔王様の忠実な配下だ!
「にゅ? ……魔王が言うにゃら……でもぉ~……」
「それよりしゅり、今日のご褒美楽しみにしとけ」
「はみゅ? ……むふふふふ~♡」
ネフィスさん……身体を張って無理矢理納得させた……っ! ま、まさか枕するの? ネフィスさんが死んじゃうよぉ!
「ああ、でもナンバースリーに入れなかったからお預けだな」
「はにゃっ⁉」
逃げた! アダマンタイト結界は健在だ!
……ん? ネフィスさんナンバースリー入ってないの?
「そういえばアレンきゅん、あの子何なの? タワーした子。何でみゅう達の後に目立つの? みゅう達が一番なのに」
ひぇ! ミュリエルさん覚えてた! 声が低い……怒ってる……。あれには触れちゃダメェ! 多分あの人は魔王様の次に強い……。
「田舎貴族だよ。お上りさんだからいきなり高額を使って目立ちたかったんだろうね。僕も今日初めて会ったんだ、だからよく知らない」
「みゅ……貴族……」
あの子がVIPに座っててよかった! 本来は貴族しか座れないから田舎貴族で通せる!
さすがのミュリエルさんも一般人だから貴族は怖いらしい。いいよいいよアレンさん!
「そう、貴族だから店も気を使って目立たせてあげたんだ。僕も気を使って大変だったよ。……ごめんね? みゅうとしゅりが一番なのに……」
眉の下がったアレンさんが瞳を潤ませながらミュリエルさんの頭を撫でた。演技派だ……恐ろしい。
「アレンきゅん……大変だったにぇ……」
ミュリエルさんもうるうるしてる……よし! 騙されてる!
あ、いや、アレンさんが上手く夢を見せてるんだ。いけないいけない、魔王様に怒られちゃう。「客は騙すな! 夢を見させろ!」がお店のモットーだった。
……物は言いようじゃない? 私は魔王様に騙されないぞ!
「アレンくんもネフィスくんもうまく丸め込んだね!」
「あの2人はとっくに免許皆伝だもの、流石よ」
ルルさんの研修を速攻でクリアしたもんね。あとルフランさんヴァンさんセシルさんも。
ミアさんは……「そのままのミアちゃんでいいわ……」と研修半ばでルルさんが放流した。ミアさんの天然は特別免許だ。
そういえばいくつも魔王様にお聞きしたいことが!
「魔王様魔王様、ユニコーンとペガサスの方があの初回の女の子より高額なのに、なぜシュリエルさんのコールが先だったんですか? あと、同じペガサスなのに魔王様カリンさんの席には着かなかったですね、何でですか?」
「あっ! 私も気になる! 教えて魔王様!」
「あん? それはな……」
魔王様がニヤッと口端を吊り上げた。また悪い事考えてるっ!
「今からカリン達の席に行くから聞いてれば分かる。コーディ、ブヒエルの伝票くれ」
コーディさんから伝票とお金を置くトレイを受け取った魔王様はサッサとフロアへ向かってしまった。
「よう! ルフランナンバーワンおめでとう!」
「あ、代表! ありがとうございます! おいカリン! 代表だぞ起きろ!」
カリンさんは今頃シャンパンの酔いが回ってきたらしい。ルフランさんにもたれかかって寝ている。
「カリン流石だな! またグラス割ったけどな! ははは!」
「……う? ……すみません……」
「カリンの十八番だから気にしてないぞ! さて、ブヒエルに見事勝ったな、それもおめでとう」
後半ははみゅエルさんに聞こえないよう、魔王様が声のトーンを落とした。
「え? ……あ……最後はナンバーワン取れるかどうかしか頭になかったぁ。そういえばあっちは私より高額じゃにゃいの?」
カリンさん、酔っぱらってはみゅはみゅ語になりつつある……。
「あいつらは2人であれを入れたから1人200位しか使ってないぞ」
ええっ⁉ そうだったのっ⁉
「え? え?」
「ぶはは! つまりだな、売り上げはアレンとネフィスで折半。だけど姫の一言を1人しか言わなかったことで片方だけが2本とも入れたと周りを騙したんだ。商人らしい姑息な手段だな。でも分かる奴は分かってる、この店で安く見栄を張ろうなんざ野暮なんだよ」
私もすっかり騙されたようっ! 悔しい!
「そうだったの……? あはははは~ウケる~私の勝ちじゃん~」
「おう! カリンみたいに真っ向から全力投球するのがこの店の遊び方だ!」
「ふふふ……あの2人貧乏臭いね~」
……1人200万使っても貧乏なの? このお店の中にいると本当に金銭感覚が狂う……魔王様の罠だ!
「でも私は負けちゃった……」
キキさんがしょんぼり。マリンさんルフランさんアッシュさんはじっとみんなのお話を聞いている。ネフィスさんはまだはみゅエルさんの席だ。
「キキは見事にマウンティングしただろ。キキの勝ちだ! 上手く戦ったな!」
「……ちゃんと皮肉通じてたかな?」
「バッチリだ! ネフィスが大変だけどまぁ何とかするだろ! 俺があっちの席にだけ着いたからあっちはブヒエルの勝ちって事でおさめる。だからブヒエルが帰るまで大人しくしててくれよ?」
な、なるほど……だからカリンさんの席には着かなかったんだ。カリンさん達の完全勝利は明確だもんね。
「やった……! まぁ私達がゲロデブスに負けるわけないよね!」
出来る子になってきたキキさんが小さい声で、でも嬉しそうに言った。
「おう! 美人で金も使うお前らが最強だ! じゃあ看板楽しみにしてろよ~またな!」
そう言って魔王様はミアさんの席へ。
「……キキ……ネフィスとヤッたの?」
「や、やってないよ! ゲロデブスへのブラフだよ! 落ち着いてカリンちゃん!」
ああっ! カリンさんが今頃気付いた! キキさんルフランさん頑張ってぇ! 私はしーらないっと!
あと2話で第四章終了予定です。
7/20(火)はお休みします。
四章ラスト6話の改稿で手間取りました(;´Д`)
ストックががが!




